【イベントレポート】外部人材活用セミナー:新しい人材採用の手法による企業課題解決

フリーランスライター、武居です。私はフリーランスとして長野県内でライター、Webコーダー、イベントスタッフなど様々な仕事をし、パラレルキャリアとして働いています。

6月18日、長野県塩尻市のえんぱーくにて、経済産業省関東経済産業局主催の外部人材活用セミナーが開催されました。
このセミナーは、塩尻市内とその周辺地域の中小企業が、複業人材やフリーランスとマッチングし、経営課題解決やイノベーションを推進することを目的としたものです。
パネリストを迎えて、複業人材活用のメリットや導入方法について触れ、さまざまな事例も紹介されました。

今回はその模様をレポートしたいと思います。
塩尻市商工会議所の地域コーディネーターである長島様のご挨拶からイベントは始まり、最初にフリーランス協会の代表理事、平田が登壇しました。
海外では活用されている外部人材が、日本国内ではまだ認知がされておらず、受け入れ実績が1割に満たない現状を説明した上で、圧倒的な人手不足の中での活用のメリットを説明しました。


現在はITに限らず広報など、多様な職種のフリーランスがいること、そしてその数が増加していることなど、フリーランスの現状を伝えました。
また、雇用側の心配を払拭するため、労働時間に関する法令やフリーランス保険などの保険制度があることを紹介しました。

パネルディスカッション

向かって左から加藤氏、篠原氏、松田氏、平田

続いて、パネルディスカッションが行われました。
パソナグループ成長戦略本部 ソーシャルイノベーション担当部長の加藤遼氏と、塩尻市商工会議所専務理事の篠原氏が司会進行を行い、長野県における副業人材の活用の事例が紹介されました。

学生インターン、副業インターンそれぞれの特徴を生かした取り組み

1人めの登壇者は、山加荻村漆器店の社長、荻村実氏。明治40年創業で110年という歴史を誇る老舗企業にあった課題は、過去に製造されたものの販売に至らなかった商品を、価値を落とさず販売することでした。

荻村実氏 プロフィール
長野県出身。
明治40年創業の木曽平沢の漆器店「山加荻村漆器店」社長。
大学卒業後、5年間のサラリーマン生活を経て漆器店に就職。

荻村
古くからの大量のデッドストックがあることについて金融機関や会計士などから指摘を受けており、値引きをしてもいいから、商品を売って現金化しようと指摘を受けていた時もあったんです。

そんな折に、塩尻市商工会議所から学生インターンの受け入れの打診がありました。
フリーランスやインターンという存在は知らず、知識も情報もなかった状態でしたが、商工会議所からの紹介だからと試しに半年間学生の受け入れを行ってみたそうです。

インターンで受け入れを行った大学生たち(OPEN JAPAN PROJECTのWebサイトより)

学生インターンと取り組んだのは、社内にあるデッドストックになりつつある商品の販路拡大の取り組みでした。
とはいえ、それらは腕利きの職人が作り上げた作品の数々。現金化するためだけに安値で売ってしまうと、作品の価値も落としてしまいます。
そこで行ったのが、日本の伝統文化に興味・関心の高い海外への進出・販路拡大の検討でした。

学生から出た「国内に旅行に来る外国人を対象に調査を行ってみては?」というアイデアをヒントに、国内の外資系高級ホテルに調度品として商品を貸し出したり、成田空港での展示会を行い、情報を発信しながらアンケートを取るなどして市場調査を行ったのです。
そこから得られたデータをもとに、海外に向けた高級品を紹介するサイト「OPEN JAPAN PROJECT」を作り、海外の反応を見ることにしました。
その反応をもとに輸出国の選定をしようとしたところで、半年間のインターンの期間が終了となってしまったそう。

OPEN JAPAN PROJECT http://yamaka-open-japan-project.com/

しかし、荻村氏は学生インターンを受け入れたことで、いくつかのメリットを感じたそうです。

  • 取材を受け、メディアで取り組みを紹介してもらえた。
  • 金融機関から「販路拡大するなどの取り組みを行い、将来性がある」と評価され、今後融資を受けるための前向きな材料となった。
  • インターンの男性1名が塩尻市に移住。結果的に若い人材を獲得できた。

荻村
このインターンを受け入れた半年間、私としても、会社としても、力になりました。

その半年後、再び塩尻市商工会議所から打診を受け、今度は副業インターンを受け入れる機会が訪れます。

副業インターンとは、会社員が余暇や就業時間外に興味のある別の企業で仕事をするなど、1つの会社にとらわれない働き方のスタイルです。
働き方改革の一環で、副業を推進する企業が増えてきたために、こういった自由な働き方を選択できる環境が増えています。
人材の募集をしたところ、高いスキルと経験を持った方からの応募がたくさん来たそうです。

