2022年12月19日に「売上を上げたい!フリーランスの為の顧客獲得戦略セミナー」を開催しました。
フリーランスは上司も同僚もいないため、誰と、いくらで取引するのかを、全て自分で決めることになります。それが自由でいいところだけど、悩みを相談できないのは辛いところでもありますよね。
そこで、なかなか友人に相談もしにくい「売上を上げたい!」というフリーランスの永遠のテーマについて、事業会社から非営利団体まで顧客が途切れず12枚の名刺を持つフリーランス営業コンサルタント/フィランソロピーアドバイザーであり、フリーランス協会理事でもある宮本がお話ししました。
自分自身が悩めるフリーランスでもある事務局メンバーたちが「こういう話聞きたい!やってみよう!」という気軽な感じで立ち上げたイベントでしたが、嬉しい驚きで200名以上のお申し込みを頂き、たくさんの方にご視聴頂きました。
このような試験的な開催であったため、アーカイブ配信をご準備することが出来ませんでしたが、ご都合などで聞けなかった方からリクエストも頂きましたので、こちらのイベントレポートでエッセンスをお伝え出来ればと思います!
【こんな方向け】
・フリーランスとして活動しており、売上をさらに上げたい
・取引先をさらに広げたい
・これまでの顧客から仕事が減ったので新規開拓をしたい
・収入を安定させたい
◆登壇者: 宮本聡:フリーランス協会理事
青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科卒業。1972年静岡県(西伊豆)生まれ。鉄道会社、地域金融機関、不動産仲介会社、外資系金融経済情報会社、中間支援NPO、マンションディベロッパー、クラウドファンディング運営会社など、様々な業種での勤務経験を持つ営業コンサルタント/フィランソロピーアドバイザー。現在は投資会社に所属しながら、個人事業としてのコンサルティング業や複数の非営利団体の役員を兼業する、12枚名刺のパラレルキャリア。個人事業としては、不動産や相続に関するコンサルティング、中小企業や非営利団体の経営・営業・事業承継の支援、富裕層への社会貢献活動の助言などを行う。
(進行役)郷田郁子:フリーランス協会事務局メンバー
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売上を上げたい!その① 仕事を増やすにはどうしたらいいですか?
フリーランスは仕事を取ることが一番の始まり。仕事を増やすにはどうしたらいいでしょうか?
まず、フリーランスの仕事の取り方は大きく2種類に分かれます。
①知り合いつながりなど、紹介で仕事を受ける人
②自分の情報を発信して、そこから仕事を受ける人
「①知り合いつながりなど、紹介で仕事を受ける人」は、周囲に自分が何が出来るか伝えておきましょう。具体的には、自分の出来ることが書いてある営業資料(印刷したもの)を常に携帯しておいて渡せるようにしておくこと、メールやSNSでPDFファイルにしたものを送付できるように準備しておくことなどです。
伝える際も、あくまで「相手の困りごとの解決に自分が貢献出来る」と伝えることが重要です。「仕事ないので仕事下さい!」だと信頼を得るのは難しいです。自分が対応出来ない分野の事であっても、対応できる他の人に紹介するなど、何等か価値提供することで信頼を積み重ねることが出来ます。
例えば宮本はコンサルタントなので、「宮本に話せば、何とか解決のヒントが得られるのではないか」という信頼を築くことで、仕事のお話が集まるようになります。
「②自分の情報を発信して、そこから仕事を受ける人」は、「自分が何者か」「何が出来るか」を情報整理してホームページやSNSなどで発信していくことが第一歩になります。それを見た人から直接発注を期待するところもありますが、例えば知り合い(過去の仕事先や友人など)が見て具体的な仕事内容を知ることで紹介につながる事もあります。
例えばフリーランス協会メンバーの仲村龍太は、会社員をしながら自分の事業もしている「パラレルキャリア」です。自分のホームページを持っていますが、「作っただけでは見られないので発信して誰かに届ける、ターゲットに訴求していくというところは知恵の出しどころ」と考えています。
時間をかけようと思えばいくらでもかけられてしまうし、自分の事は自分で見つけにくいので「誰かに壁打ちをしてもらって作る」ことも有効です。
中村龍太コラボワークス COLLABOWORKS https://collaboworks.jp/
