時は2月。確定申告シーズン真っ只中!皆さまいかがお過ごしでしょうか?
中には、日々の仕事に忙しなく、まだ全然手をつけられてなくてサクっと終わらせられる便利なツールが無いかなぁと探している方や、確定申告が初めてで不安という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、年末の「行列ができる税理士相談所」に続き、今年も毎年恒例の「確定申告丸わかりセミナー」を2月12日に秋葉原の弥生株式会社イベントスペースで開催しました!
税理士法人グランサーズの筧智家至先生による噛み砕いたお話に、ちょっと確定申告を乗り切る自信が付いた方も多かったのでは?(ちなみにグランサーズはco-ba赤坂を運営しているそうです。いつでも税金に関する質問が気軽にできるコワーキングスペースって最高かよ!)
さらに今年は、財務省のご担当者をお招きし、未知の世界に戦々恐々としている人も多いと思われるインボイス制度についても解説いただきました!
本記事では、後半の「気になるインボイス制度の真相」ミニセッションについて、財務省主税局の佐々木辰実さんとフリーランス協会の平田の掛け合いの要約形式でレポートしたいと思います。
インボイス制度とは?
平田:今日はありがとうございます!2023年10月から始まるインボイス制度。我々フリーランスの中では昨年からよく話題に上るのですが、イマイチ概要がよく分からないので不安に感じてしまいます。インボイスは請求書の意味ですが、インボイス制度ってなんですか?
佐々木さん(以下、敬称略):インボイス制度の説明の前に、消費税制度を少し説明させてください。
消費者の立場の皆さんがスーパーで買い物する時に支払っている消費税は、事業者であるスーパーが皆さんから預かって、仕入れに掛かった消費税を差し引いて納税しています。この、仕入れに掛かった消費税を差し引くことができる制度を仕入税額控除制度と言います。今は消費税が10%ですから、1100万円の売上のうち100万円が売上税額、550万円が仕入れに掛かった経費だとすると、このうち50万円が仕入税額となり、差し引き50万円分の消費税を納税することになります。
平田:数千万円の売上というのは我々フリーランス的にはピンと来にくいかもしれないので、桁を減らして考えると、私がスーパーに支払った150円の消費税は、スーパーと仕入れ先メーカーとが30円と120円ずつ納税している、とそんなイメージでしょうか。商品を仕入れた時にメーカーに支払い済の消費税まで収めると、二重払いになってしまいますものね。
佐々木:そうですね。消費税法上では、その仕入税額控除をするために、請求書やレシート、納品書など一定の記録を書類で保存しておく必要があります。インボイス制度が始まると、その書類への記載事項のルールが変わるということです。
なぜかと言うと、皆さんご存知の通り、昨年10月から軽減税率請求書が導入されました。売り手は8%だと思って売っているのに、買い手は10%で申告して多めに仕入税額控除を行うというようなことを避けるために、軽減税率制度の下では売手から買手に対して、正確な税率や税額を伝えてもらう必要があるからです。
平田:軽減税率って、10%に消費税増税する際にせめて生活必需品とかは8%に据え置くことになった制度だとは思うんですが、ビジネスをやっている立場の人たちはそのために手続きがややこしくなって涙目になってそうですよね。
請求書や領収書の記載ルールはどう変わって、それがフリーランスにどう影響するんでしょう?
佐々木:大きな変更点は2つです。
一つ目は、税率や税額を記載することが必要になります。これは、皆さんが普段目にする請求書や領収書は既にそうなっているので、大きな変更にならないかもしれません。
二つ目は、売手ないしは受注者の立場で仕入税額控除が可能なインボイスを発行する際には、税務署に届け出て登録事業者になって、インボイスに登録番号を記載する必要が出てくることです。そして、登録事業者になれるのは課税事業者だけで、免税事業者は登録を受けられません。
免税事業者じゃいられなくなるってホント?
