プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会

【イベントレポート】「フリーランスをめぐる法制度の議論 〜現状とこれから〜」神戸大学の大内伸哉教授をお招きしたラウンドテーブルを開催しました。

 

2017年8月24日、「フリーランスをめぐる法制度の議論 〜現状とこれから〜」のタイトルで、神戸大学の大内伸哉教授をお招きしたラウンドテーブルを開催しました。プレス関係者、政府関係者(経済産業省、厚生労働省、公正取引委員会)など15名ほどの方にご参加いただきました。

当協会が2017年1月に設立して以来、フリーランスやパラレルワーカーに対する注目はますます高まり、フリーランスの働く環境を取り巻く仕組みやルールが国をあげて検討されております。労働人材不足、イノベーションの必要性、地方創生といった課題と、ITの進展、多様なマッチングプラットフォームや業務支援サービスの登場といった機会を背景として、国内のフリーランスは1122万人*に増加し、今後もその傾向が後戻りする気配はありません。

そのような背景を踏まえ、当協会は、誰もが自分らしく働ける選択肢を増やし、個人の働き方の多様化を後押しするため、現状の法制度の課題を整理し、改善に向けた提言を発表しました。
プレスの皆さんからもたくさんご質問を頂き、関心の高さを感じました。有り難い限りです。

■大内教授からの発表

労働法の専門家で『AI時代の働き方と法―2035年の労働法を考える』の著者でおられる神戸大学大学院法学研究科 大内伸哉教授の基調講演では「フリーランスをめぐる法的課題」として、フリーランスが増えている中で生じつつある現行の労働法の課題と解決の方向性をお示し頂きました。

大内先生の発表資料はこちらからご覧ください。

 

■平田からの発表

フリーランス協会 代表理事の平田からは、次の4点を提案しました。

1. 「準従属労働者」に対する保護

「フリーランス」を一括りにせず、場所や時間にとらわれない自律した働き方を行い経済的にも自立している「プロフェッショナル人材」と、様々な理由から事業者として本来あるべき経済的自立を為すことができていない「準従属労働者」を分けて、丁寧に議論を進める必要がある。
人的従属性と経済的従属性の高い準従属労働者は、雇用関係がなくても労働者性の適用範囲を拡大するか、第三のカテゴリとして新法立法する等して、労働法またはそれに準ずる形での「保護」を検討することが望ましい。
一方、プロフェッショナルの自営就労者に対しては、「保護」ではなく「自立」のためのルール整備として、競争法の範疇で公正取引実現に向けた対策が検討されるべきである。
企業の「働き方改革」によって社内における多様な働き方が認められ、雇用形態レベルの流動化が進めば、本来は雇用システムの中で守られることを望んでいる「非自発的フリーランス」を中心とした準従属労働者は減る可能性がある。

2. 自助・共助によるスキル・キャリア形成の促進

プロとして対価をもらう価値となる専門スキルは、常にアップデートが求められる。そのアップデートには自己投資が必要である。
企業内OJTに頼らず、自己責任でスキル・キャリア形成を行うフリーランスが今後も増加し続けることを鑑みると、日本の人材力を維持向上するためには、自己投資やコミュニティ運営に対する税控除や助成など、経済的な公的支援の余地がある。
また、グローバル競争激化やAIによる労働力の代替に耐えうる国内のプロフェッショナル人材育成に向けて、企業による「ジョブディスクリプション型採用・育成」と個人の「キャリア自律」を促していく必要がある。

3. 対等なパートナーシップを実現する取引環境整備

フリーランスと企業間の取引においては、情報の非対称性や交渉力格差により、企業間取引では生じにくい問題が多発している。プロフェッショナル人材の自律・自立を促すため、個人も一事業者として、発注主と公正な取引ができる環境整備を行うべきである。(例として、資本金1000万円以下の企業にも下請法を適用する、独禁法において情報の非対称性や交渉力の格差も考慮する、などが考えられる。)
特定取引先への依存度を減らすため、ハローワークに類似した、業務委託版のジョブマッチング機能を自治体で運営することも考えられる。
フリーランス個人に対し、契約や法律に関する知見提供や注意喚起を行うことも継続して求められる。

4. 働き方に中立な社会保障の実現(不均衡の是正)

同じように「働いている」にも関わらず、子育てや介護、キャリア形成の権利や支援が就業形態によって異なる現状を見直す。自営就労者も公平に保険料を負担する形で、労災保険や育児・介護の伴う休業制度や給付金制度、職業訓練給付に代替するセーフティネットを作る。

 

■インタラクティブセッション

ジャーナリストの方から質問に、大内教授と平田がお答えしていく形でオープンディスカッションが展開されました。

Q.労働の対価の測り方は?成果物で判断される時代での理想の形は?。

A.(大内教授)
最低賃金を設けるのは難しい。特に基準設定が。
家内労働者には最低工賃がある。これは、労働者と類似の存在。
最低報酬の規制はいらない。本人の交渉力に任せる。ただ、フリーランスの市場を育成するためには、緩やかな規制があり、相場を作っていくのはいい。独禁法の問題にもならない。
腕がない人が自営業になるのはリスク。セーフティネットに頼らずに腕で勝負していく人が関わるべき。その注意喚起をするのはフリーランス協会に期待されること。
A.(平田)
仲間がいるというのが大事。会社なら人を増やせる。24時間の自分の時間しかない。休みがない状態。フリーランス同士で仕事を融通できる出会いを生むプラットフォームに協会がなっていきたい。

