5月14日に、「フリーランスの多様な実態~4社調査比較~」と題し、フリーランス協会ほか、ランサーズ株式会社、株式会社Waris、株式会社日本政策金融公庫による4社合同プレスセミナーが行われました。各社が行ったフリーランスに関する調査結果を発表しつつ、フリーランス・パラレルキャリアの実情を研究対象とされている法政大学の石山恒貴教授、帝京大学の中西穂高教授をスピーカーにお迎えしたパネルディスカッションも実施しました。
まずはフリーランス協会の河合優香里さんから協会が行った「フリーランス白書」の調査結果の報告がありました。河合さん自身、マーケティング領域のフリーランスとして活動しています。
「フリーランス白書」はフリーランス1141名と会社員1000名にアンケート調査を行い、その実態や志向を比較検討した内容となっています。(調査内容の詳細はコチラをご覧ください)
調査からは総じて会社員時代に比べて「満足度」や「スキル/経験」が上がったと考えているフリーランスが多く、高い満足度が浮かび上がってきました。一方で会社員は「Q現在の働き方を続ける上で重要だと思うものは?」との問いに、「忍耐力」を挙げる人が多かったのが印象的でした。しかしながら、会社員のおよそ4割が副業に関心が「ある」と回答しており、その割合は転職(31.2%)を上回るほどで、昨今の副業・パラレルキャリアブームを感じさせる内容となっていました。
続いて、ランサーズ株式会社取締役の曽根秀晶さんから同社が実施している「フリーランス実態調査2018」の発表がありました。同社は3年前から実態調査を行っており、今年が4年目となります。(調査内容の詳細はコチラをご覧ください)
調査によると日本における広義のフリーランスは1119万人で昨年と比べ横ばい、経済規模は20兆円超と昨年比9%アップしていると言います。特に増加が著しいのが副業フリーランスでその経済規模は8兆円、特に本業・副業を区別しない複業系パラレルワーカーが5%増加しているそうです。
正社員で働きながらフリーランスをする副業すきまワーカーを経て、自由業系フリーランスや個人独立オーナーとして独立したり、雇用に戻ったりするケースも一定数生まれているほか、副業をしたい個人が7割、フリーランスを継続したい人が約8割に達し、今後も広義のフリーランスが増え雇用形態が流動化していくことが予測される結果となっています。
3番目に発表したのはWaris Innovation Hubプロデューサーの小崎亜依子さん。「高い専門性を持ち、取引先企業と対等な関係を通じて、企業の組織変革やイノベーション創出の触媒としての役割を担うフリーランス」を「変革型フリーランス」と定義し、その実態を掘り下げた調査内容となっています。(調査内容の詳細はコチラをご覧ください)
こうした「変革型フリーランス」になるためには、①明確なビジョン・モチベーション②確固たるヒューマン・キャピタル(仕事完遂能力、課題ヒアリング力など)③質の高いソーシャル・キャピタル(ネットワーク構築力など)の3つが必要とのこと。こうしたフリーランスに選ばれる企業になるためには企業側にも彼らを対等なパートナーとして接し、適正に仕事を切り出し評価する姿勢が求められるとしました。
最後に発表したのが日本政策金融公庫東京創業支援センター所長の小池俊太郎さんです。小池さんからは公庫が実施した「フリーランスの実態に関する調査」について発表がありました。(調査内容の詳細はコチラをご覧ください)
公庫の調査では、フリーランスの収入や稼働時間、満足度等につて実態調査を行うほか、開業する際に重視したことをもとに「収入重視型」「仕事重視型」「生活重視型」の3つに分けて分析を行っているのが特徴的でした。
収入重視型は、事業を始めて良かったこととして収入関連の項目をあげる割合が高く、収入に関する満足度も3類型の中では高くなっています。仕事重視型は事業を始めて良かったこととして仕事関連の項目をあげる割合が高く、仕事の内容ややりがいに関する満足度が高くなっています。生活重視型は生活関連の項目をあげる割合が高く、私生活との両立に関する満足度が高くなっています。こうした傾向をふまえ、フリーランスは、その開業目的に 応じた働き方ができる就業形態だと結論づけています。
続いて、法政大学の石山教授、帝京大学の中西教授が加わりパネルトークが行われました。
「フリーランスと一言で言っても、4社それぞれの調査結果となっている。これだけフリーランスが多様化してきている表れ。そういう中で『変革型フリーランス』のような人がイノベーションの担い手になっていくのではないか」(中西教授)
「総じて会社員の満足度の低さが浮き彫りになっているのが印象的だった。日本の働き方のエンゲージメントが低いということ。また、こうしたフリーランスの力を活かすためには企業側の経営や業務の進め方の変革が必要だろう」(石山教授)
といった研究者お二人の所感からパネルトークはスタートしました。パネルトークでは主にフリーランスが活躍するうえでの「企業側の課題」「個人側の課題」について話が展開されました。
法政大学・石山教授からは「企業側が今回の各社調査のようなフリーランスの実態について認識できていないことが問題。副業・パラレルキャリアの話にしても、『送り出し』『受け入れ』両面の話があるが、今の議論は『送り出し』に議論が集中している」という問題提起がありました。
「企業側はフリーランスに対して問題解決を求めているのに対し、フリーランス側は自分の専門スキルの習熟にポイントをおいてしまっている」と企業とフリーランス双方の意識のギャップについて指摘するのはランサーズの曽根さん。帝京大学・中西教授からも「解決型のフリーランス人材をどう育てていくかが今後の課題」との話がありました。
最後は「今後のフリーランスがどうなっていくか?」というテーマについて各パネラーから以下のようなコメントが述べられました。
「今後、本来であれば雇用のほうが向いているという人と、ハイスキルなフリーランスとに二極化がますます進むだろう」(Waris Innovation Hub小崎さん)
「いかに市場価値をフリーランス自身が自分で上げていくかが重要。企業はパートナーシップ型でフリーランスを活用することが求められる」(ランサーズ曽根さん)
「これまでは会社員か起業か二者択一のような感じだったが、副業容認の機運が盛り上がることで、副業でプチ起業体験をする人が増えるのではないか」(日本政策金融公庫小池さん)
「フリーランスはともすると『ピン芸人』のようなイメージ。これからはフリーランスがそれぞれのプロフェッショナリティを持って横のつながりを作ることで企業との対等なパートナーシップが生まれるのでは」(フリーランス協会河合さん)
「多くの企業で60歳を過ぎたら『役職定年』のような状態。企業に在籍しながら満足度を得にくいまま寂しい第二の人生に突入するのではなく、20代・30代のうちから自身で生きていくための力を身に着けていくことが重要」(中西教授)
「今後は雇用(関係にある人)とフリーランスがもっと融合していく。雇用でもフリーランスでもない働き方が中心になっていく中で今のフリーランスの働き方がその『雛形』になるだろう」(石山教授)
今回は4社によって行われた調査をもとにフリーランスの現状と未来について、多様な議論が展開される貴重な機会となりました。
私たちフリーランス協会では今後も定期的な調査・分析により、フリーランス・パラレルキャリアが活躍しやすい環境づくりに少しでも役立つ情報発信に力を入れていきたいと思っています。