誰が事業者なのか?問題(経済産業大臣ヒアリングでお伝えしたこと)

こんにちは、ヒラマリです。

昨日は、全国的に緊急事態宣言が明けて、再び社会が回り始める兆しをそこかしこで感じる6月1日でしたね。しかし、自営業やフリーランスの皆さんの中にはまだ、先行きが見えず不安すぎる、足元の状況が切迫しているという方も少なくないことと思います。

※6/2 21:40追記:雑所得に関するくだりで私の書き振りが、まるで税理士が手間をかけられないという理由で雑所得にしているような誤解を招く恐れがあるとご指摘くださった税理士さんがいらっしゃいました。一部の税理士さんのお考えが、適正申告に苦心されている多数の税理士さんや税務署の方々の名誉を汚すことになるのは本意ではありませんので、表現を修正いたしました。お気を悪くされた税理士さんがいらっしゃったら、深くお詫び申し上げます。

持続化給付金の対象者拡大

5月25日の安倍首相会見によると、同日時点で45万社の中小企業・小規模事業者(フリーランス含む)に6000億円近い現金が給付されたとのことですが、第二次補正予算案で新たに追加された持続化給付金の予算は1兆9400億円で、約100万社を追加支援するとのこと。第一次補正予算と合計で、約250万社を支援することになります。

既にFacebook等ではお知らせしていますが、5月22日の梶山経済産業大臣の会見で、事業収入を「雑所得」「給与所得」で計上していたフリーランスや、2020年3月までの新規創業者も、「持続化給付金」の対象となることが発表されています。予定では、6月中旬目途に申請受付開始とのこと。

これらの方々は、申請受付当初の要件だと給付対象外になってしまうということで、フリーランス協会宛てにもメールやSNSを通じて非常にたくさんの声をいただいておりました。いただいた声は当協会からも中小企業庁へ随時お伝えしてまいりましたが、他にも多くの団体や議員の方々がこの問題に言及されたこともあり、山が動くことになりました。

取りこぼされる人が減って良かったと心から思う反面、制度設計は予想通り(?)簡単ではなく、詳細の詰めに時間を要しています。なんでそんなに時間かかるんだよ、さっさと給付してくれよ、と思われる方もいらっしゃるとは思うのですが、困っている人を漏れなく救おうと思えば思うほど、審査の要件決めや審査そのものが難儀になることは想像に容易いです。

あらためて、今回このような問題が生じている根本要因、つまり「なにをもって事業者というのか?」の定義をきちんと整理し、適切に実態捕捉できるようにしていく必要性を痛感しています。

誰が事業者なのか?

持続化給付金は、「事業者を対象とした、事業資金の給付」と位置づけられています。
(生活資金の救済措置としては、生活困窮時に返済免除される「緊急小口資金等の特例貸付」や「住居確保給付金」などの支援策が用意されています)

雑所得と給与所得が当初、対象外となっていたのは「事業者であれば、事業所得で計上しているはずだ」という見解が行政にあったからだと思います。

原理原則でいえば、確かにそのとおり。しかし、実態はそう白黒はっきりしてなかったというのが実情でした。

◎「雑所得」計上するフリーランス

雑所得を計上している人は国内に900万人いるそうですが、原則として、事業所得、給与所得、不動産所得など、他の所得に当てはまらない「その他」の所得を雑所得に計上する決まりになっています。

具体的には、年金収入、FXやビットコインでの収入、本業が別にある場合の副業としての印税・講演料やメルカリやヤフオクでの収益、友人や家族にお金を貸して返してもらった時の利子、本業と関係ないクラウドファンディングで調達した調達金、貸付型・ファンド型クラウドファンディングに出資して得た分配金などが、雑所得にあたると言われています。

「事業継続と再起の糧」として用意されている持続化給付金を、FXでの儲けが半減した人に給付してしまうと、税金の使い途として大きな批判を呼ぶことは間違いないでしょう。

では、なぜ、事業者(だと本人が思っている、orその事業収入を主として食べていて無くなったら生活できない)であるにも関わらず、事業所得ではなく雑所得で計上している人がいるのだろうと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。実際私もそうでした。

蓋を開けてみると、今回フリーランス協会に寄せられた声やSNS上の声で最も多かったのは「税理士がそうしていた」「税務署でそうアドバイスされた」というものです。

もちろんほとんどの場合は税理士も税務署の担当者も適正申告のために尽力されているわけですが、確定申告をサポートする税理士にヒアリングすると、一部のケースで雑所得で計上せざるを得なくなる理由は「帳簿が無い」ことだそうです。事業所得で計上するには費目ごとに経費を整理した帳簿が必要ですが、雑所得であれば費目が不明瞭でも「必要経費」としてざっくり経費を積み上げることができてしまいます。