その頃、荻村氏は先代から事業継承を受ける時期だったので、経営全般の相談を聞いてもらうために、そういった知識や経験を持った人材を受入れることにしました。
その理由としては、今までお付き合いのあった顧問会計士さんなどの外部の方も、会社と長い時間一緒に事業を進めてきたこともあり、過去を知りすぎるがゆえに、改革的な指導ができるか?と疑問を感じていたからだそうです。

荻村
うちは家族経営の会社であり、社員も長く働いている職人さんなどが多いので、なかなか新しいことに取り組みづらかったり、今のままでいいと思っている人が多いため、社内の悪いところを洗い出そうにもなかなか難しいことも多かったんです。

そこで荻村氏が選んだ人材は、過去の経歴や地域のしがらみがなく、かつ経営、営業、金融、地域創生などの経験を持った方。
その方に、セカンドオピニオン的に経営に関する相談をすることにしました。

荻村氏がまず行ったことは、過去や地域のしがらみがないからこそ話せることを正直に「ぶちまける」ことでした。

荻村
地元の関係者には話ができないような内容をすべてぶちまけてアドバイスをしてもらいました。

木曽の地で創業し110年と歴史が長く、また家族経営であることで、地域の人や関係者には言えないこともたくさんあるとのこと。
ですが、外部から受け入れた人材だからこそ、そういったしがらみなどを抜きに、思っていることを伝えることができ、また相談される側も同様に、率直で的確なアドバイスをつたえることができたのです。

歴史ある山加荻村漆器店の外観

荻村
副業インターンを受け入れた結果を成果物としてお話したり、お見せできる物はないのですが、私にとっては非常に有意義な内容となりました。

今回「学生インターン」「副業インターン」という形の違うインターンを受け入れ、荻村氏は双方のメリット、デメリットをこのように感じたそうです。

学生インターン

  • 社外からの注目度が高いため、自分の考えや会社の考えをPRできる。
  • 社内が活性化する。
  • だが、それらの効果が一時的なものになりやすく、持続性を保つのが難しい。

副業インターン

  • 具体的なテーマなど何かを深く追求したり、会社として何かをするとき、社外の専門的な知識を持った方の力を借りるのはとても良い。
  • 様々な経験をしてきた方の助言などをもらえ、深く追求するときなどに有用。

中小企業等にとって高い報酬を払って、特定の専門家を呼ぶのは難しいことです。
しかし「副業インターンをやりたいと言っている人は、自分の得たスキルを試してみたい、誰かの役に立てたいと思いを持った謙虚な人が多い」と荻村氏は言います。

職業インターンを受け入れようと動く中で、そのような思いを持った方々と多く出会い、またそんな方の力を借りてみたいと思ったのだそうです。

ともに地方のために考え、動くフリーランス

次に登場したパネリストは、受け入れ側とは逆で、外部人材として企業に関わった方です。

長野県富士見町にあるコワーキングスペース「富士見森のオフィス」のディレクターを兼任しながら、自身が代表を務めるデザイン事務所MATSUDA SHOJI DESIGN(マツダショウジデザイン)にてプロダクトデザイン、ブランドデザインなどを手掛けている松田氏による事例紹介です。

松田裕多氏 プロフィール
静岡県出身
MATSUDA SHOJI DESIGN代表
3年前、東京から富士見町へ地域おこし協力隊として移住。
富士見森のオフィスの運営をしながら、地域の中小企業のデザインワーク、ブランディングを請け負っている。

様々なフリーランスが集まる「富士見森のオフィス」には「ブランディングをしてみたいがどうやっていいかわからない」「デザインを誰にどうお願いしていいのかわからない」など、地方の会社が抱える様々な相談が届くといいます。

今回の事例では、実際に森のオフィスに届いた事例を2件ご紹介いただきました。

事例1 南アルプス塩ようかん

寒天の生産で有名な長野県伊那市。
市内には数社の寒天製造販売業者が存在しています。
その中の創業101年の老舗メーカー「小笠原商店」は、都内の有名和菓子店などに上質な寒天を卸している材料メーカーです。

こちらの専務である小笠原氏は以前から「諏訪に質の高いお土産を作りたい」という思いを持ち、社内で検討を始めたそうですがなかなか話が進まず2年、3年と月日が流れてしまいました。

それもそのはず。今まで原材料メーカーだったため、和菓子の製造などを行ったことがなく、また小笠原氏もデザインや新商品の制作に携わった経験がなかったため、社内に全くノウハウがありませんでした。
そこで、富士見森のオフィスに相談にこられたそうです。

