東京から地方移住して1年半。住んでわかったメリット・デメリット

通い慣れた店がシャッターを閉め、学校や保育園は休園。スーパーからはマスクだけでなくトイレットペーパーまで消えるなど、コロナによって日常が崩れさった2020年春。
一方で、リモートワークが一気に進み、会議や打ち合わせもオンライン化。働く場所に縛られない、新しい働き方が加速しました。
好きな仕事を手放さず、どこでも働けるならば、密な都会を飛び出して、のんびり海を眺めながら、はたまた自然の中でのびのび子育てしながら暮らすこともできるのでは?今こそ、地方移住なのでは!?そう考えている方、いらっしゃるのではないでしょうか。

東京から福岡県糸島市へ、家族5人で移住

私は今、福岡県糸島市という海近くの街で、フリーランスで編集やライターをして暮らしています。2018年の夏に、家族5人で東京から移住してきました。大学を卒業してからずっと東京で会社員として働き、結婚・出産後は典型的なワーママとして忙殺される日々でした。住むところも毎日のタイムスケジュールも、すべてが仕事中心の毎日。けれども3人目の出産を機に、もっとやりたいこと、住みたい場所、したい暮らしを実現したいと考え、家族で移住することに。同時に会社も辞めてフリーランスになりました。

移住先である糸島市は、福岡一の繁華街・天神から電車で40分ほどの場所にあります。我が家は駅から5分の住宅地ですが、歩いて3分で田園風景が広がり、海にも山にも車で15分。糸島の海は本当に美しいです。

もちろん、いくら自然豊かな場所であってもコロナの影響は小さくなく、自粛の日々でした。けれども、庭に砂場や滑り台を設置してプチ公園化したり、人がいない海や山を散歩したりと、地方ならではの楽しみが本当にありがたい日々でした。

働き方や暮らし方が大きく変わったwithコロナの時代。密な都会を抜けだし、地方移住を考え出す人も増えるのでは、と考え、「地方移住、実際どうなの?」ということをメリット・デメリット両方からご紹介したいと思います。

移住のメリット1 食べ物がおいしい

野菜の旬にも詳しくなりました。

食べ物は本当においしいです。そして安い。家の近くに直売所があり、採れたての旬の野菜や魚が手に入ります。野菜はものすごく甘く、味が濃くて新鮮。冷蔵庫で一週間放置した小松菜も、ピンと元気なままです。

移住したら家庭菜園をやろうと思っていました。けれど土を買い、苗を買い、虫と格闘し、やっとできたのが小さいブロッコリー。大きくて美味しいブロッコリーが90円でごろごろ売っているのをみると、「野菜づくりはプロに任せた方がいいな」という気持ちになります。楽しいから今も続けてますけどね、家庭菜園。

同じ市内でももう少し田舎の方に移住した方は、「移住者が身に付けるべきは、食べ物を採るスキルではなく食べるスキルだ」と話していました。周囲の農家さん漁師さんから大量にいただく野菜や魚を、保存食にしたりさばいたりするスキルの方がよほど大事だと。

地元食材をふんだんに使ったオードブル。コロナ自粛中はあちこちのテイクアウトを楽しみました。

食材だけでなく、飲食店もレベルが高く、美味しくおしゃれな店が多いのも自慢です。自粛期間中も食べる楽しみが暮らしを支えてくれました。毎週末、あちこちのお店のテイクアウトを買うことで自粛ライフを乗り切りました。

移住のメリット2 遊ぶ場所がたくさん

親子でカヤックに挑戦。子どもたちも移住してからアクティブに。

移住前から、「子どもは戸外で、五感をフルに使って遊ぶべし」との思いがあり、なるべく外で遊ばせたいと考えていました。けれども当時近所にあったのは、遊具が2つほどの小さな公園か、都心のキレイな芝生広場くらい。車もなかったのでフラリと遠出するのも難しく、結局週末は、もっぱら習い事で時間をつぶしていました。

海、山、湖、森林…キャンプ場もバリエーション豊か。

移住後の今は自然がぐっと身近に。海でシュノーケルしたり、磯で生き物を見つけたり。川で魚を採ったり、山で野生動物のフンを見つけて大騒ぎしてみたり。東京時代は渋滞に巻き込まれながら3時間かけて行っていたキャンプも、1時間もかからず到着。サイトの予約も取りやすく、気軽に行けます。

自然の中での遊びのいいところは、大人も楽しいところ。今年のチャレンジは親子で田植えとSUP。毎年楽しみが尽きません。

大分への一泊旅行で、アフリカンサファリへ。

また、移住して車を買ったことで、日帰り旅行や一泊旅行にもぐっと行きやすくなりました。大分で温泉に入ったり、ワイルドなサファリパークに行ったり。鹿児島で砂蒸し風呂に入って、地元居酒屋で焼酎を飲んだり。子どもたちと一緒に、未知の経験をし、思い出をたくさん作っています。

