総理大臣と社会的起業家の車座に参加しました

こんにちは、ヒラマリです。これまで散々「場所にとらわれない働き方」だの「関係人口」だの「ワーケーション」だのと旗を振りながら、自分は東京のコンクリートジャングルの真っ只中にいたのですが、長野と福岡と神奈川で長らく迷った末に、ようやく神奈川県の端の方に移住しました。

さて、今朝は首相官邸で、岸田総理との車座に参加する機会を頂戴しました。

現政権が開催する新しい資本主義実現会議では、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義の実現に向けたビジョン提示とその具現化を進めており、官民連携で社会課題解決を推進すべくソーシャルスタートアップの支援を強化していきたいと考えているそうです。

本日はその一環として、民間の立場から社会課題の解決に取り組む社会的起業家の話を聞く場が設けられ、7名の社会的起業家のうちの1人としてお招きいただきました。

実は10年以上前、大学院で「ソーシャルビジネス」を修論テーマに選び、アフリカまで社会的起業家のインタビューに行ったこともあり、巡り巡ってこうした場に参加できたことは個人的にも大変嬉しかったですし、新公益連盟(雑に言えば非営利団体版の経団連のような団体)でご一緒しているREADYFORの米良さんやHomedoorの川口さん、ライフイズテックの水野さんをはじめ、様々な分野で素晴らしい活動を展開されている方々とご一緒できたことも光栄でした。

・私自身や他のフリーランスで社会的課題解決に取り組んでいる方の取り組み紹介、
・日本において社会的課題を解決するためのビジネスが数多く生まれるために官民がどういった環境整備に取り組めば良いか、
という2点が事前に事務局から頂戴していたリクエストでした。

限られた時間を厳守する必要があったため、かいつまんだ話にはなりましたが、私からお伝え申し上げたのはおおよそ以下のような内容です。

①社会的な課題解決に興味を持たれた理由、これまでの取組、乗り越えられてきた困難、今後の事業展開など

フリーランス協会は会員からお預かりした会費で運営している、非営利型の一般社団法人で、保険や福利厚生といったベネフィットプランの提供を中心に多岐に渡る活動をしています。もともとのきっかけは、私が10年以上フリーランスとして活動を続けてきた中で、2回の出産と保活を通じて、日本ではフリーランスが「規格外」の存在で、会社員のセーフティーネットと大きな格差があると実感したことです。当時は自分で選んだ働き方だから自己責任として疑問にさえ思いませんでしたが、一億総活躍や人生100年時代と言われる中で多様な働き方を求める人が増えてきて環境整備の必要性を感じたことが、ライフワークとして協会を設立した一つのきっかけでした。

現在、当協会は、個人事業主や一人社長などの独立系フリーランスと、日中は組織で雇用されながら業務時間外に副業をされている副業系フリーランスを合わせて、6万5千人の個人会員・フォロワーがいます。非営利で利益を出す必要が無いため、必要十分な運営資金を除いて全て会員に還元する方針で、会員規模の拡大に応じて、年会費据え置きで、契約トラブルに対応する弁護士費用保険や税理士サポートなどの新たなサービスを拡充してきています。

また、実態が見えづらいフリーランス当事者の声を届けるため、毎年実態調査をフリーランス白書として公開しています。これまでも政府関係者の皆様には、フリーランスガイドラインやフリーランス新法の立案、コロナ禍での持続化給付金やベビーシッター助成など、我々の声に耳を傾けた政策を実現して頂き、大変感謝しております。

一方で、我々の仲間であるフリーランスの中にも、社会課題解決に取り組んでいる方が増えてきていると感じます。

たとえば、この春まで8年間、宮崎県日南市のマーケティング専門官として活躍してきた田鹿倫基さんは、業務委託でその職務を担う個人事業主でした。彼のマーケティングの専門知識を活かせただけではなく、役所のルールや組織の論理では時間のかかる意思決定も、外注先の田鹿さんの仕事としてスピードを上げられたことで、日南市は県外からの企業誘致やシャッター通りの復活など大きな成果を出すことができました。現在田鹿さんは、九州各地で地域おこしに取り組むフリーランス仲間と九州地域間連携推進機構という株式会社も設立し、自治体の垣根を超えた連携にも挑戦されています。

また、長野県富士見町に住むフリーランス編集者の増村江利子さんは、アメリカのポートランドとエストニアのタリンに暮らす仲間と一緒に、放置竹林を素材に水力発電で作るトイレットペーパー「バンブーロール」のサブスクリプションサービスを立ち上げています。3.11がきっかけで電力インフラに依存した生活に疑問を抱き、当初暮らしていた東京から長野に移住して、サステナブルな暮らしを実践する中で生まれたアイディアだそうです。

