力関係で弱い立場になりやすいフリーランスの現状
最近は、働き方の多様化が進み、フリーランス(個人事業者)として働かれる方も増えています。
フリーランスの方からご相談を受けるときに多いもののなかには、依頼者である業務委託者との関係や依頼者からの要望にどのように対応すればよいかというものがあります。
依頼者が企業である場合、力の関係上、フリーランスはどうしても弱い立場に立たされてしまいがちです。報酬について協議をさせてもらえず、正当な報酬が確保されないこともしばしばです。
また、契約書が作成されないことが多いことも相まって、業務のやり直しや追加の注文があっても、報酬を増額してもらえないこともあります。
さらに、複数の企業間で委託料金が決定されているといった事態も考えられます。
これまでは、このような問題が起こった際には、消費者保護法や労働法による解決が図られてきましたが、不十分である点は否めないところでした。
独占禁止法がフリーランスを守る!
そこで、近年は独占禁止法による対応が注目されています。
独占禁止法というとあまり馴染みのない方も多いかもしれませんし、談合の禁止やカルテルの規制などを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
独占禁止法は、市場における公正かつ自由な競争制限を禁じる法律ですが、その一環として優越的地位の濫用(取引上優越した地位にある事業者が取引の相手方に対して不当に不利益を与えること)行為を禁止したり、複数の発注者の共同行為(カルテルなど実質的に競争行為の機能を制限する行為)を禁止したりしています。
優越的地位の濫用行為では、フリーランスの報酬を一方的に決定したり減額したりすることはもちろん、成果物の受領を拒否することや成果物に関する権利を一方的に取り扱うことなども禁止の対象となります。
複数の発注者の共同行為の禁止では、複数の企業が共同して、委託料金について決定(協定)することや、取引先であるフリーランスを個別に定めて固定化したり、地域ごとに固定化したりすることなどが禁止されています。
フリーランスの労働実態を公正取引委員会が調査
これまでは、フリーランスの問題について独占禁止法による規制はあまり語られていませんでした。
しかし、公正取引委員会により、「人材と競争政策に関する検討会」が開かれ、フリーランスの労働実態の調査と問題点が分析されました。
そして、2018年2月15日の公正取引委員会の報告書にて、業務委託において生ずるフリーランスの問題の独占禁止法による未然防止及び解決の必要性が指摘されています。
今後、独占禁止法によるフリーランスの問題への対応につきましては、公正取引委員会の正式な見解の公表、個別事案における主張の検討など、積極的な取り組みが期待されます。
【著者】
田中 友一郎 弁護士 (天神南法律事務所)
(転載元:Legalus )