移住のメリット3 子連れ移動が楽

車があると九州中どこでも行けます。

東京時代の移動手段はバスや地下鉄などの公共交通機関でした。数分おきに規則正しく運行するバスや電車は便利だけれど、小さい子どもはいつ騒ぎだすかわからず、いつもヒヤヒヤ…。
保育園の送迎は電動自転車です。年長と2歳児を前後に乗せ、二人分のシーツに布団カバー、夕食の買い物袋と大荷物を抱えて、アップダウンの激しい道を往復するのは本当に大変でした。

一方、移住先は車社会。車がないと不便なのはデメリットでもあるけれど、子ども3人連れての移動手段としては最も適していると感じています。
なんせ、どれだけ騒いでもOK。のんびりおしゃべりしたり、おやつを食べたり。長距離移動時には動画を流して即席映画館にも。おむつやら離乳食やらおもちゃやら、何かと荷物の多い子連れ移動も、車なら問題ありません。

歩いて移動する場合も、人は少なく歩道は広く、子どもが駆け回ってもくるくる踊りだしても安心です。東京時代は歩道が狭く、人も自転車も多かったため片時も目が離せませんでした。

それから電車も子連れに優しいです。同じく東京からの移住者である友人は、「子連れで電車に乗ると、100%席を譲ってもらえる」と感動していました。東京でも、子どもに声をかけてもらったり、席を譲ってもらったりしたことはたくさんあります。けれども、基本的に電車は「働いている人のための乗り物」という意識があり、肩身が狭い思いをしていました。

子連れ移動が楽になったことも、我が家のおでかけ回数が格段に増えた要因の一つです。

移住のメリット4 保活が楽

園バスが家の前まで迎えにきてくれます…ありがたすぎる!

東京でのワーママ時代、頭を悩ませたのが保育園問題です。一人目の育休中、「少しでも息子に合った園を探そう」と見学を始めて、すぐに現実を知りました。どこの園も空きがあるどころかウェイティングリストに3桁の人数がならんでおり、園庭のある認可園は雲の上の存在、認証園も入れるかどうかという状況でした。

さて移住先。移住当時、保育園の待機児童は4人でした。4人!それも、希望園の空きを待っている人たちだったので、園さえ選ばなければ年度途中の入園も可能とのこと。
我が家は新年度からの入園希望だったため、ゆっくり多くの園を見学してまわることができました。モンテッソーリ教育を実践する園、地方ならではの広大な園庭でたっぷり外遊びができる園…。7園ほど見た結果、自然に囲まれたのんびりした園を第一希望に決めました。夏は梅ちぎりにびわ収穫、秋は芋堀りに柿収穫、みそや納豆づくりまで行うという食育に力を入れた園で、食いしん坊な娘にぴったりと考えたからです。
こうして、多くの選択肢の中から我が子にあった園を選ぶことができる。本来は当たり前であるはずのことなのに、東京では「入ること」すら難しい状況でした。

ただし、移住先であるここ糸島も、昨年・今年と待機児童がかなり増えたそうです。糸島に限らず、待機児童問題は数年で様変わりするので、移住を希望する方は必ず自治体に最新情報を確認しておきましょう。

移住のメリット5 家が広くなった

今年はミニトマトと大葉を植えました。

東京に比べ、一般的に地方は住宅費が安いです。我が家の場合は東京時代に比べ、家賃は約半分になり、広さは1.5倍になりました。東京時代、「住まい」は常に悩みの種でした。「家賃」「通勤利便性」「住宅の快適さ」、常にどれかを我慢しなくてはならず、結果、「快適さ」を妥協して都心で暮らしていました。家は狭くていつも散らかり、目の前は交通量の多い幹線道路で窓も開けられず。階下への足音を気にして、遊びたい盛りの3歳児をたしなめる日々。それなりに楽しく暮らしていたけれども、今思えば、ストレスの多い家でした。
そして移住後の今は、駅から5分の典型的な庭付き一戸建てに暮らしています。とりたてて特徴のない普通の家だけれども、家族5人で過ごしていても狭さを感じることはありません。庭があって、子どもをすぐに戸外で遊ばせられるのも気に入っている点です。コロナでの自粛中も、ビニールプールを出したりBBQをしたりと息抜きの場になりました。
また、まだ使ってない部屋があり、夫婦それぞれの仕事部屋が持てたのも、リモートワークを行う上でとても助かっています。
同じ移住者である友人の家は、庭でたき火をしたり、鶏を飼ったり、秘密基地を作ったりできるほどの広さ。もともと人が多くない地域のため、自粛生活の息苦しさとは無縁の様子でした。

多くの仕事でリモートワークが進み、打ち合わせや会議もオンライン化すれば、都心に通う必要もなくなり、「駅徒歩○分」の価値は薄れていくのではないか。地方の、広い土地での暮らしを求める人がこれから増えるのでは…そんなことを考えています。

さて、ここまではメリットを紹介してきましたが、もちろん移住生活にはデメリットもあります。正直、「この点は東京、良かったよなぁ」と思うこともあります。次からはそんな「地方移住のデメリット」をご紹介したいと思います。

移住のデメリット1 仕事の量や幅が限られる

仕事を通じて、移住先のお店にもたくさん行きました。楽しかった…!