平田:税額・税率と登録番号を明記したニュータイプの請求書(インボイス)が出現してくるわけですね。課税事業者と免税事業者についても、ご説明いただいた方が良いかもしれません。
佐々木:免税事業者であれば、買い手から預かった消費税を納税しなくても良いというルールがあります。簡単に申し上げると、免税事業者とは、課税期間の2年前における課税売上高が1,000万円以下であることです。したがって、フリーランスでおおよそ年間の収入が1,000万円以下の方は消費税を納める義務がないことになっています。他方、これはあくまで「納めなくてよい」ということなので、収入が1,000万円なくとも課税事業者になれないというわけではなく、課税事業者を選択することもできます。
平田:国内には免税事業者が500万事業者あると言われていますが、フリーランスの多くは免税事業者かと思います。免税事業者でインボイスが発行できないと、何が困るのでしょうか?
佐々木:免税事業者から仕入れがある事業者、つまりフリーランスの方のクライアントはインボイスを受け取れないので、仕入税額控除ができなくなります。
平田:たとえば私が登録番号の記載のないオールドタイプの請求書しか発行できない「免税事業者のフリーランス」のままだと、クライアントは仕入税額控除ができなくて、今までより多く余計な消費税を払わないといけなくなるわけですね。これに対して、「クライアントから課税事業者になるよう強いられるのではないか」「免税事業者のままだと取引から排除されそう」「免税事業者は不当な値引きを迫られる」といった不安の声が去年はSNSなどでも散見されましたが、どう思われますか?
佐々木:そのご懸念があることは知っています。そのため、インボイス制度の施行までには軽減税率導入から4年間の期間を置いており、またインボイス制度開始後も、6年間は免税事業者からの仕入れでも一定割合の仕入税額控除ができるように移行期間を設定しています。
インボイス制度で買い手が免税事業者との取引を排除するという考えは、業種や業態、関係性によります。例えば、そもそもインボイスを使って仕入税額控除を行うのはBtoBの場面だけなので、消費者である個人を相手に商売している方にはあまり影響はないと考えられます。また、作家と出版社の関係のように、明らかに必ずしも全員が課税事業者でない方から原稿などを買い取る事業者は免税事業者かどうかで取引を控えるということは、仕事の代替性の観点からも考えづらいです。また、多数のライターを抱えて成り立つメディアやシェアリングエコノミーサービスのように、副業の方が沢山活躍している分野も、免税事業者を排していては事業そのものが成り立たなくなるケースが多いのではないでしょうか。
ですので、決して誰もが慌てて課税事業者にならないといけないということではありません。
焦らず様子見しながら考えれば大丈夫
平田:確かに、業種やクライアントとの関係性によっては、オールドタイプのままでも問題なさそうですね。
みんながみんなニュータイプに覚醒しないといけないというわけではなく、自分の取引先や業界がインボイスを求めてくるのかどうか様子見をしながら、移行期間も含めてじっくり課税事業者になるかどうか検討すれば良いという理解で良いですか?