松田
小笠原専務は、わからないことや、自分たちが持っていなかったスキルを求めて、声をかけてくださったそうです。

偶然相談を受けたのが今回登壇した松田氏と、富士見森のオフィスの運営を行うRoute Design合同会社の代表である津田氏です。
話を受け「塩ようかんのプロデュースをしよう」と早速プロジェクトチームを立ち上げました。

今回、商品企画を社外の人とやることで、今までにない新しい商品を生み出したいという思いを持っていた小笠原氏。
そこで長野県の諏訪地方にある伝統的なお菓子「塩ようかん」をヒントに、「今までにない新しい形」の塩ようかんを開発することになりました。

松田
市場における新規性を僕たちから提案し、企画、リサーチ、Webサイトのデザイン、売り方など市場に前から出した後までを、小笠原商店さんと二人三脚で一緒に考えました。

「長野県でこの製品を生産したい」という思いを持った小笠原氏。
材料からパッケージに至るまで、長野県内で製造されています。

塩も海の塩ではなく、南アルプスのふもとの大鹿村で作られた「山塩」を使用しています。
本来であれば、塩ようかんとは餡に塩を練り込んで生産しますが、上質な塩を従来の塩ようかんと同じ製法で餡に練り込むのは勿体無いと考え、塩の魅力を見える形で「後からかける」という新しい食べ方を提案し、新規性を狙ったそうです。

そうして生まれたのが「南アルプス塩ようかん」です。

長野県の魅力を詰め込んだこの商品。
発売前にプレスリリースを発行したところ、魅力を感じた星野リゾートのバイヤーからさっそく「山梨県のリゾナーレ八ヶ岳で取り扱いたい」と連絡が入ったそう!

その後、販売は星野リゾートの経営するホテル「リゾナーレ八ヶ岳(山梨県北杜市)」や、長野県の地産地集ショップ&レストランである「くらすわ(長野県諏訪市)」と場所を限定し、また、新宿駅直結の複合施設「NEWoMan(ニュウマン)」内のショップでも期間限定で展示・販売を行うなど、あえて販路を広げず、この商品の質の高さを理解してもらえる場所だけに置いているそうです。

松田
長野県に移住をして、地域で仕事をして、地域の魅力を県外に伝えるのが地方に移住した自分の使命として考えていました。作った商品が東京で扱われたのは嬉しいです。

こうして、外部人材と組むことで、今までにない新しい商品を生み出したいという思いを持った伝統のある企業と、松田氏をはじめとしたプロジェクトチームが二人三脚で歩んだ結果、今までにない上質の塩ようかんが誕生したのです。

事例2 RoomiAir(ルミィエール)

長野県茅野市にある、半導体やプリント基盤、医療用消臭機材を製造しているオーク製作所。
こちらで製造しているオゾン発生装置には高い消臭能力があり、医療現場や介護施設向けに製造・販売していました。
その技術を使い、一般向けの製品を作りたいと考えていました。

そんな折、担当者が南アルプス塩ようかんを見て「ぜひこのパッケージを手掛けたデザイナーさんにパッケージデザインをお願いしたい」と考え、相談に訪れたそうです。

松田
相談にこられた当初は、製品はなかなか一般市場には受け入れられない見た目でした。この見た目では、良いパッケージが作れても長く愛されない可能性がある、と単刀直入に伝えました。
そこで、パッケージデザインだけでなく、製品の改良まで行うことになりました。

そこで松田さんは0からすべての見た目を変えるよりも、今出来上がっている中でどう変更すれば商品が良くなるかをアドバイスし、改良を進めていきました。
ここでもこだわったのは、地元産の木材や、地元企業の制作したパーツを使用すること。
そして生まれたのがRoomiAirです。

松田
諏訪の企業に協力いただき、みんなで作ったような商品。
パーツ1つ1つ手仕事で制作されていたり、富士見町の木材を使用したりと材料ひとつとっても地域の技術と魅力が詰まっているんです。

その後、RoomiAirは日経MJ、モノ・マガジンに取り上げられるなど、注目を集めました。

南アルプス塩ようかん、RoomiAirと2つの商品に携わり、松田氏は企業がフリーランスと一緒に仕事をするメリットをこう語りました。

松田
フリーランスに依頼をすると、依頼したこと以外のスキル…たとえば商品PRに必要になってくる映像制作や、店頭の什器など、それらを作る人材が、フリーランスの持っている人脈のなかで見つけられることが多いんですよね。
外部の人と組むことはハードルの高さを感じるかもしれませんが、実は可能性が広がるものでもあるんです。