個人事業主という形態で活動をスケールするのはなかなか難しい側面もありますが、私も含めて、社会に対する課題意識に忠実に機動力を持って動けるフリーランスとしての側面と、対外的な箱としての法人の側面をパラレルで持ち合わせながら、柔軟に活動を展開する方が増えてきています。

②社会的課題を解決するためのビジネスが数多く生まれるよう官民がどういった環境整備に取り組めば良いか

フリーランスを含むスモールビジネスのスタートアップの視点から、3つお願い申し上げます。

一つは、場所にとらわれない法人登記です。居住地を問わず、同じ志を持った人々がチームを組んで、バーチャルに連携できるのが今の時代の醍醐味です。が、個人事業主だと取引できない自治体や企業もあるため、形式上、法人化することがあります。フリーランス協会も5年前に設立した時から全員複業のフルリモート組織で全国に事務局メンバーがいますし、田鹿さんの九州地域間連携推進機構は九州各地から、増村さんがバンブーロールを作っているおかえり株式会社はアメリカ、エストニア、日本の長野から創業メンバーが結集しています。

いずれも場所に縛られないデジタルネイティブカンパニーなのですが、九州全土を支援するというビジョンがありながら法人登記のためだけに鹿児島市に本店所在地を定めた時、この仕組みは時代に合ってないと田鹿さんは感じたそうです。法人税納付手続きの関係で本店所在地が必要なことも理解しますが、増村さんは海外在住の共同創業者がマイナンバーカードを持たないため、お住まいの諏訪エリアから長野市まで登記手続きに行く必要があったとのこと。登記申請や変更がすべてデジタルで完結できると、もっと起業が身近になると思います。

二つ目は、GAFA規制の議論についてです。GoogleやFacebookは、大きな資本を持たないスタートアップやフリーランスが初期投資を抑えて活動するための欠かせないインフラになっており、Amazonの有用性も特に地方の起業家にとって顕著です。GAFAが規制されて今のサービスが享受できなくなるのではないかと不安だと田鹿さんは仰っていました。寡占によるネットワーク効果もGAFAのサービスの利便性を高めている一因なので、寡占を規制するのではなく、インフラ税のような課税をすることで認めるという考え方ができないものかなと思います。

三つ目は社会保障の問題です。社会的起業家とは、すなわち自営業者なわけですが、日本は自営業者のセーフティーネットが脆弱です。フリーランス白書2021では、「働き方に中立な社会保険制度」を求める人が95.7%いました。国民健康保険には傷病手当金や出産手当金がないため、病気や怪我で仕事ができなくなると即収入が止まってしまうリスクと常に隣り合わせです。我々の調査では、出産した女性経営者やフリーランスの59%が母体保護で守られているはずの産後2ヶ月以内に復帰しているという実態も明らかになっています。
現在、首相が進めていらっしゃる勤労皆社会保険制度の議論に、非正規雇用だけでなく雇われない働き方の人たちもしっかり含めてご検討いただけますよう、お願いしたいと思います。

なお、最後に言及した勤労者皆保険制度については、ちょうど昨日開催された「全世代型社会保障構築会議」において「フリーランス・ギグワーカーへの社会保険の適用については、まずは、被用者性等をどう捉えるかの検討を進めるべき」という議論がなされたようです。

一部報道では、フリーランスの保険料負担を発注元企業に求めるのは無理筋だ、現実的ではない、というようなことも言われています。しかし、フリーランスと会社員のセーフティネット格差を無くしたいということと、フリーランスの社会保険料を誰が他の人に払って欲しいということは、全く違う議論だと思います。

私たちフリーランス協会は、設立当初の5年前から「働き方に中立な社会保険制度」を求めてきましたが、発注元企業が保険料負担をするよう求めたことは一度もありません。私たちは労働者ではないですし、不特定多数の企業と非連続に取引する職種も多いため、発注元企業が保険料を負担するのは非現実的だと考えています。

誰と労使折半するのかという話ではなく、社会保険料を個人と企業で折半するという考え方自体が、個人と企業が1対1の従属関係であるという前提に基づく前時代的なもののように感じます。

企業と個人の関係性が変わってきている中で、社会保険料納付の仕組みもアップデートが求められているのではないでしょうか。

ということで、最後は話がずれてしまいましたが、日本において社会的起業を広げようという流れになることは大変嬉しいですし、ぜひそのための環境整備をお願いしたいと思います。

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