プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会

人材と競争政策に関する検討会の報告書説明会(公正取引委員会)に参加しました

フリーランス協会は2018年5月16日、公正取引委員会による『人材と競争政策に関する検討会』の、報告書説明会に参加しました。当日はパンフレットが配布され(こちらで確認できます)、スライドを元に報告書のポイントの解説が行われました。

「人材と競争政策に関する検討会」については、フリーランス協会もアンケートによる実態調査やヒアリングの協力をして参りました。その節にご協力頂いた会員の皆さまに、改めてこの場を借りて感謝申し上げます。

また、今回非常に熱心にフリーランスの声に耳を傾けて頂いた公正取引委員会経済調査室の皆様、検討会委員の皆様にも厚く御礼申し上げます。

こちらのレポートでは、報告書のポイントも解説します。

報告書のポイント〜人材に関する独占禁止法適用についての考え方

目次

フリーランスを取り巻く状況
検討が行われた背景
検討の対象
共同行為(仕事を発注する企業同士の行為)における問題
単独行為(発注者がフリーランスに仕事を出す行為)における問題
公正取引委員会より

フリーランスを取り巻く状況

フリーランスの増加スピードに対して、社会全体が対応できていない。そのしわ寄せがフリーランスに生じている。具体的な例を4つ挙げる。

  1. 企業で働く管理職のマネジメントスキルが低く、フリーランス人材に対して具体的かつ的確な指示も出せず、仕事を切り出して特定し振り分けるようなスキルもない。
  2. フリーランスを雇用する際の取引に契約書を取り交わしていない、契約期間なども把握しないまま取引を行なっている(そのようなフリーランスは対価が低い傾向にある)
  3. 企業都合でフリーランスへの仕事の増減が行われ、追加作業が発生しても報酬額を据え置きにされる
  4. 業界によっては、企業の予算が前提で仕事が発注され、取引価格の協議が前提での交渉が行われない(企業がフリーランスに仕事を発注する際にすでに見積書が用意されている、など)

検討が行われた背景

  1. 働き方の多様化に伴うフリーランスなど個人で働く人が増え、今後日本国内でも働き方の多様化が進む
  2. シェアリングエコノミーに関する市場が拡大すると予想される
  3. 副業解禁など、副業/複業(パラレルキャリア)の拡大
  4. 少子高齢化などに伴う労働人口の現象により人手不足が起き、人材獲得をめぐる競争を制限する行為の可能性

検討の対象

  1. 共同行為:仕事を発注する企業同士の行為
  2. 単独行為:発注者がフリーランスに仕事を出す行為

労働組合法の『労働者』は今回の検討の対象外とされ、以上2つの行為に対して検討された。

『共同行為』における問題

企業側が共同して手を組み、フリーランスが仕事や企業を選択できないようになる、これが共同行為の問題だ。通常、フリーランス側は仕事と企業を選択でき、企業側に(フリーランス獲得をめぐる)競争が起きる。これが健全な状態である。

実例:アメリカにおけるIT企業間での人材の引き抜き防止協定

複数のIT企業同士が手を組み、お互いのIT人材の引き抜きや流出を防ぎ、人件費の高騰を止めることを目的とした。IT人材は他社への転職や年収アップができなかった。

想定例:スポーツ分野での想定例

各チームが年棒の高騰、所属選手の引き抜きを止めるため、選手の所属先を固定し、他チームから好条件のオファーが届かないようにする。

今回『共同行為』の問題ではないが、望ましくない行為

企業はそれぞれ、フリーランスに対して雇用条件を事前に提示することが望ましい。

フリーランスへ取引条件を曖昧に『条件の交渉は後で、応相談』と提示して取引を始めようとし、企業間で健全な競争が起きない状況は望ましくない、と課題視されている。

『単独行為』における問題

企業には優越的地位がある。フリーランスに制限や義務を与え、不当に利益を奪い、競争を妨げる行為が発生することは、問題となる場合がある。

企業を優越的地位とする事情の例〜なぜ企業には優越的地位があるのか

・フリーランス側に法的な知識が乏しく、なおかつ弁護士や法相談ができる環境にいないなど
・契約書は存在するが、厚い冊子状の契約書を渡されるなど
・狭い業界ではフリーランスの事情が業界内に知れ渡り、条件交渉に対してはっきりと物を言う人のことを『きっちりした人』とネガティブな言葉で表現し、業界内で評判が知れ渡り、今後の仕事に悪影響が出るなど

不当に利益を奪い、競争を妨げる行為とは

・過大な秘密保持義務
・過大な競業避止義務
・フリーランスが他企業から仕事を受注できないように裏で手を回すこと
・低い値段での取引を持ちかけること
・企業都合で成果物を受け取らないこと
(二者に仕事をさせ、質の高い成果物には支払いをし、もう一方には成果物を提出させるにもかかわらず支払いをしないなど)
・契約金額をあらかじめて決めていたが、企業都合で報酬を減額すること
(後出しでプロジェクト全体に必要経費がかかりすぎ、企業側は社内でプロジェクト全体の費用を変更することはできないため、フリーランスが「報酬を減額してもいいか」と持ちかけられるなど)
・成果物に係る権利などを一方的に取り扱うこと
・発注を全て口頭で行うこと