Q.準従属労働者を救う法律的な手立てはあるのか?
A.(大内教授)
労働者概念の拡張をしていく、という流れになるだろう。ただ、最低賃金だけで労働者が判断されるのは良くない。社会保障なども関係してくるから。
理想は律法を作って、準従属労働者の保護のニーズに限定して律法を作ること。解約規制などもあり得る。例としては、妊娠して契約の納期を守れなくなってしまった場合の保護があるといい。
A.(平田)
今は経済的自立できていない人が会社員に戻れる風土づくり、それから今は自立できていなくても今後は自立したいという覚悟がある人の支援をしていく。

Q.契約を適正に変えていくための現在のハードルは?
A.(大内教授)
企業の事業者と雇用者も実態は対等ではない。消費者法も、弱い消費者と強い事業者という位置付け。交渉力の非対称性に着目するというもの。
妊娠した時の対処法を契約書に書いておくことも大切。あり得ることを書いておく。そういうことを書いておきなさいよというチェックポイントを政府が開示していくことは必要。

Q.先ほどのは、予防するための議論。実際に起こってしまったトラブルに対して、解決するには?
A.(大内教授)
紛争労働手続き。個別紛争労働手続き。自営業者の問題を厚労省が扱うのかはわからないけど、必須。

Q.どこの役所が主導すべき?
今は、仲介業者、フリーランス、テレワークと管轄が違う
A.(大内教授)
みんな、仲良く連携してやってね。政策は融合してくる。全部関係してくる。現状を見ると、厚労省は雇用労働者を扱うので、準従属労働者は近い。フリーランス支援は、今の所経済政策が力を入れている。独禁法もあるので。
そもそも、労働を雇用主と労働者に分けるのがおかしい(?)
マスコミが縦割りはよろしくないと発信してほしい。
A.(平田)
パワポ資料でいうと、緑が経産省、青が厚労省の得意分野と認識している。
議論する際に、準従属労働者側とプロフェッショナルを分けて考えて頂くことがいずれにしても大切。
A.(大内教授)
プロフェッショナルでも、失敗する人もいる。失敗したとしても仕方ないと割り切る。
非自発的でフリーをやっているとリスクが大きい。ただ、制度が整うと、プロフェッショナルが純化されていく。本当の自発的なフリーが増えていく。

Q.フリーランスだと対等な契約を結べないことがある。例えば、個人に対してはお金を払えない企業は未だ多い。対企業ではないとダメという。間にエージェントを挟んだり、会社を作ってもらったりして対処。個人の身分の低さを感じている。
A.(大内教授)
大学でも同じ。個人のデザイナーにお願いしたいと言ってもダメと言われた。保守的なメンタリティーが根深い。過剰なリスク回避は嘆かわしい。日本企業ならでは。
A.(平田)
企業側のマインドセットが変わる必要がある。でも、今後は変わっていくと前向きに見ている。優秀な人材をフルタイムの正社員で採用するのは難しくなっていく。
なぜフリーランスへの発注を企業がためらうかというと「信用が低い=リスクがある」と思われている。そのため、協会のベネフィットプランは無理を言って発注者側のリスクもカバーされるようにしてもらった。安心してフリーランスに発注できる土壌が作れればとの想い。


Q.信頼だけではなく、コンプライアンスの問題では?個人に発注すると、本当に実在するのか?というリスクもある。事故の元。業務上横領の素地になりかねない。協会が認定ワーカー制度を作るなどは考えられるか?お墨付きのあるプロだと信頼が得られる。
A.(平田)
契約書の締結で解決できるのではないか?
A.(大内教授)
フリーランス協会に所属していれば信頼できるという流れになるといい。
個人の方が信頼できない、というのは合理性がない。
A.(平田)
フリーランスへの発注の仕方がわからない等の理由で、ルールを守っていない人が多い。ジョブの切り出し方も不明。得体の知れない存在は扱いにくい、とされてしまいがち。

Q.社会保険の事業主負担について。事業主の負担がフリーランスへはないのはどうなのか?
A.(大内教授)
保険料負担については、結局労働力に転化されている。政府が過剰に雇用労働者を優遇してしまっている。これが時代に合わない。社会保障システムの再構築。なんで雇用されていると優遇されるのか? 国民の健康リスクを政府がどういう形でカバーするのか、どんな社会システムが有効かゼロベースで議論をすべき。制度のあり方に関心がある。労災保険もそう。保険料も全額、使用者負担。これは格差といえば格差。
A.(平田)
フリーランスは独立した存在なので、事業主負担を求めるのは違和感がある。雇用保険に入りたいとも思わない。仕組みさえあれば保険料を払うつもりがあるというフリーランスもいるが、そもそもの仕組みがない。多様な働き方をする人が増えている現状を踏まえて、事業主負担に依存しないセーフティネットの設計や税の配分が必要なのではないか。

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