事業者なら帳簿を付けていて当然だろうと思う事業者は多いと思いますが、帳簿を付けていない人たちもいたのです。しかも、それなりの数で。

特に講演家やモデル、アーティストなど、物品の仕入れや外注などの経費支払いがなく、自分自身のスキルや稼働に対してギャランティをもらう職種の人たちは、毎月の収支を計算して利益を確認することがないため、確定申告の目的以外では帳簿を付ける必然性を感じにくいようです。(個人的には青色申告控除が受けられないので勿体ないなぁと思うのですが)

帳簿を付けていない、曖昧に雑所得にしている…そうしたそもそもの状況に対する是非の議論や自己責任論もあるかと思いますが、ややこしい問題としては、必ずしもそれが本人たちの怠慢や不徳によるものとは限らないということです。

すべてのフリーランスが会計リテラシーを万全に備えた上で独立できているわけではありません。単純に知らなかった、それで良いものと思っていた、という人が多い。実際「これまでずっと雑所得計上してきて何も問題無かったのに」という声をSNS等でも見かけました。

フリーランス協会でも設立以来ずっと税務に関する情報発信やセミナー、クラウド会計サービスの普及啓発に努めていますが、残念ながら日本では税の教育は行き届いているとはなかなか言い難い状況です。曖昧な確定申告がまかり通っている…これは結構な問題ではないでしょうか

(誤解のないように念のため付記しておきますが、帳簿を付けなかったり、本来事業所得かもしれないものを雑所得で申告したりしても、別に罪ではありません。雑所得だと青色申告控除が受けられないので、多く納税することになるだけで税務署はハッピーです。むしろ明らかに副業収入なのに事業所得で控除を受けようとすると、税務署で雑所得にするよう指導されるくらいなので、雑所得計上が悪いということでは決してないです。)

そうした人々も、たいていの場合は、税理士や税務署に相談し、帳簿付けや記帳指導を依頼しています。しかし、税理士や税務署担当者の立場でも、確定申告で混雑する時期は多忙を極めるため、あまりに情報やエビデンスが不十分な場合は、雑所得にしておくしかない、と判断されるケースがあるようです。

持続化給付金では状況が状況なだけに、正論は抜きにして雑所得の人たちも対象にすることになりましたが、本来はやはり、事業者ならばきちんと帳簿を付けて、事業所得で申告することをスタンダードにしていく方が良いのではないでしょうか。

これを機に、誰でも手軽に帳簿付けができるクラウド会計サービスが普及して、帳簿付けがフリーランスにとっての当たり前になり、税理士や税務署の方には帳簿があることを前提に、より付加価値の高い記帳指導や記帳サポート業務に集中していただけるようになっていくと良いなと思います。そうすれば、今後の有事の際には、今回のように対象要件定義で喧々諤々することなく、速やかに救済支援できそうです。

「給与所得」計上するフリーランス

フリーランス協会へのお問合せでも散見されたのが、フィットネスジムや専門学校の講師業の方などで、給与所得計上している方々です。

業務委託契約を締結しているにも関わらず、源泉徴収票や給与明細が発行されている人たちがいます(もしくは契約書がなく、雇用契約なのか業務委託契約なのかが曖昧なケースも)。この人たちは、源泉徴収票に基づき確定申告は給与所得で行っているのですが、労働法の対象となる被雇用者ではないため、休業補償はもらえていないという状況です。

本人としては開業届も出していて事業者のつもりだけど、いくつかあるクライアントの一つからの報酬支払いが給与扱いになっていて、しかもそこからの収入が年収の大半を占めていたようなケースだと、「自分も個人事業主なのになんで(クライアントの会計処理都合で)持続化給付金をもらえないんだ!」という気持ちになってしまうようです。開業届を出していなくて、非正規労働者なのか、事業者なのか、本人たちの自覚としても位置づけが曖昧になってしまっているケースもあります。

また、非正規雇用や日雇い労働の掛け持ちで生計を立てている方からのお問合せもありました。こうした方々は明らかに非正規労働者であり、事業者ではないので、お問合せ先をお間違えなのかもしれないと最初は思ったのですが。現状、使途不問で現金給付されるのが特別定額給付金と持続化給付金しかないため、休業補償のセーフティネットからこぼれたあらゆる人が、持続化給付金を求めて中企庁のコールセンターに電話する事態になっていたことは想像に難くありません。

今回の第二次補正予算案では、持続化給付金の対象を給与所得で計上している「事業者」に拡大するとともに、休業補償がもらえなかった中小企業の「労働者」が自分で申請して直接支給される「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」が新設されると言われていますが、こうした「労働者なのか事業者なのか位置づけが曖昧な人々」や「非正規雇用・日雇い労働の人々」が果たしていずれのセーフティネットからもこぼれずに救われるかどうか、注視が必要だと考えています。

