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10月から10%へ引上げ!消費税相当分の報酬もらえてますか?転嫁Gメンが勧めるセルフチェック

消費税転嫁対策室

企業から支払われる報酬で、「消費税が支払われる会社と支払われない会社がある」という人は、要注意!
知らないうちに、企業から「消費税転嫁」を拒否されているのかもしれません。

まずは、セルフチェックしてみましょう!セルフチェックリストはこちら

それにしても、「消費税転嫁」というのは、耳慣れない言葉ですよね。消費税転嫁とは、簡単に言うと、消費税相当分の対価を、買い手となる法人事業者(発注元、運営元など)から報酬としてもらうという行為のこと。
2014年4月から消費税が5%から8%に引き上げられることに伴い、2013年10月1日に、消費税転嫁対策特別措置法(正式名称は「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正に関する特別措置法」)が施行されました。
これにより、事業者から商品やサービスの提供を受けたにもかかわらず、その買い手となる法人事業者が消費税の転嫁を拒否、つまり消費税相当分を支払わなかった場合、違法行為となるのです。

当然、今年10月の増税時にも同じことが起きる可能性大!

今これを読んでいるフリーランスにも、すでに「消費税転嫁の拒否」という違法行為にあっている人もいるのかもしれませんし、今年10月以降に同じ目に遭う人も出てきそうです。

「そんなに稼げてないし、確定申告でも消費税は課税されていない。それなのに消費税相当分を請求するなんて……」
「今までもらってなかった消費税相当分を請求して、受注を切られたらどうしよう……」
「副業先だし、数%の金額でわざわざ波風を立てたくないな……」

そんな悩めるフリーランスのために、今回は中小企業庁の消費税転嫁対策室に突撃インタビュー!
消費税転嫁拒否を取り締まるGメンのリーダーから、消費税転嫁拒否のよくある事例と対策について、詳しく聞いてきました。

消費増税でギャラが2%程度上がらない会社はアウト!

消費税転嫁対策室塚本さん

「私たちは、事業者が消費税転嫁拒否をされていないかを調査・検査するチームです」
経済産業省 中小企業庁 消費税転嫁対策室 総括補佐の塚本浩章さんは話します。

特に多い消費税転嫁拒否行為は「買いたたき」で、これが全体の9割を占めるそうです。

買いたたきとは、通常支払われる対価よりも低く定めることにより、消費税の転嫁を拒むこと。2014年4月に消費税が5%から8%上がったときに、5%の時と同じ単価が使用され、消費税相当分が支払われていないといったことがある人はいませんか? 実はそれは「買いたたき」という立派な違法行為! 実質報酬が3%弱目減りしていることになるからです。

これは報酬を得る「売り手」(※1)側が消費税を納めない事業者(免税事業者)であるかどうかは全く関係ありません。「買い手」(※2)側は免税事業者に対しても消費税相当分を支払わなければなりません。

たとえば、学習塾の運営業者が、教室に使用する不動産の賃借料を、不動産の大家であるAさん(個人事業主)から税込50万円/月で契約しているとしましょう。その場合、消費税が8%から10%に増税された時に、運営業者はAさんに対して、増税分の2%を上乗せして約51万円/月を支払わなければなりません。
それなのに、「税込で50万円という契約だから」と50万円だけしか支払わない場合、契約内容にかかわらず、違法行為になります。

しかし、個人事業主は発注側に対して立場が弱く、「『報酬を正しく支払ってほしい』と言ったら契約を切られるかもしれない」と尻込みする人が多いのも現実です。

そうした人たちのために活躍しているのが、中小企業庁の消費税転嫁対策室でした。総括補佐の塚本さんをリーダーとして、約100名の「転嫁Gメン」が調査・検査の現場で活躍しています。

「今最も危惧しているのが、2019年10月の消費増税時にも、同様の買いたたきが横行することです」と塚本さん。

買い手となる企業側でも、自分たちが行っている取引が消費税の転嫁拒否行為になっていることを知らないことも多いとか。

「自分自身や、自分の会社で消費税転嫁拒否が起こっていないか心配!」という人のためのセルフチェックリストはこちら

※1 ここでいう「売り手」とは、「特定供給事業者」のことで、転嫁拒否等をされる側を指す。
※2 ここでいう「買い手」とは、「特定事業者」のことで、①大規模小売事業者(売上高100億円以上または店舗面積3000㎡以上)や、②中小企業や個人事業主等と継続して取引している法人(資本金の額又は出資の総額が3億円以下の事業者と取引している事業者や、個人事業主等と継続して商品などの取引をしている事業者)を指す。

