安倍総理の施政方針演説をフリーランス視点で読んでみる

どうも、ヒラマリです。1/20に、安倍総理大臣が衆参両院の本会議で施政方針演説を行いました。(全文はこちら

施政方針演説には、政府の課題認識および関心の方向性や優先度が表れます。フリーランスに関連しそうなトピックもいくつか出ていたので、ピックアップして関連情報とともにご紹介したいと思います!

長くて堅くて多少マニアックですが、飛ばし読みでも構いませんので、気になる方はぜひお付き合いくださいm(_ _)m

 

(アベノミクス)

施政方針演説より:
兼業や副業をやりやすくするため、労働時間に関するルールを明確化します。

副業・兼業の労働時間管理は、副業解禁を検討する企業にとって気になるポイントですね。

2018年1月に公開された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、本業・副業の双方で雇用契約を結ぶ二重雇用の場合は、労働時間の通算が必要という見解を示しています。労基法が適用されない私たちフリーランスや業務委託で副業をする人々に対しても、自己申告で就業時間を把握して過重労働にならないよう配慮することが望ましいとのこと。

しかし、有識者の間では、企業側が労働者の副業状況を把握するのは難しく、労働時間の通算義務は実態に則していないという声も根強くあります。そもそも、企業が労働者の就業時間外の時間の使い方を把握する権利も義務もないからです。

副業・兼業の労働時間管理は実態として困難であるにも関わらず、ガイドラインの解釈の余地を残した書きぶりがプレッシャーとなっている今の状況では、副業解禁も進みづらいと思います。

私たちが昨年行った副業解禁企業12社へのヒアリング調査でも、ガイドラインの解釈には幅があると感じました。多くの副業解禁企業は、「二重雇用(副業先での雇用契約)の禁止」や副業先の「労働時間制限」などの工夫でガイドラインに沿った対応を行っていましたが、今後、労働時間管理に関するルールがより明確になることで、副業解禁に踏み出す企業が増えることを期待しています。

なお、副業従事者の労災保険に関しては、これまで勤務先ごとに判断していた残業時間を、今後はすべての勤め先の労働時間を合算して計算する方式に改めることになりました。そして、いずれの就業先も労働基準法上の災害補償責任を負わない一方、労災の補償額は、事故が発生した就業先のみの賃金ではなく、本業と副業の両方の賃金をベースにして計算することになります。(労働政策審議会の労災保険部会で公開された複数就業者に係る労災保険給付等について(報告)参照)

労災保険の対象になるのは雇用労働だけなので、業務委託で副業をしている方(昨今増加しているパラレルワーカーは殆どが業務委託)には関係のない話です。しかし、ここには、企業の労基法上の責任を減らしつつ、補償を手厚くして、働き手の皆さんが安心して副業できるようにしたいという政府の意図が感じられます。少しずつルールの明確化は進んでいると言えそうです。

副業の労働時間管理については、昨年6月のこちらの記事もご参照ください。

【図解でわかる】副業の労働時間管理とは?通算制度の見直しって?

(全世代型社会保障)

施政方針演説より:
この春から、大企業では、同一労働同一賃金がスタートします。正規と非正規の壁がなくなる中で、パートの皆さんへの厚生年金の適用を更に広げてまいります。

2018年12月から2019年9月にかけて、厚生労働省で、働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応が議論されていました。(「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」における議論のとりまとめ

主な論点は、パート・アルバイト社員など短時間労働者に対しての社会保険適用拡大で、それ自体は安倍総理の発言どおり、おそらく今後の国会で決議されることでしょう。

ただ、この懇談会では、短時間労働者だけでなく、雇われずに働くフリーランスや副業従事者の増加についても関心が寄せられていました。フリーランス協会も、2019年3月の懇談会において、フリーランスの課題や不安についてヒアリングを受けています。(懇談会議事録

短時間労働者への社会保険適用拡大が国会決議されたら、今夏以降、次はフリーランスについての議論も本格化する可能性があります。

フリーランス協会では設立以来一貫して、政府やメディアに対して「働き方に中立な社会保障制度の実現」を訴えてきていますが、自民党が昨年5月に出した提言「2024年問題:人生100年時代を生きる将来世代の未来を見据えて」では、「勤労者皆社会保険制度(仮称)」が提案されています。本提言も短時間労働者への社会保険適用拡大に向けた布石であったものの、議論取りまとめの中にはフリーランスへの言及もあります。

フリーランス協会としても、「社会保険料の負担が増えてでも手厚い社会保障が欲しい」のか、それとも「保険料負担が増えるくらいなら公助ではなく共助や自助で十分」なのか、今後の議論本格化に備えて皆さんの意識の分布をリサーチしていきたいと考えています。

社会保険の適用拡大については、こちらの記事もご参照ください。

働き方の多様化でフリーランスの社会保険はどうなる? 制度改革の第一歩をめざして、代表・平田がヒアリングを受けてきました!