直近に創業した人たちの状況

なお、法人登記や開業届により「事業者」なのは明らかであるものの、2020年の新規創業者も当初は対象外となっていました。

BBCによれば、イギリスでも昨年度に自営業者として働いていない人は「コロナウイルス自営業収入支援スキーム」の対象外となるようなので、日本政府が特別に容赦ないというわけでもなさそうですが、結構な資金を投じて創業し、いざスタートしようというタイミングで営業自粛を余儀なくされてしまった自営業者やスタートアップは、相当な窮地に立たされているようです。

というのも、新規創業者は、融資も受けにくい状況があるからです。無利子無担保がウリの「新型コロナウイルス感染症特別貸付制度」は、昨年までの実績ベースで審査されるので通らず、創業融資も金融機関がコロナ対策に追われて審査が進まない上に、市場の先行き不透明な中で非常に厳しくなっているという話があります。

また、2019年末に個人事業主から法人成りをしたケースなどでも、制度のはざまで創業特例からも法人成り特例からも取りこぼされてしまっているケースが生じていました。

経済産業大臣のヒアリング

こうした状況の中、昨日、梶山大臣のご要望により、様々な業界の中小企業経営者が全国から参加するオンラインヒアリングが行われました。

フリーランス協会からは事務局長の中山が参加し、コロナ禍のアンケート調査では、87. 3%のフリーランスが業務に影響があり、74.4%が収入が減ったという結果を報告しつつ、上述した「雑所得」「給与所得」「2020年開業・登記」「2019年開業・登記(法人成り)」の人々の状況や背景について説明申し上げ、あらためて以下についてお願い申し上げました。

<短期>
・雑所得、給与所得、2020年新規創業の人たちへの給付型支援の制度設計
・創業融資の審査が停滞・厳格化し、新規創業者の資金調達が困難化している状況の改善
・持続化給付金が事業者向け事業資金であることの周知と、非正規労働者向けの支援に関する厚労省との連携(持続化給付金とは別途支援が急務)
・withコロナ時代に向けて企業が事業転換、組織変革を行う際の外部人材(副業・兼業人材)活用促進
<長期>
・事業者の実態捕捉

梶山大臣は、熱心にメモを取りつつ耳を傾けてくださり、持続化給付金の対象から漏れてしまっている方々への支援拡大を早急に整えているとの明言がありました。

また、経済産業省の担当者からは、新型コロナウイルス感染症特別貸付制度を創業間もない方でも申請できるように緩和策を詰めてくださっているというお話がありました。

ぜひとも宜しくお願いします!!!

そんなわけで、今は緊急事態ですから、政府も困っている人は最大限漏らさず救っていく姿勢でしょうし、取り合えずややこしい制度設計も「頑張ってください!」「全力支援!」としか言えないのですが、将来再びこのような有事が起こった時に対象者別の支援策を迅速に打ち出せるように、誰がどんな仕事・働き方でどれくらい稼いでいるのか、つまり「事業者の定義(事業者と労働者の整理)」と「事業者の実態捕捉」を、これまで以上にしっかり取り組んで頂かなければいけないんだろうなと、ぼんやり考えている今日この頃です。

個人的には「確定申告が楽になるならマイナンバー連携でもなんでも勝手にしてくれぇぇぃ」と思うのですが、いかに自営業者・フリーランスの間でコンセンサスを形成していくか帳簿付けのインセンティブを強化していくか、というところが争点になってくるんでしょうね。

その他の支援策について

持続化給付金以外の支援策も、第二次補正予算案の中で少しずつ拡充されています。

⽇本政策⾦融公庫・商⼯中⾦等の実質無利子・無担保で借りられる融資は、融資限度枠が6000万円から8000万円に引き上げられ、無利子枠も3000万円から4000万円に引き上げられています。

【新型コロナ関連・追記】個人事業主が使える資金繰り支援(最大4000万円まで実質無利子・無担保など)

小学校休業等対応支援金は、2020年4月1日以降に取得した休暇を対象として、日額4100円から7500円に引き上げられ、対象期間も9月30日まで延長されました。

【新型コロナ関連・延長】小学校や保育園等の休校でお仕事できなかった方の支援金申請受付開始

新型コロナウィルスの影響で資金繰りが厳しくなった方には、返済猶予作り(リスケジュール)からコロナ収束後の経営計画策定支援まで、金融機関やコンサルファーム出身の担当者が伴走してくれる、「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」という制度もあります。

【新型コロナ関連】個人事業主も対象!既存の借入返済を最大1年間遅らせられる「新型コロナ特例リスケ」とは?

その他の支援策も、解説記事を載せていますので、ご覧になってみてください。

https://blog.freelance-jp.org/category/trend/policy/

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