プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会

【イベントレポート】ワーケーションは日本の職場において働き方変革のきっかけになるのか?(寄稿者 奄美市産業創出プロデューサー 勝 眞一郎さん)

梅雨の合間の東京大手町。去る2019年7月18日、500名を収容する巨大なホールに、開場時間の13時半から続々と人が押し寄せました。

ワーケーションの全国的な普及推進活動を行う「ワーケーション自治体協議会」(通称:ワーケーション・アライアンス・ジャパン(WAJ))の設立準備に向けたキックオフとして、日本テレワーク協会と和歌山県、長野県が、「ワーケーション・スタートアップ!」フォーラムを開催していたのです。

ワーケーションに対する地方自治体や企業の期待の高まりを感じる会場は、熱気に包まれていました。

大手町プレイスカンファレンスセンターにて開催されました。

開会の挨拶は、和歌山県の仁坂知事。和歌山県の重点施策としてワーケーションを推進していることを述べ、開会を宣言しました。異例だったのは、このあとです。今回のワーケーションの動きを和歌山県庁で推進し、この7月で総務省に戻った天野 宏さんに時間を渡し、ワーケーションの基本の解説を任せました。

天野宏氏。

「ああ、ワーケーションの本質は、組織や役職に関わらず、その時点での最高のアウトプットを場にもたらすことなのだな。」と勝手に感動していました。

株式会社テレワークマネージメント 田澤代表の基調講演

テレワークといえば田澤さんと言われるほど、この分野では草分け的存在です。現段階でのワーケーションの分類を構造的に解説してくださいました。ワーケーションのフォーラムらしくネットでつないでの基調講演が印象的でした。そこにいること自体には、そう価値はないのですね。


田澤さんは、自分の判断で仕事をする「自営型ワーケーション」、すなわちフリーランスのワーケーションと、企業が仕事としてその働き方を認める「雇用型ワーケーション」に分類。
企業側においては、労務管理の問題、就業規則や出張規程、そして労災の適用についての整理が必要であることが指摘されました。
受け入れる地方自治体においては、仕事環境だけでなく、事前と事後の企業へのフォローや企業に魅力的な企画、地域住民との交流の段取りが指摘されました。
中でも重要だなと感じたのが、テレワーク中の家族サポートです。私も奄美市にいて、ワーケーション中の一時預かりについての問い合わせを多く受けます。ただ地元のこどもたちと一緒にゲームをしたりYouTubeを見るのでなく、何か体験ができたらというリクエストを多く聞きます。

ワーケーション自治体協議会の設立

ワーケーション自治体協議会の設立について、和歌山県と長野県の両知事による趣意書への署名が行われました。東京でも大阪でもない、和歌山と長野がワーケーションと言う働き方をけん引するという姿に、鹿児島県人としては少しジェラシーを感じました、鹿児島県も頑張らねば!


スタートの今回は、協力自治体として和歌山県と長野県の2県が。賛同自治体として38の県市町が参加しました。今後も拡大していくことが予想されます。

地域や企業による取り組み

各地の取り組み

各地の取り組みとして、長野県、和歌山県、そして鎌倉市の取り組みが紹介されました。各地とも首都圏の企業がワークスペースで仕事をすることはもちろん、各地域でのアクティビティを積極的に取り入れているのが印象的でした。

各企業の取り組み

実際にワーケーションの取り組みを行なっている2社と、ワーケーションを支える仕事をしている6社からの事例紹介がありました。
日本航空株式会社では、経営破綻からの復活に際し、企業理念の最初が「全社員の物心両面の幸福の追求」であるとし、その実現のために働き方の一つとしてワーケーションに取り組まれていることをご紹介いただきました。既に勤怠管理システムに「ワーケーション」という項目があるほど労務管理にまで浸透していることが分かりました。
NTTコミュニケーションズ株式会社においても、その取り組みは長く、企業にとっても生産性だけでない効果があるため推進している旨の説明がありました。
また、ワーケーションを支える企業からは、通信技術やスペースの設置、交通や魅力的な場所との連携が重要など、実証の結果の紹介をいただきました。

まとめ

これまで、満員電車で同じ時間にオフィスに集まり、同じ時間に満員電車で帰るスタイルから、仕事の内容に応じて場所と時間を選択でき、成果で評価がなされる時代への変化を私は感じました。
ABW(Activity Based Working)は、仕事の内容を分解し、各仕事がどこでどのようになされるべきかを考える手法です。意思決定、作業、会議、資料作成、アイデア出しといった作業は、全てがオフィスに集合して行う必要はありません。今回の発表でも、「アイデア出しは、日常の空間以外のほうが良くできた」という意見もありました。
家族と共に幸せな時間を過ごすことと、高い品質での仕事のアウトプット。さらに、地方でも豊かな体験をもたらすワーケーションの取り組みが、今後も進化し拡大することを期待します。

おまけ

テレワークやワーケーションに関する取り組みを全国の仲間たちとシェアしているFacebookのグループがあります。ご興味ある方は、是非参加してみてください。
LOCAL REMOTE WORK NETWORK
https://www.facebook.com/groups/441298993340618/

【執筆者プロフィール】
勝 眞一郎 さん
1964年生まれ。奄美市産業創出プロデューサー、サイバー大学IT総合学部教授、NPO法人離島経済新聞社 理事、総務省地域情報化アドバイザーなど。奄美大島と神奈川県藤沢市の二地域居住。

 

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