働き方に中立な社会保険制度ってどういうこと?

施政方針演説より:
高齢者のうち、八割の方が、六十五歳を超えても働きたいと願っておられます。人生百年時代の到来は、大きなチャンスです。働く意欲のある皆さんに、七十歳までの就業機会を確保します。

定年延長も、多くの人が気になるトピックかと思います。

厚生労働省は、70歳までの就業機会を確保するため、定年後の雇用延長を含む7つの策を企業の努力義務として求めています。その中には、「個人とのフリーランス契約への資金提供」「個人の起業支援」「個人の社会貢献活動参加への資金提供」も含まれます。(労働政策審議会 職業安定分科会雇用対策基本問題部会で昨年11月に公開された高齢者の雇用・就業機会の確保に関する主な検討課題と対応イメージ 

セカンドキャリアで「雇われない働き方」や「ボランティア・プロボノ」を選択する人は今後ますます増えていくことでしょう。

フリーランス協会でも、これまで単発のイベントとして行ってきた「雇われないセカンドキャリア」を考えるセミナーを、40代後半から50代中盤のミドルシニアの会社員の方向けの研修として本格的に提供していくことで、お役に立てたらと思っています。ご関心のある企業や自治体の方は、お気軽にお問合せください。

(一億総活躍社会)

施政方針演説より:
女性も男性も、若者もお年寄りも、障害や難病のある方も、更には一度失敗した方も、誰もが多様性を認め合いその個性を活かすことができる社会、思う存分その能力を発揮できる社会を創る。一億総活躍社会の実現こそが、まさに少子高齢化を克服する鍵であります。

まさにここで言われているのは、多様な働き方の実現です。フリーランス白書の調査結果を見ても、自身や家族の健康、子育て、介護などを背景に、働く時間や場所の裁量や、ワークライフバランスを求めてフリーランスやリモートのワークスタイルを選んだ人が沢山いることが分かっています。

誰もが人生のライフイベントやキャリアステージに応じて、その時々に最適な働き方を選択できる、そういう社会にしていきたいというのがフリーランス協会のビジョンである「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中へ」が意図するところです。

様々なマッチングサービスやITツール・アプリケーションサービスの進展によってフルタイム会社員以外の働き方が選びやすくなりました。政府もそれを推進しようとしているからこそ、先述の「働き方に中立な社会保障制度」が必要だと考えています。

こちらの記事もご参照ください。

ケン・ローチ監督が描くギグエコノミー〜「家族を想うとき」を観て

【プレスリリース】フリーランスと経営者の妊娠・出産・子育てに関する緊急アンケート調査

(地方創生)

施政方針演説より:
「地方にこそ、チャンスがある」。そう考え、地方に飛び込む若者を、力強く応援してまいります。東京から地方に移住して起業・就業する場合に最大三百万円支給する制度を、更に使いやすくします。「移住支援センター」を全国一千の市町村に設置し、移住へのニーズを実際の人の動きへとつなげてまいります。

この起業支援金・移住支援金(地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業)は、昨年4月から始まった制度で、6年間続く予定です。

対象者や条件、申請方法などの詳細は、内閣官房・内閣府の地方創生ホームページで確認できます。地方で暮らしながらリモートで働きたい、地元で新しいビジネスを始めたい、二拠点をやってみたいという方なら、ぜひチェックしたい制度ですね。転職の場合は、移住先の都道府県がマッチングサイトに掲載している求人案件が対象なので、各都道府県のマッチングサイトも確認してみましょう。

これまで条件が細かいとか使いづらいといった声も多少漏れ聞こえていたようですが、施政方針演説から、今後ますます使い勝手が良くなることが期待できそうです。

施政方針演説より:
都市に住む皆さんの地方での兼業・副業を促すため、人材のマッチングや移動費の支援を行う新たな制度を創設します。関係人口を拡大することで、将来的な移住につなげ、転出入均衡目標の実現を目指します。