佐々木:そのとおりです。現在、多数のフリーランスと取引しているような企業と情報交換を進めていますが、インボイス制度にどのように対応していこうかまだ決めかねている企業が大多数だと思われます。免税事業者を排除していては事業が成り立たない側面もありますので。免税事業者のフリーランスの皆さんも、慌てず情報を取り入れて、冷静に対応されるのが良いと思います。
インボイス制度の登録事業者の申請受付は、来年(2021年)10月から始まります。その前後で、取引先から「インボイス制度に登録していますか?」と聞かれるようになったら、相手も取引するのが課税事業者かどうかを気にしているということかもしれません。
来年10月以降の取引先の反応を見てから、インボイス制度施行後に免税事業者から課税事業者になるかどうかを検討するのも一案です。もしくは、インボイス制度開始後の移行期間に入ってから、もしインボイス発行を求められることが多くなったと感じたらその時点で始めて課税事業者になることを検討するというのもありかもしれません。
平田:焦って課税事業者にならなくても良いと分かって安心しました。
一方で、フリーランスは免税事業者で預かった消費税を納めていないのだから消費税を払わなくてもいいんだという考えで「内税でお願いします」と実質上の値引きを強要する発注主もいます。これは消費税転嫁拒否と言って立派な法律違反なのですが、フリーランス側も消費税相当額を含めて請求して、支払いを受けていたとしても、納税義務がなく、実際に納税してない場合も多いので、強く言いづらかったりします。
本来、消費税って、正しく請求して正しく納めていれば右から左へ流れるだけで、我々が損をするという制度ではないはずですよね。課税事業者になって、”益税(預かっていたはずの消費税相当額)”が無くなると困るという状況があるとすれば、それは消費税制度の問題というよりも、益税に頼らざるを得ないくらい不当に安い報酬で発注してくるクライアントの存在が問題なような気もします。
フリーランスは税金をちゃんと納めていない人たちという偏見を払拭するためにも、フリーランス協会としても、皆さんが堂々と消費税を請求したり、報酬値上げの交渉をしたりできるよう、今後ますます発注主に対する啓発やルール整備に努めていきます。
フリーランス協会のホームページの「独立・副業の手引き」では、確定申告に関する基本的な説明や契約時の留意点などを簡潔にまとめています。その中に、中小企業庁の消費税転嫁対策室の通報先も載っています。取引先から消費税の支払いを拒否されたら、それは犯罪ですので、臆せず通報してください。通報者に悪影響が出ないよう、情報源の保護には万全の注意を払った上で、Gメンの方々が調査、是正に入ってくれますよ。
さて、最後に佐々木さんからのメッセージをお願いします。
佐々木:インボイス制度が運用開始されるまでにはまだ2年以上の時間があり、その後も6年間は移行期間があります。また、業種業態によっては、課税事業者か免税事業者かによって取引にあまり影響が出ないような可能性もあります。我々も各業界へのヒアリングを行って反応を探っていくので、来年のこの時期にはもっとお伝えできる情報が出てくると思います。
あまりメディアの報道に惑わされて不安に思わなくても大丈夫ですので、ご自分にとってどうするのが一番良いか、しっかりと情報収集をしながらじっくり検討されてください。
平田:お陰で安心できました。本日はありがとうございました!
以上、ミニセッションの模様をお届けしました。
フリーランスのお金周りの助っ人サービス
なお、当日は、フリーランスの確定申告や請求業務をサポートしてくれるサービスの紹介もありました。
◾️弥生の青色申告オンライン
会計ツールといえばお馴染みなのが弥生の確定申告ソフト。デスクトップ版も根強い人気ですが、最近伸びているのはやはりクラウドアプリ。画面の案内に従って入力するだけで、面倒な計算もすべて自動計算して書類を作成してくれます。
ネットを検索すれば無料のエクセルフォーマットも出回っていますが、このフォーマットや計算式って本当に正しいのかなと不安になることもありますよね。自分で一つ一つ手計算、手入力していく手間と時間を考えて、その間に他の仕事でどれだけ稼げるかなと思うと、クラウド会計サービスの利用料は決して無駄にはなりません。
必ずしも自分が時間をかけなくても済むことは省エネして、自身のスキルや価値が発揮できることにエネルギーを注ぐのが、稼げるフリーランスの秘訣です!
◾️INVOY
請求書を簡単スムーズに発行・管理できる無料サービスです。UIがシンプルで分かりやすく、心地よいとデザイナーさんなんかに評判なのだそう。
もちろんインボイス制度にも対応できます。
◾️yup
こちらは経理業務というよりも、小規模事業者である我々フリーランスの資金繰りをサポートしてくれる、報酬即日払いサービスです。
ファクタリングと言われるビジネスモデルで、yupがフリーランスから請求書を買い取って、取引先からの資金回収を代行します。手数料がかかりますが、運転資金の回転見込みが外れてしまって今すぐキャッシュが必要という時などには、心強い味方です。類似サービスとの違いは、申し込みから即日審査してもらえることだそうです。
いかがでしたか?
今年の確定申告にしても、インボイス制度の備えにしても、いろんな情報にアンテナを張って、自分なりの一番良いやり方を見出してみてくださいね!