はじめまして。大阪で税理士をしている田中慎と申します。
まさにいまみなさんが取り掛かっているであろう確定申告について、先日、とくにフリーランスの方に向けてのお話を大阪でさせていただました。
そのときのようすを記事にしたものを、フリーランス協会さんにお声がけいただき、フリパラに寄稿させていただくことになりました。ぜひ、確定申告のご参考になさってください!
最初に申し上げておきますが、今回の記事は税について全く知識がない方にも関心をもって頂くためにかなり簡略化して記載しているので、同業の方はご指摘が多々あろうと思いますが、正しい知識は別の機会に。
最近フリーランスの方とお話する機会がたくさんありますが、確定申告については大体こんな感じですよね。
フリーランスの人にお伝えしておきたい確定申告にまつわる10の話を、関西弁バージョンでお伝えします。
1.なんで確定申告せなあかんの?
フリーランスの人にとって、確定申告って面倒ですよね。領収書を1年分入力したり、「支払調書って何?青色申告って何?」と、会社で働いていたときには気にもしなかったことだらけ。
たまに「このネットの時代に、自動で税金計算してくれたらいいのに!」という声も聞こえます。
声を大にして言いますが、その考え方は非常に危険です。
税は、一方的に国に徴収されてきた歴史があります。あなたがいくら頑張って働いても、国が税金を上げれば水の泡。確定申告とは、国があなたの税額を勝手に決めるのではなく、自分自身で所得を計算して、納税する額を自ら申告する、とても民主主義的な制度なのです。
自由な生き方や働き方をしたいなら、自分の財産から支払う税にも関心を持ちましょう。
2.What’s確定申告?
確定申告は、自分勝手に所得を計算してよい訳ではありません。1年分の所得を翌年の3月15日までに、法律通りに税額を計算して納めます。
憲法に定められていますが、税は国会で決められた法律に基づいてしか課すことができません。だからこそ政治に関心を持つことも重要なんです。
3.どないして計算するん?
最近は国税庁のホームページにある確定申告書作成コーナーもとても分かりやすくなってきました。手順通りに入力していけば完成するので、ここでは概要を。
個人の所得は10種類に区分されています。給与所得や事業所得というのは聞いたことがあると思いますが、たとえば住んでいた家を売った場合などの譲渡所得については、給料のような定期収入と同じように課税してしまうと、住み替えに困ってしまうことも考えられます。
このように収入にはそれぞれ、税金を納めることができる力(担税力)が違うので、それぞれの事情をある程度考慮しようということで、10種類に区分してそれぞれで計算した上で、合算します。
フリーランスの場合は開業届出書を提出して、事業所得として申告していると思いますが、副業などの場合、事業所得と雑所得の違いに悩まれることもあるかと思います。
イメージとして事業所得は、自分がリスクを負って、継続して、独立してビジネスを行っているものが該当します。なので、ちょっとした単発の収入などは雑所得だと考えてください。
事業所得であれば、青色申告をすれば青色申告特別控除や損失を翌年に繰り越すことができるなどの特典を受けられるというメリットがあります。
4.所得控除ってなに?
こちらは給与だけもらっている人にとっても、年末調整でおなじみですね。医療費がたくさんかかった、扶養している親族がたくさんいる、などそれぞれ個人は事情を抱えているので、所得に対してそのまま税率をかけるのではなく、配慮するのが所得控除です。
5.結局なんぼやねん!
で、結局なんぼやねん!と関西人からの声が届いてくるのですが、合計所得から所得控除を引いた金額に税率をかけます。
所得に応じて5%~45%。加えて住民税が一律10%程度かかります。
高い!という方もいらっしゃると思いますが、かつては、といっても30年ほど前ですが、所得税と住民税あわせて最高88%という時代もありました。
フリーランスの方は、源泉所得税として10%程度引かれている分が、この税額から控除されます。そのため還付になるケースもありますね。
還付になって喜ぶ気持ちも分かりますが、実際に納税している額をきちんと見ておきましょう。
確定申告書作成の流れは以上です。
国税庁のHP以外にも、freeeなど確定申告書の作成機能がついているものもあります。質問形式で回答していけば確定申告書ができるので、事業所得や給与所得があるだけの場合には、そんなに難しいものではありません。
6.結局うちなんぼもうかったんやろ?
問題は、「結局うちなんぼもうかったんやろ?」を把握していないので、1年分まとめて計算しなくてはならない、というところにあります。
収入は自分が発行した請求書や、取引先から送られてくる支払調書で確認はそんなに難しくはないと思います。
よくある質問は「どこまで必要経費にすることができますか?」という質問ですね。これは当然お仕事の内容によって異なってくるので、残念ながら一概には言えません。だけど、申告納税制度の説明にあったとおり、たとえ税務署が来たとしても胸を張って「これは自分の事業に必要な経費だ」ということが資料をもとにして言えること、これが大前提だと思ってください。
自分が平日仕事に使っている車のガソリン代を経費に入れたい。家を事務所として使っているので家賃を一部経費に入れたい。このような家用と仕事用が混ざっているものに関して、仕事に関係するものについては部分的に経費にすることができます。これに関しても、自信をもってこの割合は自分が仕事に使っているといえる割合で経費にしてくださいね。
7.青色申告と白色申告どっちがいいん?