①と②はやり方は違えど、「自分のことを誰かに伝える」という点では同じです。
伝えると言っても「仕事欲しい!下さい!」という視点ではなく、「私はこんな人で」「これが出来るからあなたのお困りごとを解決できる・あなたに価値提供することが出来る」ということを伝えていくことが大事です。
なお、フリーランス白書の調査によれば、仕事獲得の経路は「人脈(知人の紹介含む)」「過去・現在の取引先」が上位になります。初めての仕事で成果を出すこと、そこから紹介やリピートなどにつなげていくことが売上獲得しやすい方法なのかもしれません。
【出典】フリーランス白書2022
https://blog.freelance-jp.org/20220329-14798/
また、同じくフリーランス白書の調査にて、「営業・マーケティング活動をしている」フリーランスは3割程度です。
【出典】フリーランス白書2020
https://blog.freelance-jp.org/20200612-9648/
残りの7割の人たちは、宮本は2タイプあると推測します。「紹介がなくても仕事が来てて問題ないタイプ」と「(本当はやったほうがいいのに)目の前の仕事が忙しくて手が回ってないタイプ」です。前者は仕事が来ているから問題ないとして、後者は要注意です。
一人で活動するフリーランスは「業務が忙しいと営業活動に手が回らない」という状況に陥りがちですが、先の仕事の種まきを常にしておくことが大事です。そうしないと、目の前の仕事が終わったときにぽかんと仕事がないという可能性があるわけですね。忙しいときも、自分の仕事時間の1割でも2割でもいいので、営業をしておくことが重要です。「右手で刈り取りつつ、左手で種をまく」という、「両手利き」の活動をお薦めします。
ちなみに、宮本が種まきの営業活動としてどんなことをしているかというと、知り合いに会いに行きます。営業というより、ごはんを食べに行かないか?くらいの軽い感じで近況交換のような形で会うと、時々その中から仕事に発展することがあります。あまり仕事をくれくれ、とがつがつしないのがいいと思います。
売上を上げたい!その② 報酬水準(単価等)を上げるにはどうしたらいいですか?
報酬の決め方ですが、これから独立する人への注意点としては、勤めているときの時給換算で価格設定しないことがあります。
会社員は会社が経費や保険料を負担しているため、それらが引かれたあとの利益から給料が支払われています。独立すると、経費や保険料など様々なお金も自分で負担する必要があります。時給で換算した場合、会社員の時に自分が受け取っていた給与よりも高い報酬にしましょう。
また、受けた仕事が割に合わない(想定より時間や手間が掛かったなど)とか、相場より低目の金額で仕事を受けてしまっていたと後でわかったなど、次から報酬金額(単価など)を上げていきたいと思う時はどうしたらいいでしょうか。
やり方の一つとしては、まず条件を見直せるタイミングが取りやすい契約にしておくこと。例えば契約期間を短くしておく。長期契約だと納得いかない条件でも途中で交渉するのは難しいので、条件を見直せるタイミングを作っておくと調整しやすいです。長期案件・大型案件の方がいいかというと、一概にそうとも言えないということですね。
例えお客様に満足頂いていたとしても、 報酬を上げる交渉は言い出しにくいもの。そういう時は、報酬は「総額を上げる」だけでなく「時間に対しての単価を上げる」という考え方もあります。
例えば週10時間でいくらという契約を、金額はそのままで週8時間にするなどです。自分が掛ける時間を減らすことで、時間単価があがります。新たに空いた時間や余力で他の仕事を受けることが出来れば、全体の収入を上げることが可能です。
そもそも適正な価格とは何でしょうか?お客様が払った金銭より価値があったと思えること、お客様にとってお買い得であることによって、価格に納得感が産まれます。相手の期待値を超えていることで価格を上げることが可能になるんですね。
そのためにもお薦めなのは、今出来る仕事のMAXで仕事をしないことです。例えばあえてスタート時点では低めの価格で提供し、期待値を超えていくことで値上げしていくこともできます。
宮本はプロボノ(ボランティア)として、無償でお手伝いすることも多いです。結果として価値を感じてもらえれば、有償かつこちらの提示金額で納得頂いての契約につながる。そういった始め方もあります。
売上を上げたい!その3 収入を安定させるためにはどうしたらいいですか?
