プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会

フリーランス新法の政令案等に関するパブリックコメントを出しました

2024年4月12日付け「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)」等に対する意見公募手続に対し、フリーランス協会は下記のパブリックコメントを提出いたしました。

2024年11月1日の施行に向けて、発注者・フリーランスともにしっかり備えるための十分な広報周知と、施行後の円滑な運用のための体制整備がなされることを願っております。

私たちフリーランス協会は、個人事業主や一人社長、副業ワーカーを含むすべてのフリーランスが、安心して適正に取引できる環境整備を目指して活動する非営利団体です。労働者の権利や保護ではなく、事業者としての「キャリア自律」を旗印に掲げてきた当協会の会員総数(有料会員・無料会員・SNSフォロワーの総数)は、2024年4月末時点で10万9千人を超えております。
 
当協会は、2017年の設立以降、複数回にわたる実態調査を通じて、フリーランスと企業間の取引において口約束や契約トラブルが横行してきたことをデータで可視化し、法整備を訴えてまいりました。
このたびフリーランス法の法律施行令(案)が取りまとめられ、11月1日の施行に向けた準備が進められていることについて、フリーランスの多様性に配慮した広範な実態把握と丁寧な議論を積み重ね、ご尽力くださっている公正取引委員会、厚生労働省、中小企業庁、そして内閣官房の皆様に深く感謝申し上げます。
 
公正取引委員会及び厚生労働省の両検討会で委員を拝命し、法律施行令(案)の議論にも参加していた立場ではありますが、あらためて此処に、法律施行令(案)に対する意見を申し述べます。
 
▼政令案について
 
1)立法段階で禁止行為の対象となるのは「一定期間以上の継続的業務委託」のみという制約が入ってしまったことに対し、発注者団体からは3カ月や6か月が妥当という根強い意見もあった中で、最終的に最短の1か月とされたことはせめてもの救いでした。
しかし、過去に取引実績のない相手こそ、不当・不法行為を厭わない事業者であることの見極めが難しく、トラブルが生じがちな実態があることを踏まえ、本来は単発の取引でも禁止行為の対象とすべきと考えております。下請法の禁止行為に期間の制約はないこと、また、令和5年度に公正取引委員会・厚生労働省の連名で実施された調査でも、業務実施期間が「1か月未満」の人が4割に上ることが明らかになったことも踏まえ、施行後三年の法規定見直し検討に向けて、取引期間が1か月未満の業務委託におけるトラブルの実態把握に努めていただけますようお願い申し上げます。
 
2)上記と同様に、育児介護等の配慮義務、解除等の予告義務の対象となる「継続的業務委託」について、家内労働法や育児介護休業法と照らし合わせて6か月とされたことは、フリーランス特有のトラブルのケーススタディが少ない現段階においては、一定の納得感を生むものと考えます。
しかし、育児介護等に対する配慮が必要とされる事情と、中途解除等の事前予告が必要とされる事情とは全く異なるものであり、法の対象となる継続的業務委託の期間が同一である必然性は認められませんし、いずれも法の保護からこぼれ落ちてしまう人を減らすべく、もっと短い期間を適用して頂きたいです。施行後三年の法規定見直し検討において、それぞれの義務の対象となる取引期間が妥当なものとなるよう、関連トラブルの実態把握に努めていただけますようお願い申し上げます。
 
▼法律施行規則案や指針案などについて
 
1)フリーランスの取引実態や多様性に配慮し、緻密な議論・検討を重ねた上で、細やかな場合分けも含め、丁寧なルールメイキングを行って頂いたことは大いに感謝しております。
他方で、多様性やケースバイケースの事情を担保しようとした結果、受発注の当事者から見て複雑難解で分かりづらいルールになってしまったことは否めません。発注者やフリーランスにとって理解しづらく、法解釈にブレが生じて新たなトラブルの火種になるようでは、せっかく立法して頂いた意味が半減してしまうため、施行に向けた広報周知においては法曹関係者向けの難解な用語や言い回しは極力排し、平易な言葉で訴求していただけますようお願い申し上げます。
 
2)現段階においては議論を尽くした上での案だと感じておりますが、実際に運用が始まってから、改善点が見いだされ、もっとより良いルールや考え方が求められていく可能性も多分にあると思います。三年後の見直しに向けて、違反事例および違反までには至らなかったトラブル事例を蓄積し、今回策定された規則や指針がフリーランスの取引実態に適っているのかどうか、慎重に見極めて見直す心積もりをお願い致します。
 
▼その他について
 
1) フリーランス法は条文によって管轄が公正取引委員会と厚生労働省に分かれるという特殊事情があります。フリーランス法の施行後にフリーランスが法令違反に遭った場合の一次窓口はフリーランス・トラブル110番であり、そこで弁護士がどの条文の違反なのか(公正取引委員会と厚生労働省のどちらが担当なのか)を助言するという運用が想定されていると思いますが、そのフローがしっかりと分かりやすくフリーランス当事者に周知されることを望みます。
また、トラブルに見舞われ切迫した状況にある方が、行政に問い合わせたにも関わらず、管轄が異なるという理由でたらい回しにされ、何度も同じ説明をしなければならないということが無いよう、十分な情報連携や体制整備をお願い申し上げます。

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