こんにちは。フリーランス協会の平田麻莉です。
3月2日に発表された小中高休校に伴う休業補償は、フリーランス(個人事業主や小規模事業経営者)は対象外でした。SNSでは悲痛や憤りの声が轟いています。それもそのはずでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、仕事が飛んでしまった、稼働できなくなった、クライアントからの支払いが滞ってしまったなど、窮地に立たされているフリーランスは沢山います。体力のある大手企業と比べて、零細事業者であるフリーランスにとっては本当に辛い状況です。普段からリモートワークがデフォルトで通常通りの仕事量を抱えている方も、お子さんの休校でなかなか仕事が進まないと悲鳴を上げているかもしれません。私自身も様々なお仕事がキャンセルになって、少なくない収入減が発生しています。
もちろん、政府もフリーランスを見捨てているわけではありません。個人事業主への支援をどうするか、各省庁で出来ることがないか検討をしてくださっています。週末返上で対応しているのでしょう、先週末にフリーランス協会へも相談をいただきました。
それにも関わらず、先日発表された休業補償でフリーランスが対象外なのはなぜか。理由は二つあると思います。
一つ目は、主な財源が雇用保険であること。私たちフリーランスは雇用保険を支払っていない(正確には支払いたくても支払える仕組みではない)ので、我々がその財源を使うことはフリーライドになってしまい、普段保険料を負担している企業や会社員から猛反発が出るでしょう。
二つ目は、この休業補償は企業経由で配賦されること。企業に勤める人は「休業」の概念があり、何日間休業になったのかの算定や証明が可能です。自己申告とは違い、誤魔化しが効きにくい仕組みです。雇用保険を支払っていない週20時間未満の短時間労働者も「休業」は証明できるので、一般会計を財源に同様の補償がなされることになりました。
なるほど理屈は分かった。でも、私たちフリーランスはどうなるの??って思いますよね。休業補償でも所得補償でも、なんでもいいから窮地を救ってくれーという悲鳴があちこちから聞こえてきそうです。
そもそも自営業者という特性上、フリーランスには「補償」という概念がないということも重々分かりますが、今は危機的状況ですから何らかの支援策は急務だと私も思います。
フリーランスへの所得補償を即決できない理由として、「補償対象となる金額(=A:本来得られる予定だった報酬額 - B:休校理由で得られなくなった報酬額)」の証明が難しいことがあります。
政府担当者からの相談を受け、フリーランス協会の事務局メンバーにも知恵を出してもらいましたが、信ぴょう性を担保しつつ、あらゆる職種で対応できそうな妙案が浮かばず、非常に悩ましい状況です。(Aの証明もBの証明も、信憑性と簡便性と職種普遍性を両立させるのが難しい。口約束で仕事の発注、キャンセルが行われているケースも多い。)
個人事業主すべてを対象に一律に日割りで補償を出す案も検討いただきましたが、本当に普段から稼働している人と、開業届を出しただけで実質休業状態の人をどう見分けるかが問題になってきます。
もはや、実際は新型コロナウイルス感染拡大に由来する損害が出ていない人にも配賦されることを織り込んで、ベーシックインカムのように一律で補償金を出すのか、もしくは直接的な補償にはならないけど、苦肉の策として小口、低利、迅速、無担保、無保証の融資で間接的に支援するのか…
残念ながら、私たちだけでは「これだ!」という妙案が浮かびませんでした。そこで、皆さんのお知恵をお借りしたく、「新型コロナ感染拡大で実際にどういう影響が出ましたか」と「政府に求めることは何でしょうか」という二点について、昨日の昼から深夜にかけて、緊急コメント募集を行いました。募集期間は12時間ほどで、メディア取材対応も併せて依頼する内容だったにも関わらず、79名の回答が集まりました。回答してくださった全ての皆様にご協力を申し上げます。
ご参考までに、被害状況の一部を紹介させていただきます。(取材可として頂いた方の回答の中からピックアップしています)
学校で行う教員・生徒対象としていた研修や講演、団体や企業が主催するワークショップが中止や延期となり、3月に予定していた案件が全てなくなった。例年この時期より入ってくる4月以降の仕事の問い合わせや相談も、見通しが立たないからか途絶えた状態。(プランニングディレクター)
政府の自粛要請により、フィットネスクラブのスタジオレッスンがほぼ閉鎖になり、2週間丸々休みになりました。ありがたい事に給与補償をしてくださる会社様もいらっしゃいましたがごく少数です。約半月分の給料がなくなり、また状況によっては自粛期間延長の可能性もあるとの事でこの先が不安です。給与補償がないというのを知った上でフリーランスの道に進んだのでその為の貯金でしばらくは生活出来ますが、業務再開の目処が絶たれてしまうような事態になると非常に不安です。(フィットネスインストラクター)
3月だけで講演が17件中止になり、年収の半分が失われた。(講師)
音楽教育の現場では、学校が休校になれば連鎖的にお休みにさぜるを得ないのが現状。いつ元に戻るかわからずです。又、演奏の仕事では集客自体がNGとなれば全ての仕事がなくなります。(ピアニスト、ピアノ講師)
3月予定の学会、その他イベント中止により、仕事依頼案件が全てキャンセルでゼロ収入(映像 音響 オペレーター)
海外イベントがなくなり旅費に(キャンセル等)大きなマイナスが出ました。国内イベントも激減しています。(ライター)
卒業式の中止により、卒業袴の当日撮影のキャンセル(またはキャンセルの可能性)・スポーツ大会の中止により、雑誌での取材、撮影のキャンセル・各種イベント、講演会等の中止により、撮影のキャンセル(フォトグラファー)
イベントMC中止、披露宴司会延期.新入社会人研修、スキル研修中止(フリーアナウンサー)
出展先のイベントが開催中止になりました。既に経費を支払っていて返金がない物もあり支出のみでマイナスになってしまいます。(講師)
出先仕事のキャンセル、来店客の激減(飲食業)
会社員より何より、経済的被害を一番ダイレクトに受けているフリーランス。
フリーランスにも支援が必要だということは政府も認識してくれていますので、公平性を担保しつつ迅速に支援する方法を、引き続き検討していただきたいと思います。
なお、所得補償という形ではありませんが、個人事業主も利用できる様々な支援策で既に発表されているものもあります。ぜひ確認してみてください!
経済産業省 新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ(パンフレット)
中小企業庁 新型コロナウイルスに関連した感染症対策情報
なお、コメント募集は一旦締め切って、今朝10時の段階で集まった回答を関係省庁に提出済みですが、フリーランスへの支援策について妙案のある方は、まだコメント募集フォームを開けていますので、ぜひアイディアやご意見を寄せてもらえると嬉しいです。
緊急募集!!新型コロナ感染拡大におけるフリーランスの不安や課題に関するご意見について
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdwgP8c4QRTKKiMkVJTJGq9w8MBRh4Vr0VhG76KDW9u5IlDFw/viewform
関連記事 追記
「演奏できず、収入ゼロ」新型コロナでフリーランス悲鳴(3/5朝日新聞デジタル)
フリーランス悲鳴「所得補償を」 新型肺炎でイベント自粛も制度対象外(3/5 SankeiBiz)
新型コロナ補償の対象外 フリーランス悲鳴(3/6 TBS NEWS23)
>報道関係者各位
会社員向けの休業補償発表を受けて、フリーランスの被害状況を知りたい、困っているフリーランスに取材したいというご要望につきまして、
今回のコメント募集で取材対応可と回答くださった方については、ご要望に応じてご紹介させていただく所存です。
pr[@]freelance-jp.org ([]内は半角)までお問い合わせください。