フリーランス協会の事務局は、フリーランスの当事者集団です。
事務局内だけでも多様な意見があるように、決してフリーランスの総意というものがあるとは思いませんが、私たちはこれまで、新型コロナ、契約トラブル、社会保険、ハラスメントなど、フリーランスの様々な問題について会員・フォロワーに対して実態調査を行い、多様な声の存在をありのままに示すことで向き合ってきました。
そして、持続化給付金、フリーランストラブル110番、フリーランスガイドライン、ハラスメント防止措置、ベビーシッター助成、育休中の給付金などの政策を実現してきました。フリーランス新法の実現もあと一歩です。
インボイス制度についても、同じです。インボイス制度導入に伴うフリーランスの不利益を防ぐため、私たちは、私たちなりの方法で、戦ってきました。
そして、これからも戦い続けます。
インボイス制度に対する当協会のスタンス
フリーランス協会は、政府・財務省にフリーランスにとっての不利益防止を訴え続けつつも、不安を増大させるのではなく少しでも不安を解消できるように、そして、一人ひとりのフリーランスが、後悔することなく、自分にとって最適な選択をできるように支援します。それが、「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中」を目指す私たちの使命だと思っています。
これまで当協会の会員・フォロワーを対象に行ってきた実態調査の結果や、Twitter等で活発に活動する一部フリーランスの発信からは、下記の5つが、インボイス制度導入に伴うフリーランスにとっての問題になっていることが見受けられます。
・免税事業者と発注企業との間に、値付けに関する認識齟齬があること ・「個人事業者だから」あるいは「免税事業者だから」という理由で、消費税転嫁拒否が横行していること ・インボイス制度導入に伴う消費税転嫁拒否や不当な値下げ、一方的な契約解除・取引排除が独占禁止法や下請法において法令違反になり得ることが十分認知されていないこと ・インボイス制度による負担増(売上の2~5%)によって生活が立ちいかなくなるほどの低報酬が一部業界でまかり通っていること(また、そうした業界では、「負担増はフリーランスが被る・被らなければならない」ということが、発注側の企業のみならず当事者であるフリーランスの認識になってしまっていること) ・インボイス制度の詳細が分かりづらく、何をどう対策すれば良いか分からないこと |
そこで、当協会は今年度、下記の4点の活動に注力して参ります。(メディアの皆様にもぜひご協力をお願い申し上げます!)
・仲介事業者や発注者とも連携し、フリーランスが報酬値上げ(報酬適正化)しやすい機運を醸成すること ・法令違反防止とフリーランスの報酬適正化のため、さらなる取組みを政府に求めていくこと ・インボイス制度導入に伴う不当な値下げや「税込み」の強要、一方的な契約解除などを、法令違反として、発注者向けに周知すること ・フリーランスにとって一番損にならない選択を、引き続き分かりやすく解説していくこと |
また、こうしたスタンスに至った背景(インボイス制度に関する実態調査データと、当協会の政策提言方針)について、公開済みの記事から下記に一部再掲いたします。
フリーランス協会の政策提言の方針について
昨年3月に公開した「フリーランス白書2022」の冒頭に、私たちが大切にしている考え方を載せています。
ここに書いているとおり、「フリーランス」って本当に玉虫色だなと毎回調査をするたびに思います。
その実態は実に多様であり、フリーランスの総意というものがあるとは決して思いません。
多様な声を集め、その多様性をそっくりそのまま届ける。それが私たちのスタンスです。
フリーランス協会の政策提言は、常に会員・フォロワーを対象とした調査結果(データ)を論拠にしています。
フリーランスの声を集める→政府に届ける→制度設計に協力する→政策を周知する。
真摯にこのサイクルを回し、私情や主観を挟まず、あくまでデータ(会員の声)に忠実な代弁者に徹するのが、当協会の使命だと考えています。
まだフリーランス協会の輪に入っていない方は、次回の調査でぜひ声を聞かせてください。どんな声でもウェルカムです。
実態調査の調査対象について
フリーランス協会の会員総数(フリーランス白書等の実態調査の母集団となる一般会員・無料会員・SNSフォロワー)は、おかげさまで昨年末時点で8万人を超えました。
私たちの活動を支えてくださっている一般会員(有料会員)も12,799人となり、ベネフィットプランの提供や求人ステーション等で連携する法人会員は266社に上ります。
一般会員になってくださる方々の理由も、設立当初の数年間はベネフィットプランが中心だったと思いますが、この1年間は、協会の活動内容に共感して応援したいからとか、協会の発信する情報(セミナー、フリパラ、メルマガ等)に価値を感じているからといった声も届くようになり、事務局メンバー一同にとって本当に有難く、励みになっています。