フリーランス白書の調査では、フリーランスを続けていく上での一番の課題は「収入がなかなか安定しない」ことです。安定させるためにはどんな取り組みが必要でしょうか。
【出典】フリーランス白書2021
https://blog.freelance-jp.org/20210325-12032/
安定させるためには、複数の仕事を組み合わせることが大事です。お客様・仕事の種類・契約期間などで、違うものを組み合わせることがお薦めです。
例えば一つ大口顧客がいて売上のほとんどがそのお客様からだと、そのお客様がなくなったときのダメージが大きいです。フリーランスの魅力の一つが仕事を選べることなので、沢山のお客様・仕事を組み合わせてリスク分散して安定させることが大事です。
また、組み合わせは「今できる仕事(価値と報酬が折り合ってるもの)」だけでなく、「チャレンジングな仕事(将来やりたいけど、今の自分には経験のない仕事を、勉強のために価格低めで受けるもの)」で行うと将来にもつながっていきます。
スキルアップとしては書籍を読んだり講座を受けたりなどもありますが、そういった勉強のためにお金を払うことと、勉強のために少し安めに仕事を受けることは、「自分の得られるお金から学びに支出する」という点では同じとも言えます。
今出来ることだけをしているとスキルが先細る可能性があります。安定させるためにも少しずつ自分が新しいことを得られるように仕事も組み合わせていくことが有効です。
ではどれくらいの種類を組み合わせればいいのでしょうか?コンサルティング業の宮本は、3-4社してる時が一番きついです。頭の中が「忙しい」という感覚で、切り替えが難しいなと感じます。より多い6-7社くらいが各社で体験していることが他社に活用できるなど、ノウハウの「費用対効果」が一番良くなるように感じます。
これは業種や個々人の性格などで違うかもしれませんので、受ける仕事の種類を増やしたり減らしたりして、自分にとって一番いい状態は何か、探っていくといいかもしれません。
フリーランス白書の調査で「継続・成功に重要なもの」について聞いた結果では、「成果に結びつく専門性・能力・経験」「自分を売る力(セルフブランディング)」が6割以上でした。
【出典】フリーランス白書2020
https://blog.freelance-jp.org/20200612-9648/
自分を売る力は「自分が何を出来るのか」をきちんと伝えていくことが大事です。「なんでもいいから仕事をください」というのはなかなか仕事につながりにくい。
「自分が何が出来る人なのか」「そもそも何をしたいのか?」が分からなくなった時は、他人の力を借りましょう。なかなか自分のことは自分ではわかりにくいもの。他の人と話すことで自分の良さややりたいことを見つけやすくなり、言語化しやすくなると思います。
※フリーランス協会はキャリアコンサルタントと個別相談が出来るサービスもご提供しています。こちらをご利用頂くといいかもしれません。
フリーランス協会キャリアドック https://blog.freelance-jp.org/20220629-15644/
また、フリーランス協会の調査によれば、7割近くのフリーランスが自己投資をしています。ずっと自分を成長させていく重要性を感じている方が多いかと思います。
自己投資の際は、自分がこれに興味がある、という「自分視点」だけでなく「お客様は何を求めているのか」「これから世界では何が重視されるか」という視点も持って学ぶことが大事です。
例えばITが苦手な人でも、将来を考えるとITについては最低限のことを知っておく必要があるだろう、基本的なIT資格の勉強をしてみよう、など、社会の視点を持って進めていくと、独りよがりにならない自己投資になり、将来につながります。
<質問タイム>
【質問】
たくさん仕事を受けるためには、人を雇ったりチームを作ったりする必要があると思います。フリーランスの経験をある程度積んだら人を雇う方向で進むべきでしょうか?
【回答】
宮本は、コンサルティングの仕事は自分自身でお客様とお話して現場でやりたいので、人を雇っていないし、法人化して拡大しようとは思っていません。ただ、不動産事業などは人に任せている業務もあります。
また、業務自体は自分でやるが、バックオフィスの事務などは人に任せる(弁護士事務所の先生と事務員さんのような形)というやり方をしている人もいます。
自分がどのような仕事・どのような働き方が好きなのか(現場で動きたいのか・マネジメントするのが好きなのか)など、好き嫌いや向き不向きで決めてもいいと思います。
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【質問】
ポートフォリオ(自分の実績・制作物などを掲載する営業資料)を作る際に、過去の実績や制作物は載せると思います。その他に載せたらいいものはありますか?
【回答】
過去の成果だけでなく、自分の想いや今後どうして行きたいかなど、自分自身の人物像について伝わるものも記載するといいと思います。
こういった想いで仕事をしている、今後はこうしていきたいなど。これは文章で記載してもいいと思います。自分の想いも発信することで未来の仕事につながっていくと思います。
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【質問】
3~4件の取引先だと、むしろ切り替えが大変だという話がありました。個人差はかなりあると思いますが、最適はどのくらいだと感じられますか?
【回答】
人により違うと思うので、自分のMAXを知るために、一度仕事を詰めに詰めて、自分の心地よい分量を探ってみるのもいいと思います。
ずっとやっていると疲弊してしまうので、一次的にそのような集中して働く時期を作ってみてもいいかもしれませんね。
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<最後に>
「一時的に売る」ことは出来ても、「継続して売り続ける」となると難易度が上がります。常に将来に向けて種まきを続けていくこと、先々も仕事が出来るようにチャレンジの仕事を少しずつでもしていくことなど、ぜひ継続して取り組んでみてください。