昨年春にフリーランス協会も、まち・ひと・しごと創生本部の予備調査に協力し、地方での就業・活動についてフォロワーの皆様から1000名を超える回答が寄せられました。詳細は「フリーランス白書2020」で公表予定ですが、首都圏に住む会社員の8割が地方での兼業副業に興味ありという調査結果でした。

一方で、地方企業における業務委託での人材活用はまだ一般的ではありません。地方の仕事を手伝いたい人が沢山いるのに対して、まずは受け皿を増やすことが重要です。

地方で副業・兼業を行う首都圏の人材に交通費の補助を出すというニュースは、記憶に新しい方も多いかと思います。出張交通費の支援によって地方企業が業務委託人材活用に取り組むハードルが下がり、フリーランスの活躍のステージが広がっていくことを期待しています。

こうした施策はバラ撒きだという批判や有効性を疑問視する声もあると思いますが、もう既に決まっている、せっかく作られた制度なので、個人的には今それを言っても仕方ないかなと思います。

むしろ、場所にとらわれない働き方や地方移住にチャレンジしてみたい人たちや、首都圏のプロフェッショナル人材とプロジェクトベースで仕事をしてみたい地方企業などにどんどん制度を使ってもらって、少しでもその人たちの人生と地域の双方にとって良いインパクトが広がっていくといいなと考えたりしています。

内閣府のプロフェッショナル人材戦略拠点でも、今年4月以降は雇用だけではなく、業務委託ベースでのマッチングが始まります。フリーランス協会としてもお手伝いできることが色々ある気がしています。

こちらの記事もご参照ください。

首都圏×地方の業務委託人材を活用する企業への交通費支援、はじまる

(中小・小規模事業者)

施政方針演説より:
七年前、十年ぶりの大改正を行った下請振興基準を、更に改正し、対象を拡大します。(中略)業界ごとの取引慣行に詳しい専門人材を下請Gメンに採用し、下請取引の更なる適正化に取り組んでまいります。

下請振興基準そのものは直接的にフリーランスに関係するわけではないかと思いますが、「下請取引の適正化」はフリーランスにとって気になるトピックです。

フリーランス協会でも、下請法の適用拡大(資本金要件の緩和または撤廃)や、フリーランスに対する仕事の依頼や契約に関するルール整備を政府に求め、取り組んできております。昨年実施したフリーランス白書の調査結果も、来月あたりに公表できると思います。

下請法の適用拡大は、強者と弱者を規定しなければならない法律の性格からして、けっこう難易度が高いチャレンジだなと思っているのですが、まずは現行の下請法の順守に向けて「下請Gメン」なる人々の活躍に期待するところです。

また、下請法とは別に、厚生労働省の「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」でも契約周りに関するルールメイキングが検討されており、保護の方向性が徐々にまとまりつつあります。(第17回「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」資料

皆さんも思うところがあれば、ぜひフリーランス目安箱にご意見をお寄せください。

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1/20日本経済新聞 『フリーランスに就業条件明示を』厚労省検討会

(規制改革)

施政方針演説より:
マイナンバーカードの取得を促し、来年度中に健康保険証としての利用を開始します。あらゆる行政手続の電子化を進め、対面での確認が必要なものなどを除き、二〇二四年度までに完了いたします。

これは、ただの私見ですが、フリーランスの身としては、確定申告とか、マイナンバーや身分証明書を取引先に郵便書留で送るのとか、本当に煩雑だなと日々思っています。

一日の時間は24時間と有限です。多くのフリーランスにとっては、こなした業務量と収入が比例しますし、なるべく余計な事務作業に煩わされず、自分のスキルや専門性を活かせる時間の使い方に注力していくことは、キャリアアップの上でもとても大切です。

行政手続きの電子化が進み、あらゆる情報がマイナンバーで紐づいて管理してもらえるようになると、フリーランスの煩雑な事務作業がグッと楽になるのではないかと期待しています。法人設立手続きの電子化も徐々に進んでいますね。

 

…と、ザックリ書きながらも、この施政方針演説の一文一文の背景に、日々深夜まで膨大な業務を抱えながら向き合ってくださっている関係省庁の皆さんの顔が思い起こされます。たった一行の政策の奥で、沢山の人が奮闘しているんですよね。施政方針演説で言及されるのはほんの一部の政策だけなので、注目されない仕事も沢山あるわけで。

そう考えると、なんか人間が共同生活を営んでいくための制度設計って、本当に膨大で終わりがないですね。何が言いたいかって、人類すごい。

長くなりましたが、現場からは以上です!

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