Gメンを動かすのはあなたの持つ「証拠」

ところで、転嫁Gメンは、どうやって消費税転嫁拒否をしている企業を摘発するのでしょうか。
最も有力な情報源は、「転嫁拒否行為を受けている方からの情報提供」です。

まず、個人事業主含む620万者に書面アンケートを配布します。そのうち、事業者から返送された内容を精査し、電話でヒアリングを行います。
この段階で、消費税の転嫁拒否をされているのかを確認し、違反の可能性が高い場合は、情報を提供した事業者にコンタクトして、契約書や通帳の写しなど証ひょう類(証拠書類)も集めていくのだそう。

そして、消費税転嫁拒否の実態がつかめたとき、買い手企業への立入検査が実施されます。ここで、違反が認定された場合、行政指導・勧告が行われて、改善を図ることになります。

2019年5月に明らかになった、大手情報サービス企業の総額6400万円を超える消費税不払い事件は、記憶に新しいかもしれません。この事件は、転嫁Gメンたちによる調査・検査により発覚した、消費増税時に起きた典型的な「買いたたき」事例です。

同社の場合、被害額が大きかったこともあり、「勧告」により社名が公表されるに至りました。しかし実際のところ、社名が表沙汰になっていないだけで指導・勧告を受けている企業は少なくありません。
消費税転嫁対策特別措置法が施行してから約6年間で、行政指導は4,943件、勧告は50件にも及びます。

アンケートを返送した売り手事業者に対して、転嫁Gメンによる調査がなされ、そのうち6,469件に立入検査が行われました。
しかも、アンケートの返送から事業者への訪問までの期間は約2カ月。スピード感のある調査が行われているようです。

ただ、悪質な買いたたきを受けている場合でも、郵送アンケートを返送してもらえないと転嫁Gメンが動けないという歯がゆさもあるそうです。

仮に、買い手側が違反行為の情報提供者である売り手を特定し、取引数量を減らしたり、取引停止を行ったりした場合、報復行為と認められれば、厳正に対処するとのこと。

塚本さん
アンケートで消費税の転嫁拒否の可能性が高い場合でも、本人の連絡先が書いていないとそこから調査を進めることができません。私たちから相手先企業に情報が漏れることは絶対にありませんので、連絡先を記入していただきたいと思います。

悩む前に、現状をアンケート調査に書いて、返送してみるのがいいのかも!

被害に遭いやすいのは建設・翻訳・出版の個人事業主

では、実際に消費税の転嫁拒否がされやすいのはどんなフリーランスなのでしょうか。

最も行政指導が多い事例は、前述の「買いたたき」ですが、他には「減額」「役務利用・利益提供の要請」「本体価格での交渉の拒否」などのパターンもあります。

こうした行為に遭いやすいのは、「圧倒的に建設・建築業、通訳業、ライターや編集者などの出版業、アニメーターやイラストレーターなどのクリエイターなどといった職種の個人事業主が多いです」とのこと。そのほか、反訳(テープ起こし)を行う事業者や、ヘアメイクなどの美容業なども違反事例があるようです。

こうした業態で消費税の転嫁拒否が起こりやすい背景にあるのは、もともと契約書を交わさない慣行であったり、取引における立場が弱い個人事業主が多かったりすることなどが理由のようです。中には相手方に支払明細を送付しないような会社もあり、そもそも消費税分が払われているのかいないのか、内訳すらわからないというケースもあるといいます。

中小企業庁のHPには、消費税転嫁拒否の典型例が、業種別にマンガで読めるようになっています。自分の業種について読んでみるといいかもしれませんね!

下請かけこみ寺「漫画でカンタン!事例紹介」はこちら

それでは、こうした消費税転嫁拒否に遭ってしまった場合、どのような対抗策があるのでしょうか。

もし手元に中小企業庁からのアンケート用紙があればそれを返送してもOK。
もしなければ、フリーランス協会のセルフチェックリストからも相談・通報できます。

塚本さんは、「アンケート調査で情報提供してくれることが必要です。私たちは情報提供者のプライバシーは必ず守ります。その一方で、情報提供いただいても、その方が自分で企業と直接交渉すれば、その方が情報提供者であると疑われる可能性が出てきてしまう。そうならないためにも、企業と直接交渉する前に連絡していただきたいと思います」と強調します。

2019年10月の増税で税込振込額に変更がなければ即連絡を!

特に注意したいのが、2019年10月に控える消費増税のタイミング。
消費税増税分の2%分が差し引かれ、同年9月以前と同じ業務内容にもかかわらず、支払われた対価が通常支払われる対価よりも低く定められた場合は立派な「買いたたき」行為に当たります。

そのときは泣き寝入りをせず、行政に情報提供してみましょう。

なお、行政へのコンタクトの取り方は3種類あります。

      1. フリーランス協会のセルフチェックリストを使ってみる
      2. 中小企業庁・消費税転嫁対策室から送られてきた書面アンケートに、連絡先を書いて返答する
      3. 各地の地域経済産業局に相談してみる

です。

「思い悩まずに、最寄りの局に相談してみてくださいね」(塚本さん)

最寄りの相談窓口はこちら

消費税転嫁対策室の皆さま、ありがとうございました!

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