働き方に中立な社会保険制度ってどういうこと?

健康診断や人間ドッグに行きづらい?

病気や怪我で仕事ができなくなったら?

出産や介護に関する手当ては?

フリーランスになると、良いことばかりではありません。

公的なセーフティネットの脆さに対する不安を抱えるフリーランスはたくさんいます。

 

フリーランス協会では、3年前の設立以来ずっと、政府やメディアに対して「働き方に中立な社会保障制度の実現」ということを訴えてきました。(プレス勉強会雇用類似の働き方に関する検討会労働政策審議会基本部会弁護士会シンポジウム読売新聞コラムなど)

そうこうしているうちに、少子高齢化の波を受けた医療保険制度や年金保険制度の存続に向けて、政府内でも社会保険制度の見直しに関する議論が本格化しています。

その流れの中で、お陰様で「働き方に中立な社会保障制度」や「働き方の多様化等を踏まえた社会保険の適用」などもアジェンダに入れて頂き、話を聞かせて欲しいと呼んで頂く機会も増えてきました。

とても有難いことです。

 

たとえば、2月28日には、自民党政務調査会の人生100年時代戦略本部(事務局長:小泉進次郎議員)にて、「人生100年時代に相応しい働き方について」、当協会でもアドバイザリーボードとしてお世話になっている東京大学の柳川教授とともにヒアリングを受けました。

同本部では昨年5月に「2024年問題:人生100年時代を生きる将来世代の未来を見据えて」という提言を出しており、「働き方に中立な社会保険制度への見直しと支援」と題して、「勤労者皆社会保険制度(仮称)」を提案しています。議論取りまとめによると、「いかなる雇用形態であっても、企業で働く方は全員、社会保険に加入できるようにして、充実した社会保障を受けられるようにする」という趣旨だそうです。主には、契約社員やパート、アルバイトなど短時間労働者への社会保険適用拡大を指しているものの、文中には下記のようにフリーランスへの言及もあります。

「また、多くの高齢者が働くようになる今後の社会においては、契約社員や自営業者・事業経営者など、様々な働き方が増えていく。誰もが安心して働き続けられ、様々な場で活躍ができるようにする観点から、例えば、賃貸住宅の貸し渋りや金融取引の取扱いなど、年齢や労働形態の違い等に由来する社会の様々な障害を見直し、取り除くことが重要であり、それが雇用の創出や経済の活性化にも資する。
あわせて、フリーランスの増加など働き方の多様化を踏まえ、その支援の在り方も今後更に検討すべきである」。

この「勤労者皆社会保険制度(仮称)」が、どこまで具体的にフリーランスの課題に寄り添い、公的セーフティネットの充実をもたらしてくれるものなのかはまだ未知数なのでぬか喜びはできませんが、このような方向で検討がなされ、ヒアリングに呼んでいただけていること自体、地道な発信が微力ながらも徐々に浸透し、時代が少しずつ動いていることを感じます。

 

今回のヒアリングでは、私の方から「フリーランス白書2019」から浮かび上がるフリーランスの実態や、フリーランスにとって現行の社会保険制度が抱える問題点、これからは「誰もがフリーランスになりうる、誰もがフリーランスを選択できる」時代になっていくという話などをさせていただきました。

発表の後は、出席していた議員の皆さまから沢山の質問をいただきました。セーフティネットをフリーランスに拡大するにしても相応の保険料負担の覚悟はあるのか、税制とセットで考えなければならないなど、貴重なご指摘もたくさんいただきました。

 

また、3月12日には、厚生労働省の「第3回 働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」にて発表の機会を頂きました。

こちらの懇談会は、パートやアルバイト等の短時間労働者への社会保険適用拡大が主なテーマなので、労働者ではない独立系フリーランスの話はメイントピックではありませんでしたが、複数の事業所で働くパラレルワーカー(副業系フリーランス)に必要な保護を提供する観点や、副業・兼業しやすい環境を整える観点から、関心をお持ちいただいたようでした。また、フリーランスが仕事や生活をしていく上でどのような意識・不安を持っているのかということについても、お話し申し上げました。

 

このような流れの中、先週はビジネスインサイダージャパンにて、フリーランスの社会保障課題に関する記事が掲載されました。

健康診断は自腹、出産後給付もなく心細い年金…プアフリーランス生む社会保障の不公平(BUSINESS INSIDER JAPAN)

 

取材を受けるにあたり、フリーランスと会社員の年金保険と医療保険の負担と受給にどのような差があるか、社会保険労務士法人岡佳伸事務所の岡さんの協力を得て試算をしたところ、以下のようになりました。

(試算の前提)
20歳代 月給 20万円 年収16か月分(賞与4か月)
30歳代 月給 30万円 年収16か月分(賞与4か月)
40歳代 月給 40万円 年収16か月分(賞与4か月)
50歳代 月給 50万円 年収16か月分(賞与4か月)
東京都練馬区在住
健康保険 協会けんぽ加入
独身

1)22歳~60歳まで働く男性だとして、どれだけ年金の受益と負担が異なるか
・フリーランス 総負担額 7,876,800円
年金受給額(65以降) 779,300円/年
・会社員    総負担額(会社負担含む)20,304,240円
年金受給額(65以降) 1,971,966円/年

2)28歳の男性だとして、一年間に自己負担する健康保険料がどれだけ異なるか
・フリーランス 国民健康保険料    年間 289,692 円
・会社員    健康保険料(個人負担)年間 158,400円

3)28歳の男性だとして、同じ病気にかかった時に傷病手当金の有無でどれだけ差があるか
・フリーランス 0円
・会社員 傷病手当金の受給額 1,600,000円

 

フリーランス白書2019の第4章でも詳述したとおり、フリーランス協会に寄せられる期待の声で一番多いのは、フリーランスの健康保険組合を作って欲しいというものです。中には、職種問わずの国保組合を作ってほしい、協会けんぽに個人事業主でも入れるようにしてほしい、といった具体的な要望もあります。その要望は、逆に言えば、自治体の国保を抜けたいという声でもあります。

自治体の国保には働き盛り世代の予防医療の観点が乏しく、フリーランスの中には何年も健康診断に行っていないという人が珍しくありません。それは予防医療と健康管理を重視して政府が旗振りする「明るい社会保障」に反します。

しかし一方で、高齢者と無職の方々の健康を支えている自治体の国保を存続維持するために、保険料負担の担い手である個人事業主に抜けられたら困るという政府の理屈も重々分かります。我々フリーランスの中でも誰しもが、高額な健康保険料を負担したくないから自分勝手に抜けさせてくれ、と思っているわけではないと思います。

どのような形が社会全体にとってベストなのか、まだ明確な答えは見えないながらも、引き続きフリーランスの皆さまから声を寄せていただきながら、慎重に提言内容を取りまとめて参りたいと考えています。皆さまからのご意見・ご感想は、目安箱から常に募集していますし、近いうちにアンケートも実施したいと思いますのでぜひご協力ください。

まだまだ長い道のりになりそうですが、取り急ぎできることとして、フリーランス協会では福利厚生として、健康診断や人間ドックの優待が利用できるWELBOXを提供しています。

身体が資本のフリーランスにとって、健康管理はとても大事です。一般会員の皆さまは、ぜひご活用ください。

 

※追記 2019.4.12

タイムリーに続報が出ました。

「勤労者皆保険」を提唱:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43635900R10C19A4PP8000

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