日時:2019年6月17日 19:30~21:30
場所:goodoffice有楽町
概要:https://www.facebook.com/events/2572157306127687/
登壇者・ゲスト・パネリスト
株式会社クオリティ・オブ・ライフ代表取締役 原 正紀氏と、新規事業開発のプロでフリーランス協会理事も務める守屋 実のトークイベントが開催されました。
人生100年時代に長く活躍できるキャリアを作るには?
どうやったら仕事のプロになれるのか?
どうやったら自分らしく幸せに働けるのか?
ミドルエイジが抱えるこれらの疑問について、原氏の新著「定年後の仕事は40代で決めなさい~逃げきれない世代のキャリア改造計画~」(徳間書店)
と守屋の新著「新しい一歩を踏み出そう!」(ダイヤモンド社)から答えを紐解きました。
モデレーターはフリーランス協会代表の平田麻莉です。
登壇者プロフィール
原 正紀氏
株式会社クオリティ・オブ・ライフ代表取締役。企業への採用・定着・育成・人事制度構築などに関する活動のほか、多数の経営者や個人と面談。人と組織のベストマッチングや、個人のキャリア支援などの活動を行う。著書多数。
守屋 実
株式会社守屋実事務所代表取締役。1992年ミスミ入社以来20年間新規事業開発に従事した後、独立。ラクスル、ケアプロの立上げに参画、ジーンクエスト、ブティックス、AuBなどの取締役、博報堂、JAXAなどのアドバイザー、内閣府などの有識者委員をつとめる。
モデレーター
平田 麻莉
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事。
何歳からでも遅くない!好きなことを仕事にするために準備を整えよう!
今宵のイベントは、無垢材と緑に満たされた都会のオアシスのようなgoodoffice有楽町で、仕事帰りの参加者をお迎えして行われました。
参加者は30〜50代にかけてのミドルシニア真っ只中の、セカンドキャリアを検討している方、将来に備えて今からしておくべきことを知りたい若手ビジネスパーソン、令和時代を生き抜くキャリアの築き方を知りたい方などです。
まず冒頭に、フリーランス協会平田の司会のもと、守屋と原氏の自己紹介がありました。この自己紹介、実は「会社に頼らない働き方」という視点において、とても重要です。ピンで生きていく、独立起業するということは、自分が何者であるかを相手にその場ですぐに理解してもらう必要があるからです。
守屋
僕はバブル全盛の学生時代に仲間とパーティー会社で最初の起業をしました。そして新卒でミスミに入り、当時社長の田口さんの元で新規事業をいくつも立ち上げ、のちに田口さんと作ったエムアウトという新規事業の専門会社を経て20年でサラリーマンを辞めて独立し、ラクスルやケアプロの創業参画を皮切りに、今年でシリアル・パラレルアントレプレナー歴10年を超えました。
以下のように、会社員時代から独立して今に至るまでの30年間に関わってきた新規事業の数で自分のキャリアを表現しています。
50=17+19+14
(50=年齢、17=企業内起業 19=独立起業 14=週末起業)
年齢と同じ数の新規事業に関わってきた、ということです。
これは初めて会う人に自分を説明するときにとてもわかりやすいので、この数字を元にした自己紹介資料を作っていて、とても便利に使っています。
原
私は大手メーカー、リクルートを経て独立し、企業への採用・定着・育成・人事制度構築などに関する活動、官公庁・教育機関への人財関係の提案などをしています。キャリアカウンセラーとして、若者からシニアまで多くの方々のキャリア支援も行ってきました。
私が「キャリア」というものに関わるようになったきっかけがあります。バブル後、リクルートでリクナビ(旧リクルートブック)立ち上げなどに関わりましたが、その時に多くの人がリストラされているのを見て、将来に危機感を持ったのです。すぐにNYで11ヶ月間単独でキャリア研修を受け、キャリアに対する探求を始めました。
お二人の自己紹介が終わり、トークセッションの皮切りは、平田の「90歳まで働けるために、40、50代が今からできることは何でしょう? そもそも40代、50代からキャリアの変更を考え始めて間に合うものなのですか?」という、多くのミドル世代が訊きたい質問でした。
原さんは「可能性を広げて考えること」を提唱します。原さんご自身がセカンドキャリアをスタートさせてからビジネスが広がり出したのは40代半ばからということで、「遅い、間に合わないということはない」と強調されます。
1つのことを究めるよりは色々とやる方がお好きだという原さんは、現在11の仕事を手がけていらっしゃいますが、「人財に関わるもの」ということでは一貫しています。
守屋も「何をするにも遅すぎるということはありません」と希望の言葉を投入します。新著の中でも、新しい一歩を踏み出すために、「好きなことを探すこと」「人の話に乗ってみること」など、セカンドキャリアスタートのヒントをたくさん述べています。
「人生100年時代に、会社ではなく仕事のプロフェッショナルとして生きていくためには、自分が人からわかりやすくなっていることが必要」という守屋。それを「50=17+19+14」という数字で、新規事業立ち上げのプロである自分を表現しています。
セカンドキャリアを考えるとき、自分なりの言葉や数字で自己紹介資料を作ってみると良いかもしれませんね。
キャリアデザインのワークで自分を知り、キャリアを掛け算していこう!
