プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会

「偽装フリーランス防止のための手引き」を公開します

自分の名前で仕事をしたい人のための非営利支援団体 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 (東京都中央区、代表理事:平田麻莉、以下「フリーランス協会」)は、このたび、フリーランスの労働者性の判断基準や要注意事例を整理した「偽装フリーランス防止のための手引き」を制作し、公開いたします。

フリーランスと取引をする事業者(発注者・仲介事業者)の皆さまに社内のコンプライアンス教育にお役立ていただくと共に、フリーランス当事者の皆さまにも自己防衛のためのリテラシーとしてお目通しいただけますと幸いです。

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偽装フリーランスとは

「フリーランスなのに、まるで社員のように管理される」
「社員と変わらない働き方をしているのに、業務委託契約を結ばされている」
「取引先が労動者認定を気にしすぎて、チームの飲み会に参加させてもらえない」
いずれも、たまに聞こえてくる声です。

何故そういうことが起こっているかというと、労動者性の判断基準が分かりづらすぎるからです。

そもそもフリーランスとは、働き方の裁量(自律性)と経済自立性を前提に、事業リスクを負う責任と覚悟を持って「自律的な働き方」を選択している事業者です。昨年4月に可決成立した「フリーランス新法」も、事業者であるフリーランスの取引適正化及び就業環境整備を図るための法律として、今秋の施行に向けて着々と準備が進められています。

しかし、フリーランスとして業務委託契約を締結している人の中には、稀に、事業者として本来あるべき働き方の裁量(自律性)と経済自立性がなく、労働者性が疑われる働き方を強いられている人もいます。「労基法と社会保険料負担を気にしなくて良い、安価で融通の利く労働力」として扱われてしまっている実態が一部業界において生じてしまっているのです。(悪質的なものに限らず、無知や誤解を背景としていることも多い)

2020年の内閣官房による実態調査では、事業者から業務委託を受けて仕事を行うフリーランスのうち、業務の内容や遂行方法について具体的な指示(指揮監督)を受けている人が4割でした。

フリーランス実態調査結果(2020年 内閣官房日本経済再生総合事務局)より

また、2023年にフリーランス・トラブル110番に寄せられた相談のうち、「労働者性」に関する相談は相談件数全体の5.7%で、「雇用から業務委託への切替」に関する相談も1.3%存在しています。

当協会では、これまでこうした方々を「偽装フリーランス」と呼び、2020年以降さまざまな形で発注者向けに注意喚起をしてまいりました。また、2021年には「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」において、雇用契約ではなく業務委託契約を締結していても、労働者認定された場合には、労働関連法の保護対象となるという整理が明示されています。

「偽装フリーランス防止のための手引き」より
(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」に一部加筆)

しかし、労働者性の判断基準の分かりづらさから、実際にフリーランスと取引する中で何をどう留意すれば良いのか分からず不安という声も多く聞こえてきます。また、中には逆にオーバーコンプライアンスと見受けられるケースもあります。

フリーランスとして働く人は、内閣官房の2020年の推計では462万人、総務省の2022年の就業構造基本調査では257万人(いずれも副業を含む)となっており、企業の人材不足を解消する切り札として注目されています。今後も、フリーランスの活躍の場がますます広がることが期待される中で、無知や理解不足による偽装フリーランス化は防がなければなりません。

そこで、このたび当協会は、偽装フリーランスをなくしていくための啓発資料として、「偽装フリーランス防止のための手引き」を作成いたしました。

「偽装フリーランス防止のための手引き」のポイント

1)ビジネス系フリーランスを対象とした事例を交えて、平易な言葉で解説

「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」で示された労働者性の判断基準については、専門用語が難解で解釈が難しいという指摘がよくなされています。

そこで、本手引きでは「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」で整理された労働者性の判断基準の一つひとつについて、平易な言葉に置き換えて解説し、主にビジネス系フリーランスとの取引を想定した「要注意の例」「許容範囲の例」「やりすぎかも⁉」という3種の事例を紹介しています。また、実務に役立つよう、発注者がフリーランスに対して稼働報告を求める場合のフォーマット例も添付しました。

2)主な判断基準と補強的要素との強弱(重みづけ)を明確化

労働者性は、請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から、複数の基準をそれぞれ確認し、個別の事案ごとに総合的に判断されます。一つまたは複数の判断基準に該当する場合等であっても、直ちに労働者性が認められるわけではない点に注意が必要です。

しかし、その「総合的判断」が分かりづらさを生んでいる側面もあるため、本手引きでは、その重みづけを分かりやすく工夫しています。偽装フリーランス防止のためのチェックリストでも、その強弱が分かる形になっています。

3)厚生労働省労働基準局に在籍していた弁護士による総合監修

手引きの制作にあたっては、昨年秋まで厚生労働省労働基準局労働条件政策課で勤務されていた弁護士の益原大亮氏に監修のご協力をいただきました。

監修協力:益原大亮氏プロフィール
弁護士・社会保険労務士、TMI 総合法律事務所
2016年早稲田大学法科大学院修了。2017年12月弁護士登録。2018年1月 TMI 総合法律事務所入所。2019年10月より厚生労働省大臣官房総務課法務室の法務指導官。2021年10月より厚生労働省労働基準局労働条件政策課の課長補佐・労働関係法専門官。2023年10月より TMI 総合法律事務所に復帰するとともに、厚生労働省医政局の参与に就任。
厚生労働省時代は様々な法政策に関与し、特に労働法制の企画立案や「新しい時代の働き方に関する研究会」の事務局を担当。弁護士としては、人事労務分野や行政分野におけるリーガルサービスを幅広く提供。編著として『医師の働き方改革 完全解説』(日経 BP)、共著として『労働時間の法律相談』(青林書院)、雑誌記事多数。

フリーランスと取引をする発注者、仲介事業者の皆さまは、ぜひ社内研修などにご活用ください。

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