こんにちは。ヒラマリです。
私たちが、契約ルール整備(フリーランス新法)とともに掲げているもう一つの大きな柱が、働き方に中立なセーフティネットの確立です。
今週は、出産に関するセーフティネットに関して、明るい兆しを感じるニュースが2つありました。
2つの吉報
一つは、産前産後4か月間について、国民健康保険の保険料免除の検討が進んでいること。
国民年金保険料については2019年4月から先行して免除されていましたが、2024年1月からは、国保の保険料も免除されることになりそうです。
〇出産時における保険料負担の軽減
令和4年4月から、未就学児の均等割保険料の軽減制度を導入している。国会での附帯決議を踏まえ、更なる子育て世帯の負担軽減、次世代育成支援等の観点から、出産する被保険者に係る産前産後期間相当分(4か月間)の均等割保険料及び所得割保険料を免除する措置を新たに講じることとする。(令和6年1月予定)
厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会「国民健康保険制度の取組強化の方向性(案)」
もう一つは、フリーランスや自営業者向けの育休期間中の給付の創設が検討されていること。
まだあくまで中長期的な改革の方向性として提示されただけで、財源をどうするのかといった議論が白熱しそうではありますが、こうして方向性が明示されただけでも大きな一歩です。
以下のような課題について、2023年、2024年を見据えた短期的課題とともに、中期的、長期的な課題について、計画的に取組を進めていく。
全世代型社会保障構築会議(第9回)「論点整理(各分野の改革の方向性)(案)」
(中略)
(2)検討すべき課題
【仕事と子育ての両立支援(「仕事か、子育てか」の二者択一を迫られている状況の是正)】
(中略)
◆自営業者やフリーランス・ギグワーカー等に対する育児期間中の給付の創設
フリーランス女性の59%が産後2ヶ月以内に仕事復帰
こうした改革が必要とされている背景に、フリーランスや経営者として働く女性の59%が、産後2か月以内に仕事復帰している。そんな衝撃的なデータがあります。
フリーランス協会が有志の女性経営者たちと一緒に、2017年に実施した「フリーランス・経営者の妊娠、出産、子育てに関する調査」結果です。産後2か月以内の復帰率59%も驚きですが、産後1か月以内に絞っても44.8%が復帰しています。
産後2か月以内というのは、母体保護が必要として、会社員やパート勤務者であれば産休取得が義務付けられている期間です。フリーランスも会社員も同じ人間で、母体保護の必要性は変わらないはずなのに、自営業女性の6割が仕事復帰せざるを得ない背景に、セーフティネットの脆弱さがあります。
会社員が加入している健康保険組合に関する法律である「健康保険法」では、産休期間中に就労不能になることをカバーするため、出産手当金の給付義務があります。しかし、扶養に頼らない個人事業主で、自身で健康保険料を納付している人が加入する国民健康保険(国保)のルールを取り決めている「国民健康保険法」では、出産手当金の給付は任意でOKとなっています。任意で良いなら、わざわざ払う道理はないということで、出産手当金を給付している自治体は全国でゼロです。
出産手当金が支払われないだけでなく、我々がこの調査を実施した当時、フリーランスには社会保険料の免除が一切ありませんでした。会社員と違って、産前産後に働けず収入がストップしていても出費だけが嵩んでいくのです。
その後、国民年金保険料については、2019年4月から産前産後4ヶ月は免除されることになりましたが、健康保険料については支払い続けなければならないという状況が現在も続いています。
そんな経済的負担の大きさが、フリーランス女性の「産んでもすぐ復帰しなければならない」、あるいは「二人目以降は諦める」という事情につながっているとして、調査結果の公表とともに改善を求める提言書への賛同を呼び掛けたところ、13,900名の署名が集まりました。
また、提言書は、与野党の部会やママパパ議連などで発表の機会を頂いたほか、厚労省の労働政策審議会やコロナ禍で参議院で参考人招致された際にもデータを引用し、働き方に中立なセーフティネットの必要性を訴えて参りました。
どこでお話ししても、フリーランスにも出産のセーフティネットが必要だという意見に反対する人はいませんでした。しかし、セーフティネットの構築には、財源の捻出が欠かせません。
長らく「総論賛成、各論モゴモゴ」という状況が続いていた中で、遂に現政権によって、「働き方に中立な社会保障制度」を目指すことが明言されました。
(岸田総理には、当時自民党の政調会長として本部長を務めていた「人生100年時代戦略本部」と、総理と社会起業家との車座との2回にわたり、この「フリーランス女性の59%が産後2ヶ月以内に復帰」という問題をお伝えしていたので、「傾聴力」を発揮してくださったのだとしたら嬉しい限りです。)
そして今週の2つのニュース。控えめに言って、とても嬉しいです。
今回の全世代型社会保障構築会議を受けて、「財源どうすんだ」と批判する向きの報道もありますが、全世代型社会保障構築会議の委員の先生方におかれましては、「社会保障制度を支えるのは若い世代であり、高齢者は支えられる世代である」という固定観念を払しょくするという基本的考え方に沿って、是非とも引き続き前向きな議論をお願いしたいと思います。