続いて原さんの新著にもあるキャリアデザインのフレームワークについてお話が進みました。キャリアデザインは、自分の職業人生を主体的に構想・設計することです。キャリアデザインを考える時は、闇雲に考えるよりフレームワークを使うと効率的です。原さんの提唱される自分史分析、ライフラインチャート、自分BS(バランスシート)などのフレームワークを使うと、過去を振り返ることで発見があり、新たな自分が見えてきます。
フレームワークを行う際のポイントは、一度だけ渾身のワークをするのではなく、折に触れてワークすること。その時、大きな方向性を見て、いい偶然性が起こるようにイメージすることが大切だそうです。
また、両氏が発した重要なキーワードは「掛け算」です。
守屋は「プロはその分野で最初に思い浮かべられる人であるかどうか」が重要だと言います。そのためには「個性」が必要ですが、さらに個性の掛け算をしていくと希少性が高められます。
例えば独立起業家として個性を発揮する守屋自身の売りのひとつは、20年間サラリーマンをしていたこと。会社員と独立起業家という掛け合わせによって、守屋は大企業の事業開発室の人と共通言語を持ちながら新規事業を創造しています。この「個性の掛け合わせ」については、複数のキャリアを同時進行されている原さんも大いに賛成されました。
以前の著書で「人生二毛作社会」を、そして新著の中では「トリプルキャリア」を提案されている原さんも、人生100年時代を生き抜くためのキャリアの掛け算の重要性を述べていました。
質問で新しい一歩を踏み出そう!
質疑応答の場面では、参加者から多くの真剣な質問が投げかけられました。それぞれの切実な質問について、キャリアの大御所である二人が答えるという幸運を、その場にいる全ての人が共有することができました。
質問①
新規事業を起こそうと思っています。小さく始めてブラッシュアップしたいのですが、失敗もあると思います。お二人は失敗した時、どういう発想で次の一手を打つのでしょうか?
守屋
大前提として、まったくの新規事業などこの世にはなくて、数千人が同じことを考えていると思って間違いありません。僕も常にやりたいことはあるので、着手できる環境が整ったら、比較的躊躇なく着手しています。失敗については、そもそも新規事業は多産多死なのですから、一分の一で成功すると考えるのが間違っています。大切なのは勝機を逃さないことです。
質問②
90歳まで働くためには、キャリアを変えるスタートは早いほうがいいですか?
原
セカンドキャリア、サードキャリアといいますが、企業で働いていても定年はあるとわかっているので、あらかじめ考えておかないといけませんね。世の中の動きをよく見ましょう。どうするか戦略が必要ですが、考えれば答えはいくらでも出るものです。
質問③
会社を辞めないほうがいいでしょうか?
原
会社にいながらでも自分の足で歩むトレーニングはできます。65才まで会社にいてもいいと思いますが、50才くらいから準備しながら働けば、そんなに大問題にはならないでしょう。
守屋
辞めないで、副業をするというのも一つの手だと思います。副業がダメというならボランティアというカタチをとってはどうでしょうか?いずれにしても「動き癖」をつけておくことをおススメします。ずっと動かないで来た人が、いきなり動けるかといえば動けないでしょうし、一大決心になりがちです。そこまでにどれだけ「思考と行動をほぐしている」かが、その後に大きく影響しますね。
平田
協会で開催するキャリアイベントにも、テーマによって50代の方がたくさん参加されます。「話を聞いて勇気が出たので早期退職して独立します!」とおっしゃる方がいるのですが、私は「ちょっと待ってください」と言います。
資格をとってもすぐやめるのではなく、まずは副業でやる方法もあります。独立するならマインド的な部分は早いほうがいいと思いますが、雇用システムに守られながらだからこそとれるリスクがあり、それは企業にいる間に使い倒しておきたいですね。
質問④
守屋さんが他の方と一緒に新規事業をやっていく時の決め手はどこにありますか?
