2018年7月31日、行政・企業・NPOというセクターを超えた連携により、「人材」の観点からCollective Impactを起こすアクションと発信を行っていくために結成された有志によるプロジェクトである、SOZO日本プロジェクト主催で公務員の兼業をテーマにイベントが開催されました。
冒頭、「公益兼業」という言葉を提案していきたいと力強く語るクロスフィールズ代表理事の小沼大地氏からの挨拶から始まったこのイベント。NPO領域での副業が解禁された公務員向けに兼業がもたらす可能性について大いに語られる会となりました。
第一部では“公務員の「働き方改革」と兼業の可能性”と題し、Business Insider Japan編集長の浜田恵子氏がモデレーターとなりパネルディスカッションが展開されました。
国家公務員の40%は、兼業に「取り組みたい」
最初にNPO法人二枚目の名刺 代表理事の廣 優樹氏から、今年5月に行われた「公務員の副業・兼業に関する意識調査」についての解説があり、注目すべきは若手を中心に国家公務員の実に40%が、兼業が解禁されたら取り組みたいと回答をしていたことです。また、民間企業勤務への関心が最も高い一方で、ソーシャルセクターへの関心も20%ほどあったことも特徴的でした。
廣氏による解説後、ディスカッションが展開され、まずは公務員の長時間労働について活発な議論が行われました。浜田氏が取材で国会への対応が長時間労働を招いているとの声が多数あったことに触れると、総務大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官/衆議院議員の小林 史明氏は「上司が自分のすぐ上の上司のことや所轄議員のことしか」見ておらず、「常に上を見ていて、下のマネジメントに関心がない」ことを指摘。国会対応に関しては、「良いマネージャーは自宅待機で、テレワーク対応で良いと言ってくれるが、そうじゃないマネージャーも依然として多い。部下に興味がないから」と管理職による部下への配慮がなされていない実態が浮き彫りになりました。
公務員の兼業にメリットはあるのか?
話題は「公務員の兼業事例」に移り、文部科学省 初等中等教育局初等中等教育企画課専門官 兼 企画係長の佐藤 悠樹氏から、課外活動として取り組む「教育長・校長がお互いの教育実践について情報交換する場づくり」活動について紹介があり、平日の朝や夜、週末の開催になるため、家族と調整をしたり、省内で仲間を作ったりしながら、周囲に理解を得るための工夫について話がありました。
「公務員の兼業は受け入れられると思うか?」という浜田氏の質問に対し、小林氏は「受け入れられると思っている」と応じ、兼業の意義について2つの論を展開。1つ目に「忖度」がなくなること。「忖度が生まれるのは、レールが1本で選択肢がないからであり、兼業によって選択肢が増えれば、忖度は生まれない」と主張。2つ目の意義として「政治家と役所で言語のすり合わせが出来ていない現状に対して、外に出ることで共通言語が見つかるようになる」と語りました。
佐藤氏からは兼業によって「肩書きがない状態で仕事ができる」というメリットを挙げ、実際に「課外活動だと肩書きがない状態で、市の教育長などとも接触でき、そこからの学びがある」と自身の体験について語りました。
収入を得ることの難しさとどう折り合いをつけるか
パネルディスカッション後の質疑応答では、ある地方自治体職員の方から、「プライベートで芸術関係の課外活動をやっていて、今後プロになっていきたいという想いを持っている一方、収入を得てはいけないため、人事とかけあったが認めてもらえなかった」と厳しい現実について告白があり、「副業することによるポジティブなイメージを植え付けていくためには?」という質問がありました。
これに対し佐藤氏は「視野の拡大など、経験そのものが対価になってくるという考え方もある。対価をもらうということは、責任がさらに上がるということになるので、どう折り合いをつけるか」と将来的な収入や成長を見据えて考えていくことの重要性を強調しました。
<<<第一部:公務員の「働き方改革」と兼業の可能性>>>
◇モデレーター:
・浜田 敬子氏 Business Insider Japan編集長
◇パネリスト:
・小林 史明氏 総務大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官/衆議院議員
・廣 優樹氏 NPO法人二枚目の名刺 代表理事
・佐藤 悠樹氏 文部科学省 初等中等教育局初等中等教育企画課専門官 兼 企画係長
Reported by 島崎由真