プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会

BtoBフリーランスの全職種向けに広がる労災保険

こんにちは。ヒラマリです。

すっかり冷え込んでガクブルする夜もあれば、ジャケットを羽織ったら汗ばむような陽気もあり、毎日何を着たら良いのか迷う今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今週の月曜に開催された労働政策審議会の労災保険部会で、すべての特定受託事業者(BtoBかつ従業員を雇っていないフリーランス)が労災保険の特別加入制度に加入できる見通しとなりました。

第109回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料

 

フリーランス協会では、かねてより労災保険を含む、フリーランスのライフリスクのセーフティネットの必要性を訴えてきており、この度の審議に先立って行われた団体ヒアリングでも、フリーランスの労災保険加入ニーズについて発表させていただいたので、その内容も含めてご報告いたします。(審議会の資料・データはこちら

フリーランスの労災保険加入ニーズ

2018年に実施した「フリーランス白書2019」の調査では、回答者の45.9%が、フリーランスの働き方を選択/継続しやすくするために「労災保険」が必要と回答しています。

そして、フリーランス新法成立を受けて今年6~7月に実施した調査では、回答者の68.3%が「労災保険に加入したいと思ったことがある」と回答しています。

ただ、特別加入制度というのは会社員の労災保険とは異なり、保険料は全額自己負担となります。特別加入制度でも加入したいかどうかについては、「ぜひ加入したい」が9.3%、「前向きに加入を検討したい」が42.1%でした。前述の設問に比べると多少減りますが、それでも5割以上が加入を前向きに考えているということでした。

その理由は、会社員時代に当たり前のようにあったセーフティネットが無くなったことへの不安や、病気や事故で無収入を経験した、契約や業務の関係で加入を求められる、など様々です。費用と保障のバランスが見合っていれば加入したい、という声もありました。

逆に、「保険料全額自己負担では加入したくない」人たちの理由は、保険料支払いの負担感に加えて、自身の働き方を考えた時に労災として認められるような業務起因の通院や発病が起こりづらいという意識があるようでした。

また、10~11月に実施した直近の調査では、「業務の負傷、または業務起因の通院」の経験を聞いたところ、11.8%の回答者が「ある」とのことでした。(厚労省に資料を提出した時点ではまだ調査中で中間報告だったので、資料上は11.1%となっています)

その時の具体的な状況を問う自由回答の設問では、職場や打合せ場所への移動中や舞台の公演中の事故やケガ、座りっぱなしの長時間業務による腰痛、ストレス起因のもの、といった回答がありました。

また、フリーランス協会が取り組んでいる災害防止・安全衛生に向けた取り組みについても報告依頼があったので、一般会員向けベネフィットプランで提供しているWELBOXの健康診断・人間ドックの割引(全国3,000施設で、第二親等まで利用可能)や、「収入・ケガ・介護の保険」などをご紹介いたしました。

ただ、こうした所得補償の民間保険があっても、依然として労災保険の加入ニーズがあることはデータからも明らかなので、あらゆる職種のフリーランスが労災保険に加入する選択肢が持てるようになる今回の動きは、大きな一歩前進と感じております。

引き続き、フリーランスの皆さんのニーズや実態に即した制度となるよう、動向を見守ってまいりたいと思います。

労働者性のある人は、ちゃんと労働法で守られることをお忘れなく

なお、今回の審議会で、もう一つ私がお伝えたかった大事な話があります。それは、労働者性のある「準従属労働者」や「偽装フリーランス」については、フリーランス新法や労災の特別加入制度ではなく、しっかりと労働法で保護していくことが大切ということです。

この図はフリーランス協会が2017年から様々な場で使っている図で、労働者と事業者の違いを、法律の専門家ではない人にも伝わるように端的に描いたものです。

ここに書いてあるとおり、フリーランスは事業リスクを負う責任と覚悟を持った「自律的な働き方」であり、労基法の対象外になっていますが、それには働き方の裁量(自律性)と経済自立性があることが大前提です。

赤枠の外の「準従属労働者・偽装フリーランス」としている部分は、特定企業に対する従属性が高かったり、業務実態が労働者に近いなど、事業者と見なされるだけの自律性を持ちづらい人たちを指します。業界や職種によっては、本人が自覚的に望んで独立して事業者になろうと決めたわけではなく、雇用されて働くという選択肢がない、もしくはあってもごく僅かしかないため、その職業を選んだ時点で業務委託契約を結ぶしかなかった、という人もいます。

労動者性の判断は非常に複雑で、司法が個別具体の状況を総合的に俯瞰して判断することになっているので、一口に「こういう状態であれば労働者性を認める」といった分かりやすい指標がないのが難しいところです。が、労働者性が認められる人たちにとっては、フリーランス新法や保険料が自己負担となる労災保険の特別加入制度は決して十分とは言えず、フリーランスガイドラインで整理されているとおり、しっかり労働法や雇用システムで保護していく必要があります。

今回「フリーランス新法ができたから良いじゃないか」ということでは決してなく、あくまで事業者の就業環境整備の議論とは別の、大事な議論として、準従属労働者や偽装フリーランスについてはしっかり適切に労働者性の判断をして、労働法で保護していくということを、引き続き諦めてはいけないと考えています。

というわけで、引き続き頑張ります!

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