守屋
新規事業は本当に難しく、なにごともない右肩上がりの成長なんてありえません。人は調子がいい時に仲がいいのは当たり前で、調子が悪くなった時に仲良しでいられるかどうか、つまり「うまくいっていない時も一緒に乗り越えられるか」が生死を分けるのです。だから、パッと感じた第一印象に加え、冷静に事態を想定した、言わば「第二印象」のようなものを大事にしています。僕が新規事業に着手する時の基準は、事業プランではなく、人なのです。
質問⑤
フリーランスになって「思ったほど稼げなかった」ということがあるかと思いますが、お二人はどうでしたか?
原
私は、危機感を持たない程度に稼いではいますが、稼ぐこと自体には興味がないので実感がありません。自分なりにどういう人生送りたいかが明確になれば、その分が稼げればいいと思います。ただ、「レバレッジを効かせる」という発想がとても大切だと思います。
例えば私は大学の客員教授もしていますが、フィーは1コマ講義して15,000円で、これは「稼ぐ」ことにはなりません。しかし人脈も含め、その他のことが発生するから続けているのです。
守屋
僕の専門は新規事業なので、稼ぎ方も、新規事業の個性に引きずられる部分があります。例えば、ベンチャーとしての新規事業は、最初のうちは資金繰りが苦しいことが多いので、多くの場合は「思った通り稼げない」です。むしろ、創業資金をみんなで出し合ったりする訳ですから、お金は「減る一方」だったりします。では、どこで稼ぐのかというと、支払い余力のある大手企業の事業開発メンバーとしての活動で、稼がせていただいたりしているのです。
とにかく最初の一歩を踏み出そう!
会の最後は、お二人からのあたたかいメッセージで締めくくられました。
原
とにかく色々とやっていると、誰かに、または何かに繋がり、予期せぬ化学反応のような嬉しいことが起こるものです。だから、手数が大切です。手数を出して掛け算していくと変化が早いので、これが情報が多い時代に向いたやり方です。独立する人は自分なりの手数を考えていただくといいですね。
守屋
今日は僕がたまたまこちら側で話していますが、だから自分とは違うと思って欲しくありません。違うと思った瞬間に動き出しにくくなるからです。登壇者と受講者の間に、差はほとんどないのです。本当に大切なことは、新しい一歩を踏み出す勇気を持ってチャレンジして、それをやり切ることだと思います。
大きな拍手のうちにトークセッションは終了し、交流会となりました。飲物を片手に名刺交換も活発に行われ、そこここで新規事業が生まれそうな予感がしました。
最後まで名刺交換を待つ人の列が途切れることがありません。
原さんは経営者兼キャリアカウンセラーとして独立起業したい人と毎月30~40人関わっていますが、立ち止まって悩んでいる人が多いそうです。
そのような方への処方箋として、まずは新著にもあるキャリアデザインのフレームワークをやってみるといいかもしれません。自分というものが明確になるのは、とても大きな安心になりますから、動けなくなって立ち止まった時は、まずは頭と手を動かしてみると良いということですね。
守屋も著書にある通り、「新しい一歩を踏み出す」ことを勧めています。
「人は考えたようにはならず、やったようにしかならないものです。やってきたことがその人を作り上げています。未来においても、妄想するより体が動いたほうが正解に近いと思います」という言葉は、若手からシニアまで、あらゆるビジネスパーソンの灯台となります。
イベントに参加して
サラリーマンとして、事業者として圧倒的な行動量を持つ大先輩のお二方が、その知見を惜しげも無く提供してくださったことで、参加者の脳内はおおいに活性化したでしょう。著者に実際に会って話が聞けた、フレームワークをやってみた、そして質問もできたことは、自分自身に真剣に向き合い、キャリアというものを捉え直すことのできた貴重な体験でした。
イベントで大切なのは、その後。本を読んだこと、本人にお会いしたこと以上に、そこで得たことを行動に移すことです。
原さんの著書にあるワークを早速やってみましょう!
そして守屋の著書のタイトル通り、新しい一歩を踏み出しましょう!