これからの課題

荻村氏のパネルディスカッションの中で語られたように、住んでいる場所に関わらず自分の専門性を活かして仕事に関わりたいと思う人材は多くいます。
そして松田氏のように、実際に地方の企業とタッグを組み、素晴らしいプロダクトを制作した例も増えてきました。しかし、地方で働きたい人が多くても受け皿が足りていないと、平田は言います。

平田
そういう人材を受け入れることを知らない、どこで探していいかわからない、マネジメントの方法がわからないなどの課題もあります。

それを聞いて荻村氏は

荻村
人づてで、県外にいる蒔絵作家の人を受け入れています。自分で漆塗りなどを学んだ作家さんです。
業務時間内は、弊社で仕事をしながら伝統継承という形でベテランから技術を学んでもらい、業務時間外は会社の工房を開放し、自分の作家活動に活かしてもらっていました。
伝統工芸の職人といった閉ざされた世界では、外部人材を活用しにくいと考えていましたが、ちょっと柔軟に考えればこういった受け入れもできます。

と、職人という特殊で数の少ない働き手を確保する意味では、柔軟に対応すれば人材を確保できる可能性があると感じたそうです。
反面、

荻村
このケースの場合、業務と業務外の境目がわかりにくいときがありますね。
職人としての技術を磨いてほしいけれども、どこまで自由に個人の活動をやらせるか。さじ加減は私も勉強中です。

と、外部人材を受け入れて感じた難しさも語ってくれました。

確かに、技術と意欲を持って来てくれる人材に対し、人手不足の解消や技術の向上に期待ができる反面、個人の意欲をどこまで尊重するかというさじ加減が難しく、マネジメントしにくいという不安な面もあるようです。

都市部での変化

荻村氏の話されたケースのように、意欲を持っている人に対し環境を作ることによって、人材を呼ぶことができるケースもあります。
そういった意欲のある人材と接する機会がある松田氏はこう言います。

松田
富士見町のコワーキングスペース「富士見森のオフィス」では都会からの移住者の受け入れをしており、僕らが受け皿として存在しています。地域の企業の相談や課題をストックし、東京にいる森のオフィスの会員さんに紹介するマッチングなどもやっていますが、そこで感じるのは、都心の方の地方への関わりたい意欲はここ数年高まっているということです。

松田氏いわく、都市生活者は仕事を通じて地方と関わりたいというモチベーションを強く持っており、同時に「誰かの役に立ちたい」という気持ちを持っているそうです。

松田
お金目的ではなく、地域の役に立ちたい、なにか新しいことを生み出したいという意志を持っている人がすごく多いです。
多くの人は、都会で働くうちに仕事の不満などを抱えていて、余暇でその不満を解消するよりも、自分の持っている技術や知識を誰かの役に立つように使うことで解消したいという方向に向かっている気がします。
そんな意味で都心部の方はくすぶっているようにも感じますね。

森のオフィスのような受け皿さえあれば、意欲的に働きたいと考える人材は多くいます。
まずは各企業が門戸を開くのが第一歩なのではないでしょうか。

地方創生を軸として掲げているフリーランス協会としても、これからもこういった受け皿作り、仕組みづくりの協力をしていきたいと考えます。

最後に

もっとパネリストによる意見の交換を聞きたかったのですが、残念ながらここで時間切れになってしまいました。

非常に熱い話でディスカッションが繰り広げられたように、みなさん現状の課題をなんとかしたいという思いを持っている中で「どう解決してよいかわからない」と社内だけで悩む過去から「外部人材を活用していけば解決の糸口が見えるかも」と、外部に目が向くように状況が変化しています。

また、観光の目的も変わってきている中で、外部に助けを求めやすい状況を作るためにも、いかに外部の人材を自分たちの地域に呼んでいくか、まさに街づくりが重要になってくると考えます。

私もフリーランスとして活動し月日を重ねるごとに、正直なところ孤軍奮闘をしている寂しさが募りつつあります。
ある日、その寂しさは会社員として働いていたときよりも、社会とのつながりが希薄になっているのではないか、という気持ちだと気づいたのです。
フリーランスは一人ではないのですが、基本的に仕事は一人で完結するため誰かと協業することは多くありません。

今回のイベントに参加し、フリーランスはこういった外部人材を活用したいと考える企業を通して社会に参画することで、もっと社会とのつながりを強められるのではないか、と考えました。

今回登壇された荻村氏と松田氏の事例を聞くと、外部人材の活用は企業にとっても、フリーランスなどの外部人材側にとっても、Win-Winの関係を築くことができます。
私もそういった良い関係性が築ける外部人材となるべく、もっと地域との関わりを持ち、社会に参画するため、自分のスキルを高めていこうという気持ちを強く持ちました。

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