これらは不当に利益を奪い、競争を妨げる行為の例として問題視されている。またアンケートでは「支払いなどの取引条件について不当な扱いを受けた経験がある」と答えたフリーランスは全体の約60%に登り、「契約金額をあらかじめて決めていたが、企業都合で報酬を減額された」と答えたフリーランスは全体の約50%に登った。

今回『単独行為』の問題ではないが、望ましくない行為2つ

  1. 秘密保持義務や競業避止義務の対象範囲がはっきりしないことは望ましくないと課題視されている。なぜならばフリーランスの転職などの妨げになるため。
  2. 企業がフリーランスとの取引条件を曖昧にしたまま取引開始したり、取引条件を他者に開示しないよう求めることは望ましくないと課題視されている。なぜならば企業はフリーランスと取引をする条件について他社と競争するべきであり、フリーランス側も他のフリーランスの取引条件を知り、報酬交渉や転職の機会を得ることができるため。

公正取引委員会より

公正取引委員会の山本さんは最後に、「フリーランスと企業の両方にとって課題があるが、これらはこれまでの70年間議論されていなかった問題である。『企業が上である、フリーランスが下である』『フリーランスが優位になるべきである』という議論ではなく、双方が対等で良好な目線で取引が行われるようになることが望ましい。」と語った。

公正取引委員会による『人材と競争政策に関する検討会』の、報告書説明会 今後の日程

広島と札幌にて、報告書説明会が開催されます。ぜひご参加ください。
(お申込みはコチラから)

○ 広島

日時:平成30年5月22日(火曜) 10時00分 ~ 11時00分
会場:RCC文化センター609号室(広島市中区橋本町5-11 広島駅(南口・在来線口)から徒歩10分)

○ 札幌

日時:平成30年5月31日(木曜) 11時00分 ~ 12時00分
会場:札幌第3合同庁舎1階共用会議室(札幌市中央区大通西12丁目地下鉄東西線 西11丁目駅 1番出口)

最後に

今後もフリーランス協会は、フリーランスを取り巻く法や保護の経過を追い、皆様に情報を提供いたします。

イベント告知: 【満員御礼 / 増席中】フリーランスを法律で保護って本当ですか?

 

フリーランスという働き方の認知度が高まる一方で、社会や企業側がフリーランスを受け入れる体制はまだ整っていません。しかし政府の中でも、その多様な働き方の実態をとらえ、法整備をしていこうという動きが出はじめています。このレポートで解説した『人材と競争政策に関する検討会の報告書説明会』もまさに、その動きの一つです。

政府は動いています、しかし発行された文書や報告書、読みましたか?「読んだけど、正直わかりにくい。」安心してください、そう思ったのはあなただけではありません。読んでスッと理解できる人の方が少ないでしょう。

今回のイベントの目的は、政府の動きをわかりやすく解説していただくこと!

特別に、独占禁止法と労働法によるフリーランス保護政策の検討の第一線にいらっしゃるお2人をお招きし、政府は一体なんの意図で、どのような議論を進めているのか?、かみ砕いて解説していただきます。

会場で聴くことができない方は、オンライン上の中継を視聴できます。リアルタイムアンケートも実施し、その結果はBusiness Insiderで報告される予定です。

ぜひこのイベントを通じて、フリーランスを取り巻く法の流れと日本の変化を、肌で感じてください。

■日程

2018年5月22日(火)19:30〜21:30(19:00受付開始)

■場所

東京都千代田区平河町2-5-3 Nagatacho GRID 6F

■プログラム

※タイムテーブルは前後する可能性があります

19:30〜19:35
・開会挨拶

19:35〜19:55
・独禁法による保護の動き
「人材と競争政策に関する検討会」報告書の説明
公正取引委員会 経済調査室長 山本 大輔 様

19:55〜20:15
・労働法による保護の動き
「雇用類似の働き方に関する検討会」報告書の説明
厚生労働省 雇用環境・均等局 在宅労働課 永倉 真紀 様

20:15〜21:00
・パネルトーク「フリーランスに必要な保護ってどんな保護?」
モデレータ:ビジネスインサイダー 統括編集長 浜田 敬子様
パネラー:フリーランスの皆さん

21:00〜
・懇親会(予定)

■定員

・オフライン参加:定員80名
・オンライン参加:定員なし

■参加対象

・フリーランス(法人経営者、個人事業主、その他)や副業・兼業で働いている方
・フリーランスを目指している方

■参加費

無料

■参加登録はこちらから

https://low4freelance.peatix.com/?lang=ja

■主催

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

■メディアパートナー

ビジネスインサイダー
https://www.businessinsider.jp/


会場となるNagatachoGRIDには、MTGやワークスペースに使えるシェアスペースがあります。
Gaiax Communityに登録すると、無料でシェアスペース、電源、Wi-Fiをお使い頂けます。

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