一人ひとりの声は小さくても、たくさん集まれば大きな声になる。フリーランス=独り じゃない。
それが、私がこの協会を立ち上げた理由であり、今でもフリーランス協会の最も大事な役割だと考えています。
今月25日に設立6周年を迎えるフリーランス協会は、国内最大規模のフリーランスネットワークとして、様々なステークホルダーからその役割期待をお預かりするようになりましたが、だからこそ、私たちは多様な会員、多様なフリーランスがいることを、何より大切に考えなければいけません。(年末年始にもあらためて、そのことを事務局内で確認しました。)
そして、これも設立当初から言っていたことですが、フリーランス白書が様々なところで参照されるようになっているからこそ、そのデータサンプルに偏りが出ないよう益々努力し続ける必要があります。
おかげさまで2021年に掲げていた2024年までの目標は、1年以上前倒しで達成したので、フリーランス白書等の調査対象(会員総数)を国内フリーランス人口(462万人)の約10%である40万人に拡げるという目標を、2026年までに前倒ししました。
今年も、より多くの、より多様なフリーランスの声を拾うため、ベネフィットプランやフリーランスにとって有益な情報の提供・発信を通じ、会員総数の拡大を目指してまいります。
インボイス制度に関する活動経緯と実態調査データ
インボイス制度は、2014年から2016年にかけて軽減税率(制度)に関する国民的議論があった上で、2016年3月、今から6年前に国会での過半数の議決を経て、法律で導入が決定しました。法案可決前にフリーランス協会が設立できていれば、取り得る手段もあったかもしれませんが、あいにく当協会が設立した2017年には、時すでに遅しでした。
私たちは、協会設立の翌年の段階でこの問題に気付き、是正の道はないかと模索しました。しかし、国会審議を経て成立したという事実は大変重く、何年もかけて議論されて成立した法律を、その施行前の段階で改正(廃止)することは、極めて特殊な場合を除いて前例がないというのがファクトで、現実的ではありません。
とはいえ、指をくわえて黙って見ているわけにもいかないですし、そもそもインボイス制度の詳細がよく分からず不安という声も届いていたので、2019年から何度も政府・財務省に訴え続けてきました。問題点を可視化して政策交渉するため、会員の皆さまに協力をお願いして、実態調査も2回行っています。
最初の調査では、回答者全体の7割が免税事業者でしたが、全体の約4分の1が、「個人事業者だから」あるいは「免税事業者だから」という理由で消費税の支払いを拒否された経験があるというデータが得られました。
また、去年10月にインボイス登録が始まった後に行った2回目の調査では、インボイス登録事業者に既になった/なる方向で検討している人が4割近くいる一方で、4割以上の人が制度の中身がよく分からない、判断基準や取引先の出方が分からなくて決めかねている、とのことでした。
また、当然ながら、インボイス制度のせいで収入が減ることや検討基準がないことへの不安の声もありました。インボイスへの対応状況理由や、インボイス制度への不安・疑問・対策要望は自由回答で聞いており、全件公開しております。こちらのP.123以降をご参照ください。(下記スライドは一部抜粋です)
そうした調査結果を踏まえて、財務省に申し入れをし、インボイス制度導入に伴う不当な値下げや「税込み」の強要、一方的な契約解除などを、法令違反として整理し、発注者向けに周知するよう要望したり、フリーランスにとって分かりやすく、一番損にならない選択をできるような解説を一緒に考えたりしてきました。
免税事業者のままでいるか、課税登録事業者になるか、つまりインボイス制度にどう対応するかは、私たち一人一人が決めることです。
フリーランスは自律した事業者です。自分の身を守ることは、自分にしかできません。
フリーランス協会は、引き続き政府にはインボイス制度の導入によって私たちフリーランスに不利益が及ばないよう最大限の対策を要請しつつも、会員であるフリーランスの皆様に対しては、不安を増大させるのではなく少しでも不安を解消できるように、そして、一人ひとりのフリーランスが、後悔することなく、自分にとって最適な選択をできるように支援します。
そして、フリーランス全体の報酬底上げを目指し、政府や仲介事業者等に対し配慮を求め、メディアを通じた啓発活動に注力していきます。
それが、「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中」を目指す私たちの使命だと思っています。
※以上、公開済みの記事から一部再掲いたしました。宜しければ元記事も併せてお読みください。
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