1月18日に行われた「内閣官房と法人設立申請の電子化を考えてみよう」のセミナーレポート。第2回となる今回は、いよいよ起業環境の改善にむけて政府が取り組んでいる「電子化」に切り込みます。プレゼンテーションは、内閣官房日本経済総合事務の川村尚永さん。申請の電子化、デジタルトランスフォーメーション(ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でよい方向に変化させるという概念)にむけて、今まさに現在進行形のプロジェクト、その全貌が明らかに!
「電子化」のメリット&デメリットを徹底トーーーク!(上)はこちら
日本的縦割りで、起業後進国に……!
川村さんが所属する内閣官房日本経済再生総合事務局のミッションは、省庁の垣根を超えて政府の成長戦略を実現に取り組むこと。なかでも、川村さんが担当しているのが、事業環境の改善です。
内閣官房日本経済再生総合事務局の川村尚永さん。
「国際的に見ると、日本の事業環境は総じてよくない。OECD加盟国のなかでは35カ国中25位です。法人設立に関しては、30位。省庁バラバラの縦割りで申請に時間がかかることも、評価を下げている大きな要因です。
諸外国では、どこからでも24時間365日、行政サービスの提供が可能となるデジタル化、オンライン化が加速しています。
ところが、我が国では対面での手続きが多く、あちこちに出向かなければなりません。定款認証では公証人のところへ行って面前での確認、代表印は紙に押して別送。それから国税、地方税、雇用保険や年金、健康保険、すべての手続きが別々に必要で、それぞれに書類を持っていかないとなりません。同じ情報を何度も記入、提出しなければならないのも煩雑です」
全手続きをまとめる存在が登場!
オンライン化されているものもあるとはいえ、それも管轄省庁ごとにバラバラ! 登記事項証明書は登記ねっと、国税はe-Tax(イータックス)、地方税はeLTAX(エルタックス)といった具合に、それぞれにソフトウェアをダウンロードし、システムごとに異なる使い方を覚えなければなりません。
こうした課題を解決するための戦略が、川村さんが携わる「未来投資戦略」です。
「バラバラに分散している手続きを束ねるために、マイナンバーに関するシステム『マイナポータル』の活用を進めています。まずは来年度中に会社ができたあとの手続きがすべて、マイナポータルで完了するようになります。さらに国税から年金までの手続きをまとめてできるようにする仕組みづくりが、来年度後半に立ち上がります。
システムを利用するには、本人確認のためにマイナンバーカードの取得が必要です。法的個人認証を使って、デジタルで本人確認をするわけです。マイナンバーの取得が進んでいないことが課題です……!
ただ、役所のシステムだけではなく、APIを解放してクラウド会計サービスなどからも接続できるようにして、会社側の手続きまですべてまとめられれば、相当UI、UXのいいものができるのではないか、と強く期待しています」
3月からは定款認証にテレビ電話が導入される!
申請の煩雑さが解消されると同時に、手続きにかかる時間もぐんと短縮されます。
「これまで法人設立の手続きは、7日かかるといわれていました。現在は、会社設立は優先処理をするという方針で、法務省は3日以内の完了をコミットしています。ただ、混み合う時期は、マンパワー不足から3日以上かかる可能性もあります。また、世界標準である24時間をめざすなら、どうしても電子化が必要です。
公証人の面前で行われる定款認証は、テレビ確認でOKに。3月までにサービスインします!
私自身は、公証人による定款認証そのものがいらないのではないかと、公証人が担う業務をデジタルに置き換えることは可能だ、と大胆な議論もしたのですが(笑)、やはり公証人による本人確認は行う、というのが現段階の方針です」
3月までにテレビ電話導入!のニュースに、会場からは拍手喝采!
「また、国の手続きでは、登記事項証明書の添付を不要にしようとしています。会社のマイナンバーである法人番号があれば、企業を間違いなく特定できます。法務省に登記されている情報を、役所内で閲覧、転記できるシステムを開発中で、2021年までには運用を開始したいと考えています」
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日本の起業環境が、ガラッと変わりそうな気配がムンムン! 電子化後進国から脱却し、起業したい人がためらうことなく一歩を踏み出せる世の中への下地作りが進んでいます。
次回は、申請に不可欠なアイテム、印鑑にフォーカス! 深く根付いている印鑑文化は、いかにも電子化とは相性が悪そうですが、果たして?