青色申告と白色申告どっちがいいですか?という質問も、結局はあなたが事業をどうしたいか、によります。ほとんど所得がでないまま副業に近い形でビジネスを行うのであれば、白色申告でもよいかと思います。
でも、フリーランスでこれから自分の仕事をしていこうという人は、青色申告をするべきです。事前に税務署に申請が必要ですが、会計ソフトを使って入力をしていけば、それほど難しくはありません。
そして、青色申告は65万円の控除があるのが大きなメリットの一つになります。仮に税率10%だとすると支払う税額が6.5万円下がります。大きいですよね。
8.節税したい
みなさんが関心のある「節税」。残念ながら、世の中そんなにうまい話はありません。みんなが勧めてくれる「節税」は、節約される税額よりはるかに多くのお金の支出を伴うものが大半です。
当然、小規模企業共済といったような掛金が全額控除されるようなものもあり、おすすめするものもあります。でも結局は節税のためではなく、ご自身の将来に備えるためのもの。節税のために不要なもの、使えないものを買って本末転倒、という事例は世の中には数多くあります。
「税を払いたくないですよね」「節税しないと損ですよ」という話は、結局みんなあなたに節税商品を売りたいからです。
会社員をやっていたときは、税に関心がなかった方がほとんど。それは、毎月の給料から源泉所得税を徴収され、年末調整で還付されてなんだか儲かった気がしていたからです。
不要な節税をせず、税金を払えば、たとえば20%の所得税と住民税を払っても、80%はお金が残ります。フリーランスの仕事が軌道にのるまで、そうしてお金を残しましょう。
ビジネスに使う資金が十分にある。その状態になってから節税を考えてください。まずは、自分が目標とする売上をあげるように事業に集中してください。
節税を気にする前に、事業が拡大して外注などが増えてくると、資金繰りの方が問題になってきます。「売上があがってるのに、全然お金ないやん!」そのときに備えてまずはしっかり税金を払ってお金を残しましょう。
9.事務処理が苦手やねん
会計の知識があることに越したことはないのですが、freeeなどは簿記の知識がなくても使える、ということを売りにしています。まだまだこれからなところはありますが、今後このような仕訳を意識せずに処理ができる、ということが主流になってくるのではないかと思います。
ポイントは、まず事業用の預金とクレジットカードをつくること。そこから生活費などを定期的にプライベートの預金にうつすこと。決して事業用と家事用は混ぜないことです。
「クレジットカードのポイントを貯めてるから1枚にしたい」という方もいらっしゃいますが、ポイントよりもはるかに大切なことです。それだけで事業に使えるお金の把握も楽になるし、預金口座やクレジットカードのデータをクラウド会計に同期することができます。
そうすると、年が明けてから焦って処理を始めることもなくなります。
でも、freeeを使っているからといってきちんとできている訳ではありません。預金から同期してきている残高とfreeeに登録している預金残高がずれている、という話を数多く聞きます。
原因は、主に「無視する」という機能でプライベートの支出とせず完全に無視していることや、現金と預金の間の口座振替のやりとりの際に重複していること、クレジットカード明細から取り込んだデータとレシートから入力したデータとで二重計上が起きている場合などです。
最初に仕組みやつまづくポイントさえ分かっていれば、とても便利に使えるソフトなので、導入時の注意点はまたあらためて記事にします。
それと、「freeeに領収書のスキャンをアップしてるから原本を捨ててもいいですか」という質問もありますが、事前に電子帳簿保存の届出をしていなければ、ダメです。詳細は下記を見て頂ければと思います。
10.会計が苦手やねん
処理はできたけれど、決算書をどう見たらいいか分からない、という方も多いと思います。
最低限抑えてほしい考え方は、資本を蓄積していくことが将来のビジネスを成長させるということです。
どうしても1年間の収支に目が行きがちですが、これから10年先に自分のビジネスをどのような状態にしたいか、その観点がなければ「ただ税金が安ければいい」という方向に流されてしまいます。
資本を少しずつ貯めていく。それはお金だけでなく人脈や情報に関しても同じこと。信頼を積み重ねていくために、「節税」に踊らされないようにしましょう。
会計は、一度聞いただけでは、なかなか分かりません。だから、1年に1度ではなく、毎月、自分のビジネスの収支がどうなっているか、その数字を頭に入れるようにトレーニングしていきましょう。
確定申告セミナーというと、ふるさと納税や得する税金のような話が多かったりしますが、そもそも何のために経理をしているかの方がフリーランスにとっては大切。
自由な生き方・働き方をしようと思うならぜひ会計を味方につけてください。
イラスト:たくまのりこ
寄稿者プロフィール 田中 慎(たなか しん)(note/Twitter) 税理士・中小企業診断士として中小企業支援に従事しながら、京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)のコーディネーターとして、持続可能な社会をつくるビジネスを支援しています。 また、地域で働く総務・バックオフィス人材を軸に新しい起業環境をつくるためのSOU-MUプロジェクトを開始し、SOU-MU NIGHTというイベントを京都・東京で開催しています。 |