移住前、私たち夫婦はどちらも会社員でした。移住を機に、私は編集・ライターの仕事で独立しましたが、なかなか条件のいい案件に巡り会えず、「やはり案件の量・質ともに東京が優位なのか」と悩みました。
フリーランス向けのジョブマッチングサイトを使い「リモートワーク可」の条件で検索しても、上流行程の仕事ほど、「週に数日は東京本社への出社が必要」という案件ばかり。結局はwebに頼らず、地道に人脈を広げ、営業活動をすることで、徐々にやりがいある仕事ができるようになりました。

ただ、仕事における東京と地方の差異は、職種によって大きく異なります。夫はコンサルタントとして独立しましたが、仕事の量や質について「東京時代と変わらない、むしろ案件は多い」と話します。

そして、コロナによるリモートワークの加速。これにより、フリーランスであっても会社員であっても、地方で仕事をすることのハードルが一気に下がりました。これからは、移住先でイチから仕事をつくらずとも、東京での仕事を持ったまま、地方移住することも可能になっていくでしょう。

移住のデメリット2 子どもの教育の選択肢が限られる

子どもたちのピアノレッスン、月の半分はオンラインで行ってます。

移住前の東京時代の住まいは、「中学受験率が9割」という場所だったため、漠然と、「うちの子たちも受験するのかな」と考えていました。一方で移住先は、公立校が強い土地柄。トップ進学校が名を馳せており、その学校目指して公立中で勉強するというのが黄金ルートのようでした。進学校以外にも特色ある教育をしている学校など多くの選択肢があった首都圏に比べると、移住先の状況は多様性に欠ける印象です。

また、子どもの習い事も、首都圏に比べて選択肢がぐっと少なくなります。スイミング、サッカー、ピアノなど一通りのものしかありません。東京時代に子どもの友達が、チェロやマリンバ、チェスなどそれぞれ多様な習い事を楽しんでいたことを考えると、少々物足りない気がします。今後、子どもの興味を伸ばそうとしたときに、その受け皿となる場所はあるのだろうかと考えることも。

ただ地方でも、特色ある教育をしている学校はあるし、型にとらわれず、自分たちで考えて子育て・教育をしている人もたくさんいます。子どもの放課後や休日を充実させるべく、場所や人を探してイベントを企画するなど、自ら動いて問題解決する人もとても多い。選択肢もロールモデルも多く、既に用意されている東京とは違うからこそ、自分たちが、自分の子たちがどうしたいのかを見極め、自らの力で応えていかなくてはと思っています。

移住のデメリット3 コミュニティが狭い

散歩中の風景。早朝なので誰にも会いません。

「コミュニティが狭いこと」はメリットでもあるのですが、ここでは、あえて負の側面を書こうと思います。
私の住んでいる場所は、「自然が多い地方都市の街なか」なので、よく地方移住の体験記で語られるような「田舎の濃すぎる人間関係」はありません。近所には同じようなファミリー世代が多く住み、そのほとんどが都会からの移住者です。それでも東京と比べると「コミュニティが狭い」と感じることは多いです。

まず、どこに行っても知っている人に会う。スーパー、飲食店、病院…etc。お客さん同士だったり、店員と客だったりと立場は様々ですが、とにかく知ってる人だらけで、うっかりすっぴんで出かけることもできません。東京では賃貸暮らしだったので、近所の人間関係を気にすることなく、気楽に暮らしていました。

情報も、人が握っていることが多いです。何でも検索すれば出てきた都会と違い、美味しいお店、穴場の釣り場、水遊びできる川・・・。誰かに聞かないとわからないことが多いのです。別に秘密にされてるわけではなく、聞けば気持ちよく教えてくれます。ただ、ネットでのドライな情報収集に慣れていた身には、最初は戸惑いもありました。

同じ市内であっても、どの地域に住むかによって、地域社会との距離感は大きく変わります。濃密な人間関係を楽しめるか、ストレスに感じるかは、人によって大きく差が出るところ。どのレベルであれば自分たちが居心地よく過ごせるのか、役所や先輩移住者など、なるべく多くの人に会って情報収集し、判断することをお勧めします。

移住を楽しめるかは「自分で動く力」が鍵

今回の記事を書くにあたり、改めて自分たちの移住生活を思い返してみたのですが、「デメリットはほぼないな…」というのが正直な感想です。移住前には不安もたくさんあったはずなのに、今こうしていると、「何があんなに不安だったんだっけ?」と不思議になるくらい。
ただ、地方移住を楽しむためには、「自分で動く力が必要」だということは、移住後1年半たった今もとても感じています。

東京時代は、「会社員」「ワーママ」といった流れに乗っていれば、まわりも同じような人ばかりで、ぼーっとしてても情報は入ってくるし…という状況でした。
けれども今は、仕事はもちろん、子どもの教育も週末のレジャーも、自分で動き、情報を集め、人に声をかけて関係性をつくらないと進んでいきません。
「自分で動く力」さえあれば、どの地方に移住しても、海外であっても、自分たちらしい暮らしをつくっていけるはず。本当に自分が住みたい場所で暮らすのは、この上なく楽しいですよ!

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